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マルタの浜辺 サラとシオン

マルタ島の海辺 波打つ さざ波

艶やかな金色を帯びたくれないの夕暮れの風景から紫を帯びた紫へ

やがては闇色へと変化する 静かに星が瞬いている


遠い昔 その時代、巡礼者の姿のシオンは静かに水際に立ったまま

海風に吹かれていた


「シオンちゃん」楽しそうに笑うサラの声

シオンを後ろから甘えた子猫のように抱きしめるとやがて幻のように消える


「僕のサラ 本当のサラはとうの昔に消え去ってしまった

僕の作りだしたイリュージョン 可愛い・・だけど」


「シオンちゃん」その声にハッとする

「大丈夫、シオンちゃん」


「うん 大丈夫だよ 僕の可愛いサラ」「うふふ」


「ねえ 大昔の事でも思い出してたの?シオンちゃんは本当は年寄りだもんね」


「‥‥・」その言葉に思わず黙るシオン


「あの第二回十字軍のアキテーヌのお姫様とかああ それとも

息子のリチャード獅子心王?」サラが屈託なく無邪気に話かける


「本当に年寄りだよねえええ くくっ」嫌な感じの笑みのサラ


容赦ないサラの言葉に涙ぐむシオン


「うふふ 泣かないのシオンちゃん 

さあ、また美味しい食事をたかりに行くわよ」サラの嬉しそうな言葉

「ちょっとサラ!痛いって」

そう言うなり 問答無用でシオンを引っ張ってゆくサラの姿があった






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