表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/289

見えるだけ

 M田さんは所謂『見える人』らしい。幽霊などが見えるそうだがそれを一々話したりはしない。彼によるとそんなことを言ったところで解決方法が無いからだそうだ。しかし、何度か忠告をしたことはあるらしい。


「嫌な話ですよ、あまり聞いてて気分のいい話じゃないですが聞きたいとのことなのでお話しします」


 前置きをしてからその体験がは始まった。


 M田さんはまだ高校生だった頃、それほど見えることを隠していなかったらしい。当時は別にそれが知られても困るようなことでは無かったらしい。それが変わったのは有る事件があったそうだ。


 友人がね、お祓いをしてくれなんて言ってくるんですよ。そんなことは出来ないって言ったのに必至にソイツは頼み込んでくるんです。『なにをしたんだ?』と聞きましたが一切言わないんですよ。ソイツの近くにはニタニタ笑うぼろを着た少女が立っているんです。ああ、どこかから連れてきたなと思ったんですが、本人がなにをやったか絶対に言わないんですよ。


 まだとっかかりになるようなことでも言ってくれればいいんですけど、『寺か神社に行けば?』というアドバイスにも『それは出来ない』の一点張りなんですよ。なにをしたのかは意地でも話さないので何かしたんだろうなとは察しました。ソイツはあまり素行の良くないやつでしたから、多少は恨みを買うようなこともしているだろうなと思いました。


 なにをしたのか話さないなら答えようがないと言うと、必至に対処法を聞いてくるので『盛り塩でもしておけば?』と適当に返しておきました。年齢がね……清酒も使った方が効果が出るんですが、ご時世がご時世なので『酒買ってこい』とは言えなかったんですよ。


 そのアドバイス通りに盛り塩をしたそうなのですが、次の日にはまた泣きついてきましたよ。盛り塩が溶けていたそうです。塩化ナトリウムって潮解しないはずなんですがね、コイツ水酸化ナトリウムでも盛ったのかなと思いましたよ。今まで幽霊が実際に人に害をなした事なんて未経験でしたから、そんな力があるとは思ってなかったんです。


『頼むからなんとかしてくれ!』


 そんなことを言うんですがどうしようも無いでしょ? だから『なにが原因か知らないけど、心当たりがあるならそこで懺悔でもしたら?』と言っておきました。ソイツはそれを聞いて死んだ目で早退しました。はじめは残酷な笑みを浮かべる少女にビビっているのかと思ったんですが、翌日、ソイツがお墓で昏倒しているのを発見されたと聞きました。なんでも墓石が上に倒れてきたそうで、それの下敷きになったそうです。


 その墓を後から見に行きましたが、多分あれは戦争でなにかあった人たちでしょうね、そういう時代の格好をした霊が幾人も居たので早いところ逃げました。それから噂によると、その墓はイタズラで倒されていたのを修繕したばかりだったそうです。お墓って壊すと修繕に結構なお金がかかりますからね、多分その請求をされたくなかったんじゃないでしょうか。


 結局ソイツはメンタルを病んで自主退学してしまいました。結局、私に力なんてものは無いんです、ただ見えるだけ。恐ろしいものをどうこう出来るわけじゃないんです。


 そうしてM田さんは話を締めくくった。ちなみに彼はその倒れていた墓に後日菊の花を供えていたそうだ、自分に回ってこられても困るからということらしい。それが幸いしたのか、彼の元に心霊現象は起きなかったという。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ