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イエニッチリの護衛兵士と窓辺の姫君
トプカプ宮殿の中 部屋の一つ 一人の姫君
「スレイマン大帝さまの姫 そのお世話をする私の叔母さまが
エジプトに行かれるご予定があるとか・・」
彼女は呟きながら 小さな壺のクリーム状の香油を手につけたのだった。
甘いジャスミンの香り 芳香が漂う
幾何学模様の細工がある窓辺からはオアシスのような噴水のある中庭が見える
「シュルーク姫様 チャイとお菓子を準備しました」侍女が声をかける
「ああ、有難う」彼女が笑う
「新しいベールにドレスが手に入ったわ それに香油も うふふ」
窓辺の外では
一人の若者 イエニッチエリの護衛兵ナウファルが彼女を切なそうに見ている
ずっと何年も 出会ってから何年も‥結ばれる事のない見つめるだけの初恋




