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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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リモートワークの怪

 Zさんは事故物件に住んでいるのだが、過去に一度だけおかしな事があったという。話を聞くと『別に引っ越すような深刻な話でなくてもいいなら』というわけで話を伺った。


 世は感染症で大混乱していた時代。Zさんの会社も急ぎリモートワークで出来ることは出来る限りリモートで仕事が済むようにシステムを組んでいた。


 ZさんはPCを置いている部屋の中には壁にセクシーなポスターが貼ってあったり、床にその日飲んでからになったペットボトルが転がっていたりしたので、リモートワークにカメラを使って顔が見えるようにしろと言われたとき、大いに困った。


 そこで片付ければ話は済むのだが、いずれこのパニックも終わるので、そのために部屋の模様替えをするのが億劫だった彼は、緑色の背景、所謂GBのスクリーンを自分の後ろにスタンドから垂らして、それをカメラで写してクロマキーで抜き、フリー素材の背景に差し替えることにした。


 多少値は張ったが、スクリーンを買い、自分のすぐ後ろに立てて背景透過の設定もした。そしてリモートワークが始まり、準備がようやく終わったところですぐに会議をするからカメラをオンにした。

そして会議が始まった。


 色々と新しい時代のシステムの決め事をしてから会議終了となるところでZさんは参加している一人に名指しで声をかけられた。


「Zさん、一応会議中なので家族でも出来れば席を外していただきたかったのですが」

その指摘の意味がよく分からなかった。そもそも彼は独身であり、家の合鍵など誰にも渡していない。そもそも部屋に入ってきて気付かないわけがない。


「何の事ですか?」


 素で意味が分からなかったのでそう訊ねると、全員からそれぞれ言われた。


「いや、後ろを女の人が歩いて行ったでしょう?」

「子供も遊んでましたよ、学校に行けないので仕方ないとは思いますけど」

「ご両親には分からない内容だと思いますが同席させるのはどうかと思います」


 どれも身に覚えのな話だった。そもそもGBを背景にすぐ後ろに置いているので人が椅子と背景の間に入れるはずは無い。だから彼は曖昧に分かりました、と言いつつ会議を終えた。


「とまあ、これが顛末です。住んでる借家で前に住んでいた家族が一家心中したらしいですがね、私は気にならないのですが、カメラを写す度に指摘されるのも面倒なので近所の寺に行ってお札を一枚いただいてから背景のスクリーンの裏側に貼っておきました。それからはなにも現れなくなりましたよ」


 目撃者は何人も居るのだが、お札を貼ったらカメラに写ることはなくなったらしいのでそれで構わないそうだ。


 彼は未だに家賃が安いからと言う理由でその家に住み続けているそうだ。変なことは時々あるが、人を呼ぶことも無いし、自分は気にしないので安くて快適な家だと豪語している。

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