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38話【ドルイディ視点】二十一匹目の魚

 カイスイで満たされている部屋で魚を捕り、その体内を確認するという作業……


 それは予想の二倍。一時間もかかった。三人もいたのにも関わらず、それだけかかったのは、魚がもちろん多かったからでもあり、泳いでいたからでもある。


 結界を一部解除して即座に魚を入れるという行動が予想以上に難しかったからでもある。



「難しさを考えたら、私たちは比較的早く終わらせることが出来たのかもしれないね、リモデル」


「事実がどうだろうと、ドルのその考え方でいた方が気持ちの落胆は最低限で済みそうだな……」


「同感だよー、二人ともー」



 魚たちはどの子もやはり、普通でなかった。


 自律人形の一種かと考えてるよ。魚型のね。


 鱗が人工の物だし、内臓なども全て私が見たことのある自律人形用の部品で構成されていたね。


 ただ、全ての魚……およそ二十匹の体内をくまなく調べてみたのだが、宝と思われるような希少な部品や鍵などといったものは見つかることはなかった。



「……うーん、宝は部屋の別のところかな……」


「それか、最初から宝なんてないとか……誰もこの部屋に絶対宝があるなんて言ってなかったもんねぇ……」


「ああー……そうだったね」



 ディエルドの言う通りかもしれない。誰もこの部屋に宝があることを断言していない。


 勝手にあるんじゃないかと判断して入り、探しているだけだった。浅慮と言わざるを得ない。


 ありそうな気はまだしているんだけど、これ以上は時間の無駄な気がしているよ。


 他の部屋に向かっていこうと思う。


 私はリモデルの手を引こうとするのだが、リモデルは立ち止まって動こうとしない。



「……リモデル?」


「いや、ドル……ここの魚ってさっき数えた時には確か二十匹ぐらいだったよな……?」


「え、ああ、うん……」


「なんか、二十一匹になってないか……?」



 リモデルが冗談といった感じではなく、至って真剣という表情でそう言うため、私は確認してみた。


 さっきは若干焦る気持ちがあったから、間違えていたという可能性はある。


 私はゆっくりと魚をそうやって数えていったが、確かに二十一匹いた。


 よく、リモデルはそれに一瞬で気づいたものだ。


 いや、話している間に数えてたのかな? 視線が泳いでいたような気もするし……



「確かに二十一匹だ。増えたとは思えないし、数え間違いだろうね。ありがとう」


「あの魚、だよね? なんか微妙に他の魚より光っているような気がするヤツ。オレ、調べていーい?」



 ディエルドが言った。何を言ってるのかと思いつつ、指を差している魚を見てみたところ、確かに他の魚と比べて鱗が光っているような……気がする。


 よーく見ないと他の魚より光っているとは思えない。つまり、大して違いはないのだ。


 この男もリモデルと一緒で意外に魚のことをちゃんと見ていたのか。ボーッとしてるように見えてしまっていたよ。ちょっと申し訳なかったね。



「調べるって捕りに行くってこと?」


「もちろん、そゆことよ。だいじょぶ。結界やって、ササッと捕ってくるからさー……」



 いいところを見せたいという思いよりも単純な興味により、やりたいと言ってるように見えるな。


 珍しい。そういうところに興味を持つ人形だという認識はなかったのでね。


 ま、一時(いっとき)の気分なのだろう。


 それにしても、調べるってどういうことだ……? ディエルドは人形操技を使えないよね?



「……」



 尋ねようと思ったが、その時には本人は水の中に入る準備が万端だったために言い出せなかった。


 ディエルドは目の前で自身の周りに結界を張ると、即座に躊躇いなく駆け出していく。


 いやいや、駆け出して向かって気たら魚も逃げるだろうに……いくら、人工とはいえ……


 人工でも私のような特殊な自律人形と一緒でかなり似せて作られてるんだよ。忘れてないかな。


 ディエルドはそのことに自分で途中で気づいたようで、部屋の真ん中に着いた時にはその動きもかなり遅くなってはいた。


 ……その時点でかなりの魚が彼から距離を取っていたんだけどね。手の届く範囲に一匹もいない。



「……うーん」



 ディエルドはどうしようかと悩んでいるようだ。


 そうだね。さっきのあの魚は部屋の天井近くにいる上に、他の魚に守られている。


 いや、あの魚たちに守っているという意識があるのかはわからないが、群がってるからそう判断した。


 少しだけ考えてディエルドは跳躍……


 何をするのかと思ったが、そのまま手と足を動かして魚に向かうだけだった。


 ……考えた時間はなんだったんだよ。


 それでも、まあ十分もすれば捕まえられた。


 ディエルドは無駄に疲れていたようなので、回復するために何かしようと思ったが、これも魔力が余っているというリモデルがどうにかしてくれた。


 さすがにいいと思ったんだが、残存魔力を可視化され、本当に莫大な魔力が余っていることを教えられてしまったので、何も言えなかったね……



「お疲れ、ディエルド」


「ちょっと無駄な動きが多かったな」


「言うねぇ。でも、確かにその通りだねぇ。気をつけていくようにするよっ! 次はね?」



 次って……またやってくる気か?


 って思ったけど、多分また違う部屋のことを言ったんだろうな。この部屋にまた来た場合の話をしたのかと思ってアホなことを言ってると思ってしまった。


 アホは私だったね。精神の疲れが自分でも今ので何となくわかってきたかもしれない。



「……ドル、休むか」


「ドルちゃん、休む?」



 リモデルもディエルドも、なんと私が休もうとしていることにいち早く気づいてくれた。


 私がそれに頷くと、リモデルとディエルドはなんと協力して私用のベッドを生成してくれた。


 最初はリモデルだけが作ろうとしていたのだが、ディエルドも何かしたいとと聞かなかったんだ。


 なので、形作るのはリモデルでもその魔力の十分の六はディエルドの魔力だったりする。


 打算かもしれないが、感謝は伝えたよ。



「じゃ、確かめよっか」



 ああ、そうだったね。魚の体内に宝があるのかどうか調べようとしていたんだった。


 いくら人工でも水から何分も出したままでは可哀想だ。とっとと体内を調べて、とっとと水の中に戻してやろう。この魚もきっと戻りたいはず。



「それで、どうやって調べるの?」


「さっきの糸を使えば調べられるんでしょ? ドルちゃんもリモデルも簡単そうにやってたし、オレも一回やってみたかったんだよ。どーすればいいかな?」


「うっ……ほ、本気で言ってるようだね……」



 どうやら、このディエルドという男、私やリモデルが簡単に人形操技を使っているから、自分も簡単に使えると思いこんでいたらしい。


 なんだ……期待して損した。


 そんな簡単に素人が出来るわけないだろう。


 いくら早い者でも一週間はかかると思うよ。私がそのぐらいでの習得だったからさ。


 私はため息をつきながら、リモデルと協力して一応技の説明と習得方法を教えていった。

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