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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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田舎の人身事故

 人身事故の話はよく聞くのだが、田舎と都会とではそれによって起きる怪異も違うらしい。通勤に使っている赤字路線で人身事故に巻き込まれた方の話を聞いた。


「都会じゃあ人身事故でもあまり気にしないんでしたっけ? 確かに数分ごとに電車が来ているのに一々どれが事故車かなんて分かりませんよね。田舎だと本数が少ないので結構大変なんですよ。まあその分人身事故自体が少ないんですがね」


 一応電車が走っている地域に住んでいるMさんは、一度だけ人身事故で遅刻をしたことがあるらしい。不慮の事故なのに遅刻扱いで嫌味を言われたのには納得いかなかったが、マイカーで出勤している人が多い地域なので、上司によると電車など使うのが悪い、だそうだ。


 その日は災難だったなと思いながら下りの電車を待った。そこでは都市部のようにロクに待たなくても電車が来たりはしない。三十分や一時間待たされることも珍しくはないのでいい加減車を買いたかった。しかし災難の多い時期だ。半導体不足などで非現実的な時間が納車にかかってしまうということで、仕方なく車はあきらめ電車通勤を続けることになる。


 ガタゴトと音が聞こえてくる。しかしまだ電車が来るには早い時刻のはずだが……今朝のことで特殊ダイヤでも組んだのだろうか? まあいい、早く帰れるならそれにこしたことはない。


 そう思って電車を待つのだが、何故かスピーカーから線の内側に下がれとか、電車が来るから注意しろといった注意が流れてこない。奇妙に思いながらも電車を少し待つと、ワンマン車両が駅に入ってきた。はて? この路線にワンマン車両があっただろうか? いくら赤字路線とはいえ、一応経営は成り立っているはずなのだが、何故こんな電車が来るのだろう?


 そしてその電車が駅についてMさんは固まった。中にいた乗客は一人、それも両腕が取れて、頭に深い傷が出来ている。傷跡などと謂う生やさしいものではなく、即座に病院に行っても匙を投げられそうな状態だ。


 いつまでそれを見ていただろう? それを乗らずに見ていると、意識が遠のいていき、ジリリリリというベルとアナウンスで我に返った。今度は電車が来るので線の内側に下がれと注意をしてきたので、その放送で目が覚めたので前を見ると先ほどの電車は消えていた。少し混乱したものの、電車は時間通りに来たので今度は数人の乗客がいるのを確かめて、その電車に乗った。


 時計を見るといつも通りの時刻だ。ではさっき見た電車はなんだったのだろう? アレに乗ったらあの世に連れて行かれるのだろうか? 何一つとして分からない。


「こんな話なんですが満足していただけましたか? しかしこの辺は良いですね、電車を長々と待たされるようなことが無いですから」


 そう言って彼は微笑んだ。田舎に帰るとしたら、間違いなく次は自家用車を手に入れてからにするだろうとMさんは言う。

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