あり得ない光り
QさんはゲーミングPCを貯金をはたいて買った。しかしおかげで酷い目に遭ったので話しておきたいという。お金がもったいないとかそういう話なら断るのだが、あくまでオカルトらしいので一応聞くことにした。
「最近ゲームをPCでする人が増えてるじゃないですか、だから僕もゲーミングPCを買ったんですよ、そこそこの金額はしたんですが、自作とかよく分からないので出来合のヤツを一つ買ってセットアップしたんです」
そこまでは何もなく、無事起動し設定を終え、ゲーム用のアカウントを作ったところで初日は終わったそうだ。それから何を買おうか悩みながら寝たのがそのPCを買って最高の体験だったらしい。
「それで、ゲーミングPCって光るじゃないですか? 意味があるのかは分からないですけど、僕も七色に光る様に設定してみたんです。そうしたら側面のガラスパネルからまばゆい光が出たんです。綺麗なのでそのままにしておいて、ゲームをダウンロードしようとしたんです、多分ゲームは関係無いですが、有名なFPSゲームです」
なにしろゲームのサイズは巨大化の一途を辿っている、PCに搭載されているストレージをそこそこの量消費するゲームのクライアントを公式からダウンロードし始めたのだが、サイズが大きすぎて彼の回線ではなかなか終わらなかった。アカウントを作るまでに結構手間取っていたため、そのままダウンロード状態で放置して寝ることにした。寝ている時に光られても困るのでLEDをオフにしてベッドに寝転んだんでそうだ。
その晩、彼は目が覚めた、金縛りで視線以外動かすことが出来ない。初めての体験に慌てたのだが、なんだかおかしな事に気がついた。何故か部屋が明るいのだ。灯りは消して寝たはずなのに……視線をあちこちにやると、その光源はゲーミングPCのようだった。光を消したのに何故? と思ったのだが、よく考えるとおかしい。本来七色に光るように設定したはずなのだが、青白い光がPCの方から溢れ出ている。
そのまま必死に首を振ろうとしたのだが、そちらを見ることは出来ない。そのまま意識が落ちていったそうだ。
翌日、親がバタバタしているので何かあったのかと聞くと、遠縁の親族が急死したらしい。それで留守番を頼まれ両親を見送った。問題はそれからも何回か似たようなことがあった。
「その光を見ると翌日には誰かが大怪我をしたり死んじゃったりするんですよ。だからもったいないですがフリマアプリで売っちゃいました。僕以外のところでアレが動いているのかは分からないですが、多分もう十分に型落ちになってますし処分されているんじゃないかなと思います」
力なく笑うQさんだが、私は出来ればそのPCがジャンカーの玩具にされていないことを祈るばかりだ。