サ終ゲームのメッセージ
ソーシャルゲームはいつかサービスが終了してしまう。そのゲームがどのくらいの期間続くかはさておき、いずれ終了してしまうことだけは間違いない。それなのに小林さんはサービス終了したゲームを消さずにとって置いたのだが、それで奇妙な体験をしたらしい。
「あれはなんて言えばいいんですかね……そこそこ課金したゲームだったんですよ。だから安易に消す気にもなれなくて、未練がましくインストールされたものを消さずにおいたんです。オフライン版が出てくるゲームも多いですが、そのゲームは終了したらそれっきりのゲームだったんです」
それで、ゲームのアイコンだけを見ながら、もっと課金しておけば終了しなかったのかなあなんて益体もないことを考えていたんです。それで、ある日隣のアプリをタップしようとしてそのゲームに当たったんです。
普段なら起動してサーバーに繋がらない旨が出て終了するだけのはずだったんです。でもその時は何故かオープニングまで進んだんです。
そのゲームは所謂美少女のカードを集めるゲームだったんですが、タイトル画面でもう聞けなくなったと思ったボイスが聞けたときは感動しました。
迷うこと無くゲームスタートを選んだんです。すると懐かしいホーム画面が出たんですよ。思い出に耽りながらそれを見ているとメッセージボックスに大量のメッセージが届いていたんです。サービス終了の時に同じギルドには行っているみんなに挨拶を送ってお別れしたので僕のところに届ける必要のある人は居ないはずなんですが……
そうしてメッセージをタップした彼は固まった。そのゲームは自分のアイコンに所持しているキャラのアイコンを表示出来る。そのゲームには強力なキャラがいたので、必然的にそのキャラをアイコンにした人が増えていた。しかし画面に映ったのは全部別のキャラのアイコンだ。そしてタイトルには『助けて』とだけ入ったメッセージがずらっと並んでいた。
その一つをタップすると『消えたくない』と本文に書かれたメッセージが表示された。ゾクリと背筋に冷たいものが走り、そっとそのメッセージを閉じて別のメッセージを開いた、内容は全て同じだった。違うのはアイコンにしているキャラのみ。そんなものが大量に届いていた。
「これってゲーム内のキャラが送ってきたんでしょうか? そんなことはあり得ないと分かってはいるんですが……数が数でしたし、思い入れがあっただけに色々操作をしたんですが、ホーム画面とメッセージ一覧以外には接続出来ないんです。それをしばし開いてポカンとしていたんですが、不気味になってゲームを閉じたんです。それからもう一度確認してみようとしたんですが、今度は『サーバに接続出来ません』と表示されてタイトルにすらたどり着けなかったんです」
結局、あの大量のメッセージがどうして表示されたのかは分からない。ただ小林さんはもうとっくにサポートが終了したスマホをデータ移行が出来ないので使い続けている。最近ではバッテリーがすぐに切れるので互換品と交換ツールを自分で購入しようか迷っているそうだ。