円盤の恐怖
仁志さんは子供の頃、当時の次世代ゲーム機を買ってもらい大喜びでゲームを遊んでいたそうだ。しかしその中には奇妙なゲームもあったらしい。
「クソゲーというわけではないんです。ホラーというわけでもないんですが、なんとも恐ろしいものだったんですよ」
彼が言うにはあまり思い出したくないものらしい。しかし思い出を整理するために話してくださった。
「今じゃディスプレイの画質がものすごく良いですから粗も見えるんでしょうけど、当時のコンポジットケーブルでテレビに接続するものとしてはすごく画質が良くて感動したんです」
当時にしては画期的だったので、それを持っているという優越感さえ持てたらしい。しかし次世代ゲーム機だけあってソフトもそれなりに高かった。そのため彼は中古ゲーム屋の常連となっていたそうだ。
「お金にも限界がありますけど、幸い中古なら安いものもあったんですよ。ゲームとしては……お察しでしたが、すごいグラフィックを見ているだけでもそれなりに満足出来たんです」
彼は毎月のようにゲームを買っていたそうだ。しかしそんな買い方をすると子供のお金がもつはずもなく、どうしようもなく金欠になってしまった時期も多いそうだ。
「お金がなかったのでとにかく安い中古ソフトを買ったんです。当時は安くても最新ゲーム機で動くと謂うだけで満足していましたからね。ただ、その時買ったソフトは箱にも入っておらず、ディスクを保護する袋に入ったもので、動作確認は取れていると書いてあった。値段は破格だったので迷うこと無くレジにそのディスクを持っていきました」
何故か知らないがそのディスクのレーベル面は真っ黒に塗りつぶしてあったそうだが、読み取り面は綺麗なものだったので普通に遊べるだろうと思い家に帰ったらすぐにゲーム機に入れた。
「初めにゲーム機のロゴが映ってそれからゲームが始まったんです。ただ、ゲームとして不思議だったのはニューゲームを選んで初めに主人公名をつけるんですが、何故かデフォルト名が私の名前と一致したんです。あり得ないことではないですが、ゲームの主人公が自分と同じ名前っておかしいなと思いました」
そのゲームはRPGであり、グラフィックはよかったのでそんなことはすっかり忘れてプレイしたそうだ。
「お使いイベントから始まったんですが、それを数回こなすとフィールドに出られるようになったんです。早速モンスターと戦ってみたんですが、バランスもよくて多少のダメージを受けましたが、モンスター派無事倒せたんです。そこで母親が夕食が出来たと声を上げたのでセーブをしてその日は終わったんです」
そこまでは普通のゲームだったそうだ。しかし問題は明日になって起きた。
「怪我をしたんですよ。不思議なことにベッドで寝ていたはずなのに目が覚めたら腕や足に数カ所の打ち身があったんです。どこかにぶつけた記憶は無いんですけどね。その日は休みだったのでゲームの続きをプレイしようと昨日のデータをロードしたんです。そしてステータス画面を見ると主人公の3Dモデルを見られるんですけど……ダメージを負うと傷が付くらしく、そのモデルには傷がしっかりと描画されていたんです。ですが……その傷の箇所が自分の青あざが出来ていた場所と一致したんです。オカルトを信じているわけではありませんが、なんとなくそのゲームを続けない方が良いなと思ってディスクを取りだしたんです。それをストックしていたケースにしまって放置しました。それ以来それを遊んだことはありません。ただ……今でも思うのはあのゲームでゲームオーバーになっていたらどうなったんでしょうね、それを考えると今でも少し背筋が寒くなります」
今では彼はスマホゲームばかりプレイしているが、そのゲーム機はもう既に捨ててしまったそうだ。