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たとえばこんな朝の来ない街をみおろす悲しみの夜の果てに

作者: 秋葉竹



その夜は山に登った。

みおろすと日の出のまだの夜の街に、

穏やかで幸せな眠りが訪れており、

すこしでも起きているそこここには、

ポツンポツンと電灯が灯っていた。

あのあたりに家族が眠り友だちかが眠り、

僕はすこし寒い山腹に立っていた。

ホモサピエンスがこの街を征服したのに、

街なかにひとは満ちたり群れたりせず、

恋愛とか家族にすがる家なかで眠る。

偶にバベルの塔みたいな建物の屋上が灯り、

動いている光はトラックのヘッドライトか、

巨大な蛇のジィーッと光るまなこなのか。

人口の三分の一が餓死した歴史を持つ世界、

その後立ち直ったなれの果てがこの街だと、

飢餓を克服した文明と進歩の時代を嘲笑う、

その巨大な蛇のまなこなのだろうか。

僕にはなにも関係なく流れてゆく時間だ。

そんな時間が過ぎてゆき、

この街の夜も明ける時間が近づいた。

そこに最悪の悲しみがある訳ではなく、

毎夜路上に転がっていた悲しみがあるだけ。

なにも特別で無い動き出した街のなかへ、

飲み込まれてゆきにゆくみんなも僕も。

不思議なことはなにも無い。

僕はなにをしに来たのかと、

僕はなにをして来たのかと、

指先が震えるほど巨大な問いを問う。

どこにゆけばよいのかわからない朝が、

きっともうすぐやって来る。

そのまえに、

スマホでこの街の夜景を撮ろう。

きっとこの目でみているほどの、

美しさはもちろん写らないことは、

残念ながら知ってはいるのだけれども。



 



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