鉄槌
「ドランくんっ！左！」
ユオが叫ぶ。
ドランは走りながらゴーレムの左手へ回り込む。
「かっっっとばせぇぇ」
ユオが更に叫ぶ。
ドランはハンマーを握る手に精一杯の力を込めて、ゴーレムに打ち込む。
ガンッ！！
弾かれはしないが、ゴーレムの身体を砕くには至らなかった。
「左手の拘束が解けるぞっ！ユオ！」
ラゴスが叫ぶ。
「こら〜 デクの棒ども〜 しっかり働け〜」
ユオは再度、刀を少しだけ抜きミニトレント達を威圧した。
ミニトレント達は急いで大きなツルを作り始めた。
ズザー ゴンッ ドーン バラバラバラ
「キキキッー…」
ミニトレント達がツルを作るより早く、ゴーレムの左手の拘束が解かれ、振り払った左手がミニトレント達に直撃した。
「うわぁ〜 半分は持ってかれたぁ〜 えぐいなぁ」
ユオがゴーレムの一撃の重さを痛感しながら言った。
「とりゃ〜」
ユオはバラバラになったミニトレント達の身体をゴーレムに投げつけた。付け焼き刃だが…
（力は込めた…なぜ砕けない…振り方か？力が足りないのか？何が問題だ…）ドランは思考する。
「ドランくんっ！差し出がましいがハンマーは力いっぱい握って振るものではない！力を伝える事を意識するんだ！」ラゴスがアドバイスする。
「力を伝える… わかりました。 やってみます。」
ドランは再度、ゴーレムに向かっていく。
「ドランくん！もっかい左手から！私が誘うから！」ユオは刀でゴーレムの目を狙う。
ゴーレムはユオの狙いに気付き顔面をガードする様に左手を動かした。
「グヌヌッ ハッ！！」
ドランはゴーレムが顔面を庇う素振りをした左手正面からハンマーを振り下ろした。振り下ろしまでは力を抜き、インパクトの瞬間に力を精一杯込めた。
ガンッドンッ ボロッバラバラバラ
ゴーレムの左手から肩まで砕けた。
「！？！？！？」
表情は変わらないが明らかにゴーレムは驚いていた。
「よっっしゃぁぁ〜〜」
ユオが叫んだ。
左腕を失ったゴーレムは目一杯の力で拘束しているツタを振り払った。
「ギギガ〜」
ミニトレント達が吹き飛ばされバラバラになっていく。
「あぁ～！ わたしの友達がぁ〜」
ユオが悲痛？の叫びであった。
「ラゴス守護兵団長！」
ユオがラゴスへ合図を送ると同時にゴーレムの背後に向かって走り出す。
ラゴスはゴーレムの右手に回り込む。ダメージを追っている分、動きは遅いが的を絞らせないという事に至っては実に効果的であった。
ゴーレムは翻弄され、ユオとラゴスを交互に見る形になった。
そこにドランが一撃を加える。
ドドガッ！バキッ！
右肩を潰した。
「いいぞ〜 ドランくん〜」
「よし！ユオ！」
続いて今度はラゴスが合図を送り、ユオがゴーレム背後から正面に突然現れた。
ゴーレムは驚き仰け反る
「にししっ〜」
ユオの本気ダッシュは最早、瞬間移動である。
ラゴスが力いっぱい剣でゴーレムの胴体に突きをかました。
「ウルアァァァ」
ミシミシと身体が軋む音がしたが、ラゴスは気合でゴーレムを転倒させた。
仰向けに倒れたゴーレム。
そこ逃さずドランは空中に飛びハンマーを思い切り振りかぶった。
ドランはハンマーの重みを利用しながらゴーレムの頭部目掛けて鉄槌を下した。
ドッガシャン…ガラガラガラ
ドランのハンマーはゴーレムの頭部を完全に破壊した。
ゴーレムの右手が力なく地面に落ちた。
決着であった。
頭部を潰されてはどんな魔物でも、こと切れる。
「うおぉぉ！」
ドランは勝利の雄叫びをした。
「やったぁー！倒したぁー！ナイスだぁ ドランくん！」と言いながらユオはドランにハグをした。
「な、な、な」
ドランの雄叫びを聞いたエルミーがたまたまそこだけバッチリ見ていた。
「ドランくん！ありがとう！助かった！」
ラゴス守護兵団長から感謝が伝えられた。
「いいえ…お二人のおかげです…」
ドランは恐縮して言った。
「おいおいっ！謙遜すんなって〜 カッコよかったぞ♡ドランくん♡」ユオがドランの胸当てを指でグリグリしながら言った。
「ユ、ユオ〜 からかわないでくれ///」
ドランは顔を赤くした。
「…………チッ」
なぜかまたそこだけ見ていたエルミーが無意識に舌打ちした。
