野営での出会い
野営の準備が整い、全員で食事を摂る事にした。
狩りで十分な成果を上げていた為、隣村に着くまでの食料は潤沢であった。
レオナントは料理担当に指示し、乾燥させた果物に、干し肉、パンと簡単にスープを作り全員に振舞った
レオンも食事を摂り、ドランに修行を申し込んだ。
「明日もいっぱい歩くから軽くな!暗くなる前に始めよう」
ドランはそう言うと木剣をレオンに手渡す。
各々が休んだり、気分転換に書物を読んだりと好きな時間を過ごす中、野営の近くでドランとレオンは木剣で打ち合っていた。
「レオン!さぁ打ってこい!」
ドランが叫ぶ。
「やあぁぁ」。
「うわぁぁ」
レオンは走りながらドランに突っ込むが、案の定弾かれてしまった
「大丈夫か!?レオン!」
レオンはもしかしたら戦闘に不向きなのかもしれない。ドランにそう思わせる程にレオンの戦闘センスは上達の兆しも見えなかった。
「やってるねぇ〜 小坊主」
女性の守護兵がどこからとも無くドランとレオンの前に現れた。
「あっ!さっきはよくも!」
レオンは女性守護兵に飛びかかったが、ヒョイと躱された。
転んだレオンを無視してドランに向けて言った。
「自己紹介からしようかなぁ…私はユオ」
女性守護兵は名乗った。
ユオはドランに何を教えていたか聞いた。
「う〜ん そっか…」
ユオは歯切れ悪く言った。
「すっごい言い辛いけどレオンにその剣は無理だよ。」
ユオが唐突に言った。
レオンは驚愕しながら言葉が出なかった。
ドランは怒りを覚え、ユオに問う
「そんなことはない!レオンはご両親を失ってもずっと強くなろうと努力してきた!いつか必ず…レオークさんの剣を習得できる!」
「そ、そっか…」
ユオはゆっくりと続けた。
「実はずっと気になっていたんだけど、レオンって体重どのくらい?」ユオが問いかけた。
「え?10キロだけど…」
「そっか〜 やっぱりか〜」
ユオは意味ありげに納得したがドランは到底納得できない状況だった。
「10キロ!?ありえない…」
レオンは同じ世代の子供達と比べ異常な程に軽すぎるのだ。
しかし見た目からはわからない。普通であれば死んでもおかしくない体重であった。レオンは普通に食事も人並み以上は食べる。むしろ大喰らいかもしれない。
しかし体重が年齢×体重の平均をかなり下回っていたのだ。
「う〜ん…体質かなぁ…」
ユオが言った。
「その体重じゃあ力なんか入らないよ。重たい剣を振るなんて尚更ムリな話だね。今後いくら訓練しても変わらないと思うよ。」
ユオは続けた。
「…」
ドランは何も言い返す事が出来なかった。
ユオの言葉はレオンに戦士を諦めろと言っている事と一緒だったからだ。
「そんな…」
レオンは絶望する。
「う〜ん…」
ユオは少し考えて言った。
「これは持てる?」
ユオは自身の腰に下げた武器をレオンに渡した。
ユオの武器は普通の剣より少し短く、少し反りが入っていた。
「東洋の言い方で言うと刀と言うらしいよ」
ユオは続けた。
「か、かるい」
レオンは驚いた。まるで羽毛の様な軽さだった。
握り手の重さ位しか感じる事ができなかった。
「刀も普通は剣と同じくらい重たいんだけど、これは特注でね!」
「鞘から抜いてみな」
ユオはレオンに刀を抜く様に説明した。
レオンは刀を抜いた
「なんだ…これ…刃が片方にしかないし、なにより薄い」
ユオの刀は一般的な刀と比べても細く、そして薄かった。
「刀越しに風景が見える…」
レオンは驚いた。
ユオの刀は薄いが故に半透明になっていた。
「白蓮鉱って言う特殊な鉱物からできてるって事もあるけど、綺麗でしょ?」
「これでどうやって戦うの…」
レオンから当然の疑問だった。
剣の重さ=剣の強さであったからだ。
当然重い方が切断力や貫通力などが強い。
逆に薄かったり、細かったりすると致命傷を与える事はできないのだ。
「どうって…普通にぶった斬る」
ユオは不思議そうに答えた。
「?」「?」
レオンもドランも理解できなかった。
その時。
「グォ゙ォ゙ォ゙」
魔物の鳴き声だ。
「あの鳴き声は…ミノタウロスかな…」
ユオはこれはチャンスという顔をした。
「この武器の使い方魅せてあげる!ついてきて!」
ユオはそう告げると野営とは逆方向へ走り出した。
レオンとドランも木剣を片手についていく。




