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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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単三電池かな

 倉部さんは通販で得体の知れないガジェットを購入するのを趣味にしている。そんな彼だが、あまりにも不気味なものを購入したためとある国からの個人輸入は控えることにしたそうだ。当該国の名前を出さないことを念押しされてから話を伺った。


「海外からの通販って驚くほどいい加減なんですよ、届かないこともざらですからね。別に安くないこともありますし、そう言う怪しいものを集めるのが趣味でないなら個人輸入なんてするものじゃないです」


 それで、どういったことがあったのですか?


「まあその話は購入した品から話をしましょうか。モバイルバッテリーにリチウムイオン電池が使われているのは知っていますよね? 最近アレを単三乾電池の形にして出力調整機能を付けたものを乾電池として使えるように売っているんですよ。この界隈は日本メーカーがほとんど入ってませんからね、必然、外国からの輸入になるんすよ」


 不具合でもあったのでしょうか?


「いやいや、日本製じゃないと不具合が出るなんて事はないですよ、最近じゃネットで売っているものも随分とまともになってきているんすよ。だから最安値のところを探して決済サービスを使って購入したんですよ。この時は悪くても届かないくらいで済むだろうと高をくくっていたんすよ」


 届かないより悪いことがあるんですか?


 思わずそう訊ねた。届かないというのは粗悪品が届く以前の問題なので、届いたなら安物買いになったとしても仕方ないとは思えそうなものだ。


「それが届いたんっすよね……ただ、雑な梱包でリチウムイオン電池を送ってくるものだから中身が不安になりましたけどね。中身をそうっと覗いたら、ビニール袋の中に直接パッケージもなく電池が放り込まれてたんすよ。まあこのくらいは良いだろうと思って取りだしたんすけど、何故かメーカー名もなにも書いていない赤黒い電池が四本入ってました。ご丁寧に電池の脇に空いた穴に刺すUSBケーブルも付いてましたよ。ちょっと品質が怪しいけどあたりだなと思いました。ブランド名が分からないのは割と普通の事なんすよ、分からないならまだしも、既存のメーカーのパチものみたいな梱包で送ってくる業者もありますからね、素直にノーブランドだと主張するだけマシッすよ」


 どうやらその手のものを買うときは覚悟が必要なようだ。しかし商品が届いたならなにが不満だったのだろう?


「で、早速充電をしてから電池を使うマウスに入れてみたんすよ、そうしたら無事動いたんで、ああ、当たりだなと思ったんです。なにしろ動かないことも覚悟しておくべきですからね。だからきちんと乾電池の代用になるものだったことに感動しながらPCをそのマウスで操作してからすぐに電源が切れたりしないのを確認して寝たんっすよね……」


 そこで倉部さんの顔が曇った。


「問題は起きてからなんですよ。机の上が血でベッタリと汚れていまして、肝を潰したんですが、よく考えると一人暮らしで鍵をしっかりかけて、自分に怪我がないのだから血じゃないのは当然ですよね? で、その机を観察するとマウスから赤い液体がたぷたぷ出てるんですよ。鉄臭いのがまた血のような錯覚をさせましたね。で、マウスの電池ぶたを開けてみると、中から血のような液体がたぷんと出てきたんすよ。で、液漏れか……と失望したんです。ただ、それは心のどこかで仕方ないかなと思いましたよ、安い値段ですし送料もかかってないっすからね。まともな商品が欲しければ金払えってことでしょう。そう思っていたんですが……」


 一息置いてこの通販の謎を話してくれた。


「やはり電池からの液漏れで、幸い床は自分で買ったカーペットを敷いていたので敷金に影響はないと思ったんですけどねえ……その電池を引っ張り出して振ってみたんすよ。なんの音もしないんです。いや、中が液で満たされているとかそんなんじゃなくてすっかり空っぽなんすよ。それで、液体を拭き取りながら考えたんですよ。電池の中身はこの得体の知れない液体のみで……じゃあどうやってマウスに電気が流れたんですかね? ぞうきんで全部綺麗に拭き取りましたが、中にはまったく電池の要素をしたものが入ってないんすよね。じゃあ何で動いてたのかっていう……底は未だに説明がつかないんすよね」


 彼は今は通販をするときに不自然に安いところから買うのはやめているそうだ。関係があるのかどうかは不明だが、出荷元の住所を検索したところ、戦争の講話が行われた土地がヒットしたらしい。

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