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お菓子なら買っていいよ

「昔、親にお菓子を好きなの一つ買ってきていいよって言われたんです。ええ、お菓子ならなんでもいいと言われたんでね、買ったわけです……食玩を」


 Kさんの昔話はそんな始まりだった。


 玩具とか買ってもらえなかったんですよ。貧乏だってわけでもないのにと思ってました。で、先ほどの話になります。アレなら建前上は玩具の付いたお菓子じゃないですか? あくまでお菓子なんですよ、アレはお菓子の付いた玩具じゃないんです、たとえお菓子がラムネ一個でもガム一枚でもね。


 そうして無事Kさんはロボットのプラモを手に入れることに成功したそうだ。お世辞にもいい顔はされなかったが、お菓子ならなんでもと言った手前、どう考えてもメインは玩具だが言ったことを曲げるのも教育に良くないと思ったのか、買ってはくれたそうだ。


 大喜びで当時放送中のロボットを手に入れたんですよ、本当にうれしかったな、最新の玩具なんて買ってくれませんでしたから。当時にしてもまだ古いお古の玩具くらいしか手に入らなかったんですよ? まあアレはアレで、今となっては貴重なんでしょうけど、子供にとってはそんな遠い未来で値が付くかもなんて思いませんよ。


 無事Kさんは家に帰り、食玩を開けて大粒のラムネ菓子を口に放り込み、建前はどうあれ本体であるロボのプラモを手に入れた。現在の食玩ではとても精巧に出来ているが、当時は比べものにならないくらいチープだったらしい。ただし、その時代ではおもちゃ屋で買ったプラモでも今のプラモとは比べられない品質だったので、その当時としては妥当なものだったと言う。


 なお、当時のKさんにはアニメや特撮が最終回になるのに『クール』という単位も知られていない時代だったので、喜んで手に入れたプラモの番組も一月くらいで終わることになった。


 問題は最終回の日なんですよ……ロボットアニメって最終回で大抵はハッピーエンドじゃないですか、ただ、巨大ロボが敵を倒した後、そのロボを残しておくのも話として難しいですよね? 悪の組織を壊滅させるほどの力のあるロボをその辺の少年に自由にさせるのも不自然じゃないですか。だから割と敵は全滅させるにしてもロボが使い物にならなくなる話も多かったんです。


 私は突然ロボアニメの最終回の話になったので面食らったものの、話は実際に放送される日だそうだ。


 悪魔を模した敵の最強ロボットを倒して終わったんですけど、最後に敵に必死に主人公が飛び込んで自爆しようとするんですよ、そこでロボが自我に目覚めてパイロットを自動排出して敵と一緒に砕け散るって話だったんです。


 最終回を見終わって部屋に戻ったんですが、学習机の隅に飾っておいたプラモが開きっぱなしのノートの上に乗っていたんです。そしてノートに『シニタクナイ』とカタカナで書いてあったんですよ……


「ロボットが自我に目覚めるならプラモだって意志を持つんですかね?」


 そう訊ねられたが、答えは出なかった。Kさんも考えてみたが、結局そのプラモを大事にして、高校生になったときに、お賽銭と共に神社に置いて帰ったらしい。

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