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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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お茶を飲んでいたおばあちゃん

 Sさんのおばあさんは毎日お茶を飲むのが好きで、亡くなる数日前まで普通にお茶を飲んでいたという。そんなおばあさんに懐いていたSさんには忘れられない思い出があるという。


「おばあちゃんが死んじゃって、しばらく落ち込んでたんですよ。仕方ないとは分かっていたんですけどね。なんだか気が抜けたように生きていたんです」


 そんな彼女の生活は荒れて、適当に生きるようになっていたという。


 あの頃はもう自棄になって酷い生活をしてましたね。ゴミだらけの部屋に住んで、親に何か言われても無視していました。学校と家を往復するだけの生活で予習も復習もしないので成績もドンドン落ちていきました。


 そう語る彼女は悲しげな顔をしている。しばしの間思い出話を聞いた後、怪談と呼んでいいものかどうかは分からないが、ようやく話を聞けた。


「その時は本当になんとなくなんですが、お茶を淹れて飲もうとしたんです。電気ポットなんて準備していませんから電気ケトルでお湯を沸かすことにしたんです。おばあちゃんの使っていた急須にお気に入りにしていたところの茶葉を入れてお湯を沸かし始めたんです」


 しかし、その時にバチンと音がし、部屋が真っ暗になったそうだ。


「多分ブレーカーが落ちたんだろうなと思ったんですが、家族の誰かが戻したんでしょう、すぐに灯りは付きました。電気ケトルは結構電気を使いますからコンセントを探って電気を食いそうなものは抜いて行ったんです。そうしたら一本のプラグが焦げていたんです。慌てて抜くと、ジュースがかかってそれがコンセントの間で熱を持っていたんですよ」


 そして『ただそれだけなんですけどね』と彼女は言う。


「偶然かもしれません、いえ、偶然だと考える方が自然ですよね? でも、私はおばあちゃんが助けてくれたのだと思っています。その方が幸せじゃないでしょうか? きっとまだ私の面倒を見てくれているんだなって思うと生活を改めることになりました」


 それから彼女は部屋を綺麗にして、学校にも真面目に通って勉強もきちんとしているそうだ。そのコンセントの焦げ後は前に何も置かず、よく見えるようにしているという。なんだかそのコンセントはおばあちゃんとの最後の思い出になりそうだからだと彼女は語った。


 偶然なのだろうが、それに意味があってほしいと思うのは私も同じで、きっと彼女のおばあさんは火事を未然に防いだのだと思いたい。

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