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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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社員寮の階段

 村田さんは社員寮に住んでいる。とにかく家賃というものがほぼ無いので多少の不便は我慢して節約のために住み続けているらしい。


 会社の福利厚生はそれなりのものだし、環境が悪いということは決してないのだが、彼は今転職しようか悩んでいるという。


「さすがに会社にそのまま伝えるには憚られる内容なんですがね……」


 どうやら彼には写真量での悩みというものがあるらしい。


「古い建物ですから、多少のことは我慢出来るんですが……あの、鉄板が踏み台になっている階段って分かりますよね? あの上り下りでガンガン音が立つ昔ながらの階段です。改築なんてしていないので寮は未だにその階段を使っているんです」


 昨今はあのやかましい階段はなくなったと思っていたが、未だに住居に使っているところもあるらしい。


「それで、毎日夜中にあの階段を上っていく音がするんですよ。カンカンと音が立つんです。毎日のことなので時々その音で目が覚めるんですよ」


 そうしてしばし布団の中にいると音が消えていくらしい。明らかに複数人が立てている音なのだが、社員寮にはボロいだけあってそんなに大量の人数が深夜に入ってくることなどない。ならばあの音は一体なんなのか気になってしまうという。


 毎日ともなると参ってしまうらしいが、そこで彼は耳栓を買って寝ることにしたそうだ。一般的な家賃と毎日の耳栓代を考えてそちらの方が安いからという選択だ。


 意気揚々とドラッグストアで買った耳栓をして眠りに就いたのだが、それはいつもより悪い選択だったようだ。その晩いつも通り階段の音で目が覚め、再び寝ると朝に目覚まし時計の音が聞こえず遅刻寸前だった。


 どうやらアレは耳栓をすり抜けてくるらしいと判断し、諦めてしまった。一々対策を講じるよりも我慢した方が確実だということだ。


「ところで、毎晩階段を上る音が聞こえて怖くないんですか? 入ってこられたらどうしようとか思わないんですか?」


 私がそう聞くと、彼は笑って答えた。


「ないですね、私の部屋は一階ですから。まあ二階に人が全くいない理由にはなるかもしれませんがね」


 彼は未だにその社員寮に住んでいるとのことだ。

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