別れ
物語はゆっくりと進む
ヒロイン ルナ(幼少期)11歳
一瞬で家族を失い、幼なじみも失ったレオンは無気力に座り込んでいた。
「レオン!?大丈夫か!?」村の若者ドランがレオンの元に駆け寄る。
「え…エリンさん…レオークさん…」
ドランが見たのはエリンとレオークの無残な姿。
「二人共…亡くなっている…」
ドランは苦悶の表情を浮かべ、レオンを見る。
「レオン…ケガは?」ドランから見たレオンは血まみれで到底無事とは思えない姿だった。
「…」レオンは答えない。
ドランは察し、レオンを抱きしめた。
「大丈夫…オレが守ってやるから…一緒に村に帰ろう。」ドランは優しく語りかけるがレオンは何も答えなかった。
ドランに背をわれ、村に戻るレオン。
「父さん…母さん…」レオンが弱々しく呟く。
「…」ドランは掛ける言葉が思いつかず、ただレオンを安心させるかの様に手でレオンの鼓動に合わせて叩く。
村に着いたレオンは驚愕の事実を目の当たりにする。
100人程いた住民がたったの20人しかいなかったのだ。
それ程、今回の魔物の急襲は激しいものだった。
村に着き少し落ち着いた頃
「レオン…無事だったか…」レオークの弟で副村長のレオナントが声を掛ける。
「ドランから聞いたが…父さんと母さんの事、残念だったなぁ…」レオナントも悔しさと、悲しみを堪えていた。
「うん…」レオンはドランの励ましもあり、少しずつ口を開いていった。
「レオンを立派に守って逝った二人を弔ってやろう。そして死んだ村のみんなも…」
レオナントが村を挙げての葬式を提案した。
全員が快諾し、厳かに執り行われた。
葬儀が終わり、片付けをしていた頃、レオンはレオナントに相談を持ち掛けた。
「レオナントおじさん…ルナも消えちゃったんだ。みんなで探してくれないかな?」
「…」レオナントは顎に手を当て険しい表情をしている。
「おじさん?」レオンは快諾して貰えるだろうと思って尋ねたが故にレオナントの意外な反応に困惑した。
「レオン…ルナっていうのはこの村の者かい?」
レオナントの言葉に驚きを隠せないレオン。
「な、なにいってるの!?ルナだよ!?」
レオナントは本当に知らないという表情であった。
この村でルナを知らない者などいない。
この村では珍しい長い銀髪に蒼眼で美形。明るく愛想も良く、誰にでも好かれる性格であった。
村中を聞いてもルナを知る者は誰一人いなかった。
生き残ったルナの母でさえも…
「存在が…消えた…」レオンは精霊との契約を思い出した。
ルナは窮地に立たされたレオンを救う為に理不尽な契約を精霊と結び魔法を行使した。故に存在が消えた。そうに違いない。レオンはそう考えた。
ならば何故、レオンはルナを覚えているのか…
レオンはルナとの約束を思い出す。
(必ず迎えに来て)
レオンは今できる事を考える。
「強くなろう。父さん、母さんの為にも。そしてルナを迎えに行く」
ルナはきっと生きている。レオンはそう信じて強くなると決めた。




