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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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修正依頼

エンジニアをしているUさんは家でも暇があればプログラミングをしているという。

彼の談によると、無料で開発環境一式がそろって公開する場もある良い時代になったものだ、と言っていた。


その休日、彼がプログラムを書いてアップロードしておいたものに修正依頼が来た。

そのサイトでは修正したコードを取り込んでくださいとお願いが出来るのだが、その修正はなんともいえないものだったという。


「コメントって言うものがあるんですよ。字のまま、動作には何の影響もしない注釈文なんですが……」

その時来た修正とやらはコメントに関するものだった。どこか動作と食い違うコメントでもつけていたかなと、そのユーザが贈ってきたものを見たのだが、それには既存のコメントを修正してくれというものなのだが、肝心の修正版の方が文字化けしていて読めなかった。

「文字コードを見直して送り直してくださいと返信したんですが、それからも時々文字化けしたコメントが届くんですよ。それはいいんです、多分日本語が母国語の人手はないのでしょう、海外の環境だと割とあることです。しかし困ったことが発生しまして……」


なんとその修正を取り込まないとエラーで落ちるのだ。バグを疑ったのだが、コメント以外に修正されている場所はない。それなのに指摘されている部分を動かそうとするとプログラムが落ちてしまう。今まではそんなことは無かったにも関わらずだ。


 不思議なことに送られたとおりに修正すると不思議ときちんと動くようになる。原理は不明だが、このよく知らないユーザーの修正を取り込むと上手く動くということで仕方なく取り込んでいた。


「不気味なんですよね、日本語なのは修正の依頼だけで、コメントは意味不明で、何故かそれが送られてきた場所はそれまで上手く動いていたはずなのに動かなくなっているんです。どこかの天才プログラマなのかとも思いましたが、そもそも動いていたものだったのが動かなくなるというのがおかしいんですよ」


「その人は一体何がしたいのですかね?」


「分かりませんよ、ただですね、最近、その文字コードを色々といじっていて判明したことがあるんですよ」


「何が分かったんですか?」


「あまりにも送られる頻度が高いので、送られてきたコメントの文字コードをいろいろな国のものに変えてみたんです。すると一つだけ意味を持つ文字列になるものが見つかったんです。見つかったんですが内容が問題でして……」


「内容ですか? ようやく分かったなら解決じゃないですか」


 Uさんはそこで一息ついて心底うんざりしたように言った。


「内容は読めたんですがね、その文字列は般若心経だったんです。不気味ったらないですよ。困ったことに取り込まないとプログラムがまともに動きませんからね、仕方なく取り込んでいますが、今じゃ結構な量が文字化けしたお経になっているんですよ」


 Uさんはいい加減そのプログラムの開発をやめて新しいものを作ろうかと悩んでいる。

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