防衛
戦闘描写どうでしょう
ドラン 20歳
エルミー 17歳とガーラン 22歳
「やあぁぁ」レオンが木剣を手に、ドランへ打ち込むが、いとも容易くドランは受け止め弾く。
「レオン!力が入ってないぞ!」
レオナント達が狩りに出て3日…村は平穏な日々を過ごしていた。レオンは連日、ドランに稽古を申し込んでいた。
「次はこちらから打ち込むぞ!」
ドランが軽くステップを踏み、レオンへと切り込む
「うわぁぁ」
レオンは簡単に吹っ飛ばされた。
「あ!すまん!」
ドランは精一杯の手加減をしたが、レオンは思いのほ吹き飛んだ。
「ケガはないか!?レオン!」
レオンはのびていた…
「うーん…」
ドランは自身がレオンと同じ年頃だった時の事を思い出した。
(オレの稽古は10歳からだったし、気のせいか…)
レオンが目を覚ますのを待って稽古を再開する。
ドランが覚えたレオンへの違和感は稽古を積む度に増していく。
「…レオン…木剣は重いか!?」
「すごく重いぃ!!」
レオンは歯を食いしばりながら木剣を降っている。
否、木剣に振り回されている。
(子供用の木剣だから500グラムもないのだが…9歳の力だとこんなものか…)
「今日はもうやめにしよう」
ドランがそう言うとレオンは少し残念そうにした。
次の日、また次の日と稽古を積んだが一向に進歩の兆しが見えない。5日も朝から晩まで木剣を降っていれば嫌でも基礎の基礎くらいは出来てくる。しかしレオンは毎回初めて木剣を持った者かの様な立ち回りしかできない…打ち込む力も初日と全く変わらないのだ。
レオンは明らかに落ち込んでいた…
「明後日にはレオナントさん達も帰ってくるな」
ドランはレオンを励ます様に稽古以外の話題を振った。
「うん…」
レオンは元気なく答える。
「レオン…お前はまだ9歳だし、稽古を始めて5日だ!そんなすぐには上達しないさ!」
「そうかなぁ…」
ドランは精一杯励ましたが、自信失いかけているレオンになんて声を掛けようか悩んでいた。
その時、警告を知らせる笛の音が鳴り響く。
「魔物だぁぁ!!」
見張り台にいた村人が叫んだ。
「門を閉じて下さい!!」
ドランも叫ぶ。
ギリギリの所で門を閉じ、村への侵入は防ぐ事ができたが、問題は解決していなかった。
「ゴブリンの群れかぁ…」
レオンが住む村の付近によく単体で出没する魔物であり、村を襲い食料や家畜を奪う。さらに子供や女性を攫う外道である。
単体であれば問題にならないのだが、群れとなると厄介であった。
今、村で戦える者はドランを含め単体のゴブリンを倒した経験がある革細工職人のガーランと女性で弓が得意なエルミーの3人しかいない。
「レオナントさん達が戻る明後日まで籠城するか…」
一人の村人が言った。
「いや…群れとなると門を破られるのも時間の問題でしょう…」ドランは冷静に言った。
現にゴブリン達は門を壊そうとしていた。
「裏に回り込み奇襲しましょう。」
ドランが提案した。
「奇襲!?20体はいるぞ!?有効なのか!?」
本来、奇襲は敵が少数で皆殺しにできる場合か、実力が拮抗していて相手の体勢を崩す時にこそ有効。
不利の場合も有効だが二の手により戦況がかなり左右される。
数で劣勢な今は弓矢などの遠距離からの攻撃で応戦し防衛に徹する事が最良である。
ドランの策は誰が聞いても愚策そのものであった。
しかし、弓矢を射れる者はエルミーしかいない。矢も2日間など到底耐えられない本数しかない。
この愚策に賭けるしかない。皆、そう思ったが故にドランを真っ向から否定しないのだ。
「先行、弓矢での遠距離攻撃、村のガードでちょうど3名」
「先行を誰がやるか…だ」
奇襲において先行は、最も危険な役回りである。
敵の中に単騎で突っ込み撹乱し、敵を倒せるだけ倒し離脱する。この離脱時に命を落とす者が後を絶たない。
逆に村のガードは村で一番強い者が行う。言わば最後の砦。今の状況であれば確実にドランが適役だろう。
弓矢役は自身の安全圏を常に確保し続け、混乱した敵を中~遠距離で仕留める。また先行のサポートも行う。これはエルミーが行う。
適正的にもガーランが先行し、エルミーがサポート。
ガーラン、エルミーの討ち漏らしをドランが確実に仕留める。このやり方は時間が掛かるが確実に対処できる。レオナント達が帰ってくるまでは、なんとか耐えられる計算であった。しかし、ガーランの命の保証はできなかった。もしガーランが敵に囲まれれば、助ける術がない。
ガーランは自分が先行に指名されると悟って、拳を強く握った。死を覚悟する必要があった。
「オレが…」
ガーランが言い掛けたその時…
「先行はオレがやる」
そう言ったのはドランだった。
適役ではない。皆そう思ったが、口にする者はいない。皆怖いのだ。ガーランもどこか安堵した様な表情を浮かべた。先行=死 この現実が頭から離れないのだ。
時刻は夜になっていた。
ドランは楯を持ち、革製の鎧を身につけた。
心許ないが致命傷を避ける事くらいはできるであろう。
「夜の闇に紛れて回り込む。」
ドランの声は緊張と不安、恐怖の為か少し震えている様に感じた。
「ドラン…死なないで!!」
レオンが必死に訴えかける。
「死なないさ!レオークさん直伝の剣術があるからな!」
「レオークさん…力を貸して下さい。」
ドランはレオークの形見の剣を背中にまわした。
「もう門が持たないぞ!!」
見張り役が言った。
「行ってくる。」
残された村人の命を一身に背負い、ドランは林道を抜け敵の裏手に回り込む。
「普通のゴブリンが20体…いや1体だけホブゴブリンか…」
ドランは時間が許す限り身を隠し、戦況を分析する。
「今日は珍しく月が出ていないから辺りは見辛いなぁ。」
今日は珍しく新月であり、闇に紛れるドランには好都合であった。
「よし、行くか!」
ドランは撹乱の為、向かう逆方向に鳴笛を高く投げた。
ピュゥゥゥーー
高音かつ突然の事に門を破壊しようとしていたゴブリン達の手が止まり、音がした方を凝視する。
そして、ドランが出来る限り足音殺し走り込む。
「ッ…」
ドランの近くにいたゴブリンの首が飛ぶ。
1体、また1体と…一撃で葬る。
(囲まれる前に出来るだけ殺せっ!!)
ドランは止まる事なくゴブリン達を葬っていく。
真っ暗で辺りは見え辛いが、村からの灯り、ゴブリンの持つ松明と光る目が目印だった。
ゴブリンは夜になると目が光るのだ。これは普段、洞窟で暮らす為の習性である。
「ギャッギャッー」
異変を察知したゴブリン達がドランの元に集まり始める。
徐々に逃げ場がなくなっていく。
(このままでは不味いなぁ…)
ドランは焦りを感じたが、冷静になろうと努めた。
「ギャッギー」
1体のゴブリンがドランに飛び付き、動きを止めようとした。
「フンッ!」
ドランはゴブリンに飛び付かれる前に楯で殴り飛ばす。
そしてエルミーの矢がゴブリンの頭部を貫く。
(戦況は悪いが、完全に劣勢というわけではない。)
レオンは居ても立ってもいられず、見張り台へと向かった。
「おい!レオン!ここは危ないぞ!」
見張り役の村人に叱責されたが、ドランが心配なのだと伝え、なんとか見張り台にいる事を許してもらった。
見張り台からは戦況がよく見えた。
ドランが健闘していた。
ゴブリンの攻撃を楯でしっかり受け止め、体勢を崩した所を狙い、急所を突く。
必要以上に剣は振らず、必要以上に走り回らない。
カウンターに近い戦い方であった。
その様はレオークと重なった。
レオークは敵の攻撃を全て剣で受けきり、敵に無ずすべがない程叩きのめす正に強者の剣だった。
ドランは剣でこそないが楯で模倣していた。
「ドラン…強いなぁ」
見張り台の男が誇らしげに呟いた。
自分の兄貴分が褒められてレオンも誇らしかった。
しかし、ドランにも明らかな疲労が見えた。
いくら強いと言っても歳は若く20歳。
緊張と不安から疲労がいつにも増してのし掛かっていた。
怯んだゴブリン達がドランと距離を取り始めた。
ドランは緊張を解く事なく周囲を警戒した。
ただ単に恐れて引いたか…そう思ったその時…1体のゴブリンに背後を取られた。
下手くそな陽動であったが1対多数の場合は効果的であった。
「クッ!!」
ドランの背中に飛び付いたゴブリンは噛み付いたスッポンの様に離れようとしない。
それを見たエルミーはすかさずフォローの体勢に入った。
「ドラン…今…助ける」
ドランに引っ付いたゴブリンだけを射る為に全神経を集中する。周りの音が気にならなくなる程。自身の安全圏を確保しつつ、暗闇でドランを視認するのにギリギリの距離まで詰める。
弓を引き、狙いを定め…ここだ!と矢を射る
しかし矢はドランめがけて飛び、ドランの左肩に命中してしまった。
エルミーの左目に赤い幕がかかっていた。
そう。エルミーが矢を射る瞬間、ゴブリンの適当な投石がエルミーの額を掠めていたのだ。
集中していたエルミーは痛みこそ感じなかったが、額から出た血が左目に入り、一瞬、ほんの一瞬だけ目を瞑り照準がずれたのだ。
「ドランッ!!!」
レオンは叫んだ。
ドランは体勢を崩した。
1番近くにいたゴブリンから頭部に棍棒の一撃をもらった。
意識が遠のくドラン。
(まずい……脳が揺れる……倒れる)
それを見逃さないゴブリン達が集まり出す。
それは死を意味する。
ドランが倒れそうになった時、偶然にもレオークの剣が地面に突き刺さり杖の役割をした。
「グウッッ!!」
ドランはギリギリの所で耐えた。
なんとか意識を保ち、ゴブリンを見据える。
時がゆっくりになった感覚だった。
(頭はどうだ…大丈夫…思考は正常だ…左肩は…ダメだ…腕が挙がらない。)ドランは今の自分の状況を冷静に分析した。
ドランのリミッターが外れた気がした。
レオークの剣はそれを手助けするかの様に地面から抜けた。
(残りのゴブリンは…ホブ入れて8体)
左肩の痛みに耐え、ゴブリンの攻撃を剣で受け弾き、仕留める。これを繰り返す。楯が使えない状況下でドランは覚醒したのだ。
(残りはホブゴブリンだけ…)
とうとう残り1体まで追い詰めた。
ホブゴブリンはドランの強さと勢いに恐怖心を抱き、逃走を図ろうとした。
それをドランは見逃さない。
背を向けたホブゴブリンの首を刎ねる
ドランはほぼ1人で20体近くものゴブリンを葬り、村を守った。もう夜が明けようとしていた。
ドランは朦朧とする意識の中、もう一度周囲を見渡し、敵がいないことを確認すると朝日を浴びて勝利の雄叫びを上げた。
長くなりました。




