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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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自分は見てない

 Y本さんは小学生の頃、通っていた小学校にまことしやかな怪談が流行ったことがあるそうだ。


「実際に体験したって子もいましたけど、どこまで本当かは怪しいものです。ただ、変なことはあったんですよ」


 そこでY本さんは少し暗い顔になった。


「問題は友人が体験したと言っていることなんですよ……」


 Y本さんは小学生の頃に学校の怪談が流行っていた。今もあるのだろうが、Y本さんの時代にはスマホなんてものも無かったし、家族で見るテレビに怪談物が風物詩となっていた。


 話自体はシンプルなものなんです、学校の屋上に昔いじめられていた女子が出てきて、いじめていた子に似た人が通ると目の前に落ちてくるけどすぐに消えてしまうってものです。当時は学校側の力関係でいじめなんて隠蔽出来てしまった時代ですから、その噂が流れて、教師がいくらそんな事実はないと言っても『学校が隠している』と勘ぐる子は多かったです。


 それで、まあまあ酷い話なのですが、学校にいじめはあったんですよ。学校側は認めませんでしたがね。


 おかげでその噂は真実味を帯びていって徐々に嘘もあるのでしょうが見たという子が増えてきました。学校はその話をするのを禁止して沈静化させようとしたんですが……その手の陰謀論は無理矢理潰そうとすると大抵増えて帰ってくるんですよね。おかげで教師の目が届かないところで話題になっていました。


 ここからは友人が体験したと主張している話になるんですがね、伝聞であると言うことはしっかり理解しておいてくださいね?


 ソイツはW田としましょうか、W田は深夜の学校で肝試しをしようと言うことになったんです。当時は今ほど学校で事件は起きていませんでしたし、入るのは簡単だったんです。教室こそ鍵はかかっていましたが、校舎までは簡単に行けましたよ、そこまでが事実です。


 そして肝試しをした翌日にW田は私に話しかけてきたんです。アイツは友人も多かったし、一緒に肝試しに行ったヤツもいるのに私に話しかけてきたので不思議に思ったんですが、どうやら肝試しでトラブルがあったらしいんです。


 その肝試しというのは夜に学校に忍び込んで校舎の周りを一周して帰ってくるだけのものだったそうです。W田は悪友たちとそれをしたのですが、一人ずつ順番に回るのに最後の一人にクジで決まったらしいんです。


 怖いなんて一言も言えない空気が漂う中、一人一人帰ってきては怖くなかったアピールをするんです。当然そんな中で自分だけが怖いなんて言えませんよね? W田も思い切り強がってしんがりを務めたそうです。


 それで見つからないように校舎裏から表に回って裏に帰ってくるルートを友人たちに見送られながら向かったそうです。


 まず言っておきますがW田が何か幽霊を見たって事は無いそうです。だから超常現象が起きたというわけでは無いんです。ただ、その話はなんとなく怖かったです。


 自信満々で回っていったW田でしたが、校舎の表側に来たときに懐中電灯の光を見つけたそうなんです。慌てて柱に身を隠して息を殺してやり過ごそうとしたそうです。別に何かを盗んだりしたわけでも、何か壊したわけでもないですけど、見つかると怒られるくらいはありますからね。警備の人が通り過ぎるのをじっくり待ったそうです。


 懐中電灯の光の陰になるようにジリジリと柱の裏を音を立てないように移動したそうですが、途中で光がおかしな方向を向いたそうです。早く通り過ぎて欲しいと思いながら柱の裏で待っていたのですがいつまで経っても光は動きません。そっと柱の陰から警備している人に目をやったそうです。


 そこにいたのは、校舎に向けて懐中電灯を置いて土下座している警備員さんだったそうです。よく聞くと小さな声で『もう許してください』と繰り返していたそうなんですよ。ただ、彼にはその人が何も無い場所に向けて土下座をしているようにしか見えなかったそうです。だから幽霊を見たわけではないのですが、その警備員さんには何かが見えていたのかもしれないと言っていました。


 結局、真相が分かるわけでもないのですが、何かを見た人を見たような気がすると言っていました。


 それが学校であった怪談だそうだ。二人しか知らない話だが、調べてみようにも、学校が不祥事を隠すのが比較的簡単だった時代で、さらに警備員さんが子供の頃となると新聞くらいしか情報源が無いし、調べる方法は無いと言う。

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