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31話【ルドフィア視点】妹や弟と同じくらい愛おしい

 私はドルイディたちが連れてきたあの二人のかわいい子供たちを見て、心が掴まれてしまったわ。


 自分の妹や弟しか『かわいい』と感じないと思っていたけれど……そんなことなかったというのね。


 私は自分より小さい子が……きっと好きなのよ。女の子であれば、尚更ね。多分……


 そんな子供たちを眺めて楽しんでいたのは確か三十分ほど……三十分経ったあたりに、私はリュゼルスが事前に言っていたように『遊び』の準備を始めたわ。


 話をしながらだったから少し遅くなったりはしたけれど、それでも出来たわね。


 なんでこの部屋で遊ぶわけじゃないのに準備をしたのか? 私たちは遊びの参加者ではなく、参加者を見守る主催者側の立場だから、みんなの動向や宝の有無を確認する道具を用意したかったのよね。



「ルドフィア様! ボードを見て宝は一つもなくなっていないことが確認できました。問題なく始められますわ!」


「ありがとう! あとは起こすだけね」



 この子たちは何という名前なのか、初見では……すぐにはわからなかったわ。


 でも、じぃーっと見つめたことで思い出したのよ。彼女たちが陛下(おとうさま)に部屋を貸し与えられている子供の人形師であることを。


 最高よ。私も人形師の端くれだから、軽ーく……いや、我慢しないでじっくりと人形に関することを……教えてあげちゃおうかしら……? いつかね……



「……んん」


「ふぁーあ……」


「……かっわ……いい」



 背伸びをしながら欠伸の声を洩らす二人を見て、私は妹や弟を見るかのような気持ちが沸きあがる。


 ……庇護欲も、同時に。


 撫でてあげたいところなのだけど、突然に知らない人形に頭を撫でられたら困惑するわよね……


 我慢して、まずは無難に自己紹介かしらね。私のことをよく知ってもらって、私も彼女らのことを彼女らの口からちゃんと聞くのよ。うん。


 隣のリュゼルスも同じ考えのようで、何も言わなかったわ。貴女は割とわかってるわよね。



「起こしちゃってごめんね……」


「わたくしも悪いと思っております。ごめんなさい」


「えっと……誰なのです?」


「……誰なのだよ?」


「はうっ……えっと、私はルドと言うの。よろしく」


「わたくしはリュゼと言います。よろしくお願いいたしますわ。仲良くしてくれると喜びます」



 第一王女であることもルドフィアであることも言わないわ。萎縮されたら嫌だもの。


 懐かれたいという思いもあるし……それなら、明かしてしまうべきではないと思うのよね。


 偽名に関しては雑に決めたわ。ただの略称って感じよね。でも、これぐらいの方が私は覚えておけるからいいわ。変に長いと忘れてしまうもの。


 時が経って、親密になってきた時に本名を明かすのよ。本当はルドフィア、だってね。



「……ねーたん、どうする?」


「……わかんないのです」



 どうすればいいか分からずにいるプララちゃん……かわいすぎないかしら?


 もちろん、危ない状況だからということで姉に頼るラッシュくんもかわいいと思ってる。


 一挙手一投足がかわいい……正にかわいさの化身ね。


 ……これで妹や弟への愛が薄れるということはないけど、最近はかわいさ成分を摂取できていなかったから勘弁してちょうだいね。言い訳だけど。



「……私たちは貴女たちを害する意思はないのよ? 怪しいかもしれないけど、ちょっとこの館で行う『遊び』に参加してほしいだけ。信じてくれないかしら?」


「……うん」



 溜め、からの……俯きがちな首肯……


 これはきっと『信じてくれない?』という言葉への首肯。『うん』というどっちとも取れるような答えなのは、まだ考えがまとまってないためよね。


 姉だからということで何とかしなきゃと思っているのか歯噛みしながら思案してる様子……


 さっきから寝言を聞いたりして何となく思っていたけど、ラッシュくんの方が多分頭の回転が早いわ。


 ……どちらのどこも、今の私にとっては……狂おしくなるほど、愛おしく感じられる。



「……ルドフィ……ルド様よりわたくしの存在が怖がらせてしまっているのかもしれませんわ」


「え? なんでよ?」



 リュゼルスは私が不思議そうに尋ねると、先程まで一緒に行動していたことやドルイディが飛ばした糸を止めたことなどを話していった。


 一体何をしたのかと思ったけど、確かにそれなら警戒してしまうわね……


 私は庇おうと思っていたけど、やめておいた。


 ……リュゼルスが明らかに悪いと思うから庇いたくなくなったとかではなく、彼女がどうやって好かれようとするのか、気になったからよ。



「本当にごめんなさい」



 頭を下げた……予想の範疇を抜け出ないことをしてきたわね。面白くないわ……


 ちょっと期待して損したかも……


 いや、これからよね……?


 ……そう思ったけど、リュゼルスはそれ以上は何もしてこなかった。


 別に自分のことじゃないからいいけど、それだけでは印象はよくならないと思うわよ。



「……ごめんなさい。でも、本当にただ遊んでくれるだけで私たちは貴女たちをここから出そうと考えているの。もちろん、今日のうちにね」


「ぼくたちを?」


「そうよ!」


「他にもこの館に来ている人がいるよね? その人たちも同じように帰してくれるのだよね?」


「ぃっ……!」



 きっと……ドルイディたちのことよね……


 一瞬、予想外の質問で戸惑ってしまったけれど、ちゃんと帰すつもりはあるから答えるわ。


 嘘じゃないもの。問題ない。



「もちろんよっ!! 絶対に帰すわ!!」


「ちょっと、勝手に答えないでほしいですわ!」


「リュゼ、黙って!!」



 ここですぐに答えないと、この子たちの不信感は確実に強まっていく。


 ちょっとどもるかと思ったけど、どもらなかったからきっと今ので多少は印象がよくなった……


 ……らいいけど、なってないわよね。



「……取り敢えず、言いたいことはわかったのだよ」


「わかったのですが、その『遊び』とやらに参加するか決めるのは内容の説明を聞いてからにしたいのです」


「ぼくもねーたんと同じことを思うのだよ。なるべく簡潔に『遊び』とやらの説明をするんだよ?」



 説明ね。それなら、元よりするつもりだったのだから何の問題もなしよ。


 私が説明しようと思ったのだけど、『それはここの主である自分が説明したい』などとリュゼルスが言った。


 正直、不服だけど……ここで私が話し続けるのもどうかと思ったし、すぐに了承したわ。


 彼女が説明したのは嘘偽りのないそのままのルール説明。やるのは『宝探し』という単純な遊びだからそんなに時間はかからなくてよかった……


 案外、ちゃんと説明できていたからこちらが口出しするような場面はなかったわね。


 どちらの説明も終わると、リュゼルスが二人を椅子に座らせたので、私も二人の対面に座る。


 ドルイディたちがリュゼの事前に用意してくれていた部屋に着くまでここで待機ね。



「……うん」



 ちょっとワクワクしてるわ。


 ドルイディ、ディエルド。貴女たちには悪いけど、私は全力で貴女たちが宝を見つけることを阻止させてもらうわ。あんまり恨まないでね。


 ……ショック受けるから。お姉ちゃん。

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