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41話【ドルイディ視点】鍵、また発見

 私は人形操技という技自体の説明と習得方法について、リモデルと協力しながら、ディエルドに対して懇切丁寧に説明をしていった。


 説明などやりたくなかったが、彼が人形操技をもしも使えるようになったら、きっと今後の役に立ってくれると信じて、説明をすることにしたんだ。


 二人で頑張ってそう思い、教えていったのだけど、最後まで説明したところで私は一つ……


 あんまり意味がなかった……いや、全く意味がなかったんじゃないかと……思ってしまった。


 だって、ディエルドは話を聞いてる時、ちゃんと聞いてるのかわからない相槌ばかりだったし、説明が終わった後もキョトンとしてしまっている。


 多分、伝わってない。いや、まあ、色々話したからね。すぐには頭に入らないと思うが……


 期待した分、ガッカリはそれなりにある。



「……どう? 参考になった? ディエルド」



 覚えられてないだろうとは思うが、私は一応聞いてみることにしてみた。


 隣を見たらリモデルも同じことを言おうとしてたみたいだ。先に言っちゃってごめんね。



「うーん、まあ簡単に使えるようになるもんじゃないってのはわかったよねー……ごめん、時間使わせて」


「いや、別にいいが……」



 私は今の説明をしている間にゆっくりとベッドで休憩することが出来たわけだしね。


 眠らなくても、やはりベッドに体を預けていたらある程度は回復するものだね。


 改めて、実感させてもらったよ。


 私はディエルドとリモデルに言って、取り敢えずベッドを消してもらうと、壁にもたれる。


 ベッドで寝てばかりというのもよくないから。



「……それじゃ、俺が代わりに調べるよ」


「うん、頼んだよ。リモデル」


「うーん、オレが調べたかったなー」


「出来ないなら仕方……」


「……わかってるってー……そうだよなー、オレは使い物にならんよな。そうだよねー……」



 落ち込んでいるように見えるが、声の調子も表情も変わってない。心配してやる必要はないね。


 ただの演技でしかないと思うからね。


 私は取り敢えずリモデルが糸を使って魚の体内を探る姿を見守っている。


 口の中を掃除してるようにも見える。さっきの私も傍から見たらこんな感じだったのだろうか。


 少し面白いね。そう思うと。


 リモデルの糸捌きは慣れたもので、私よりも確実に美しいよ。俯瞰で自分の糸捌きを見れば、あまりの下手さに嘆きたくなるだろうね。


 糸捌きがこれだけ上手いと、手芸もお手の物だろう。暮らして少し経つが、まだ彼が手芸をする場面は目にしてない気がする。


 今度、やってもらうように話をしておこうかな。率直にではなく、さりげなく……ね。



「あぁ、やっぱり鍵だったな」



 リモデルが取り出したのは鍵。先程にリモデルが見せてくれたあの鍵と比べると大きい。


 見た目もさっきのもと比べると、数段地味だ。


 でも、私はそんな地味なものが嫌いではない。


 それなのに、私がリモデルがそれを取り出した瞬間に『うげっ』とドン引いたのには理由がある。


 簡単なことだ。臭い。生臭いのだ。


 耐えられないほどではないが、体内にあったせいかあまりにも生臭いよ……


 この魚、自律人形なんだよね……?



「……推測だが、後付けしたんじゃ……?」


「えっ、どういうこと?」


「いや、それっぽさを出すためにわざとこの臭いを鍵につけたんじゃないかって……」



 リモデルはそう言った。ああ、なるほど。


 私もそう思うよ。違和感がありすぎる。意図的につけたものと考えるのが自然だよね。


 ディエルドも何か思ったことがあったようで、その後に何やら喋り始めたよ。



「それっぽさって……それなら、魚自体にも臭いがついているべきでしょ。間抜けだねー……」


「……それもそうだね」



 他の狙いがあるのかとも思ったけど、あの王女だし……普通に魚に臭いをつけるという発想に至らなかった可能性も十分に……いや、十二分にあるよ。


 それにしても、間抜けって言葉を貴方が他人に使うのか……さっきあんなに恥ずかしいことを言った後に。もう忘れてしまっているのだろうか……


 鍵について思いをめぐらせて失念という……こともまあ、あるかもしれないけど。


 ……そう解釈しておこうかな。



「……行く?」


「行こうか」



 もう鍵も手に入ったし、疲れも取れたし……


 ……それに、ここにお姉様が近寄ってきているのを感じる。気のせいかもしれないけど、本当に来ているとしたら出会った時に面倒なことになる。


 これが、あんなおかしなお姉様でなければ、こんなに警戒することもないんだけど……


 私はリモデルが二個目の鍵をポケットにしまう姿と、ディエルドのことを見たら、歩き出した。


 ディエルドは気持ちの準備が出来ていないのか、疲れているのか、はたまた考えたいことがまだあったのか私が歩き出しても二十秒ほどは止まっていたが、私たちが角を曲がる姿を見ると、駆けてくる。


 よく見てなかったが、何やら手を動かしてたような……




「待って待ってって!!」


「何をしていたの?」


「はぁっ……はぁっ……いやさ、ちょっとだけアレを……何だっけ。さっき教えてくれた……」


「『人形操技』のこと?」


「そうそう、それそれ。それを練習してみたくてさ。集中力も初心者は必要って言ってたじゃん? だから、止まってやっていたんだよ」


「なら、私たちにも言ってくれればいいのに」


「言ったらジロジロ見るんじゃなーい?」



 ジロジロ見られたら、何が困るというのか……


 まさか……まさかだが、この男……恥ずかしいとでも思っているというのだろうか。


 少なくとも、この場にいる者の中で一番『羞恥』という言葉が似合わないのはディエルドだ。


 そんなディエルドが恥ずかしいと?


 いや、まあ……それは聞かないでおこう。



「歩きながらでも、集中は出来るだろう? お姉様が近寄ってきてるから、止まってやらないでくれ」


「あ、あー……集中してて気づかなかったけど、確かに姉さんっぽい気配と香りが少し……」


「リモデルもそれぐらいは気づいてたよ? だよね?」


「……ああ、気づいてたよ。それにしても、ドル。近づいてきたのがお姉様ってことはさ。ここには君の弟や妹もいるってことなのかな?」


「いや、そのお姉様とそこのディエルドだけ」



 それを聞いてもリモデルの疑念を感じさせる表情は変わっていかない。


 そうだよね。疑問はそれだけじゃないよね。


 もっと人が来なさそうな場所に行くまでの間に、その疑念を私とディエルドで晴らしてあげよう。


 私はそう思うと、さっきのように念の為ということで防音と防衛を兼ねた結界を張り……


 あたりの警戒に今まで以上のつもりで意識を割きつつ……諸々の説明を始めるのだった。

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