30話【ドルイディ視点】『遊び』について《2》
『宝探し』の宝はこの館の中に隠されており、私たちは協力してそれを見つけないといけないらしい。
こんなことを言うのもなんだが……そんなことをして何になるというのだろう。
宝が何であるのか事前に明かされたらもう少しやる気も出るというものだが、ディエルドはそこはわかっていないなどと言っている。はぁ……
リモデルがその宝であるのなら、喜んで見つけにいく気にもなるというものだがな……
……彼はこの館のどこかにいることがわかってるし、彼自身が宝の可能性はありそうだね。
そうだったらありがた……いや、ありがたくはないな。彼が危険な目にあってることをありがたいと思っちゃダメだろう。何考えてるんだ、私。
「……ふぅ」
それで、更にディエルドの説明を聞き、二組に分かれて行うことが確定したことも知った。
一組目がリュゼ、ルドフィアお姉様、プララ……ラッシュ……このことを説明された時、私はリュゼたちの下心が見えたためにため息をついたよ。
二組目はまだ内緒。いずれ、わかるからこちらからは多分話すことがない、らしいよ。
……リモデルと一緒だといいなぁ。
それで、肝心の内容だが……宝は一つではなくいくつもあり、それらはむやみやたらに探しても見つからないようになっているんだと言っていたらしいね。
……なんか本当かわからないけど。
「はぁーあ……」
それじゃ、まあ重要なことは話してもらったことだし、部屋に戻ってもらおう。
そう思ってディエルドを部屋に戻そうとするのだが……
「ドルちゃんちゃん」
「ちゃんを二回言わないでいいよ」
「……まだお話しない?」
「……」
貴方の気持ちはわかる……何となく……
「部屋に戻るのが憂鬱だから、私と話したいんだよね? 気持ちはわかるが、もうお話はしたくない」
「……わかってくれてありがたい……ここに留まってくれたら、もっと嬉しいカナーと思ったりー……」
「……ごめん」
私は彼の肩を叩くと、背を向けた。
すると、着いてきた。そりゃそうかって感じだね。
「あのね……」
「いや、なんか行きたいところがあるのはわかった。少し前に。でも、ちょっと話を聞いてほしい」
「ちょっと……? どれくらいで済む?」
「本当に長くならないって。じゃ、三分……!」
まあ、それならいいか……
……とはならない。三分という時間自体は大したことないけど、『ちょっと話をしたい』と言って出てくる時間が三分となると、少し長いのでは……
……と感じてしまう。私の感覚ではね。
「……」
「……ダメ?」
「内容次第では聞こうかな。ただ、私はこのまま止まらず歩き続けるつもりだから、貴方も歩きながら私にそのことを伝えようとしてもらえる?」
「おっけっ! それでいい! 助かるよっ!」
見るからに嬉しそう……はは。
口調は軽くても少し元気でなくなったという印象だったけど、今の私の言葉でちょっと元気が戻ってきたかなって……そんな気がしてるよ。
私の気持ちもさっきまでのことと疲労でおかしくなりそうだったんだけど、なんか今のディエルドみてると……多少は回復してきているというか……
「……あ、最後に見ていく?」
「そだね。様子見とく」
ディエルドは私の言葉で部屋の中のことを思い出し、確認しに行く。
取り敢えず、最後の確認って感じだね。
すぐ終わるかと思ったが、何か見えなかったのか案外時間をかけていた。
食い入るように見ている感じ……もしかして、みんな見えにくい位置に移動したとか?
それとも、何か気になることをしてるとか?
……どちらもってこともあるね。
「ディエルドっ」
「キミは行くんじゃないの?」
「いや、何か話すんじゃなかったのかい?」
「……そだね。行こう」
……なんだ? 一体何を見たのか……?
聞ける雰囲気じゃないし、私の早く行きたいという思いを折角尊重してくれてるわけだし……
……そのまま、行こうかな……うん。
「……」
リモデルの場所についてだが、リモデルのものと思しき香りが近くにあるし、この不思議な屋敷……館? を不思議たらしめているであろうリュゼは部屋の中で遊んでるだろうし、たどり着けると思ってる。
もちろん、それが絶対などとは思ってない。
むしろ、行けない可能性の方が高いと言えよう。でも、行ける可能性はゼロじゃないし……
……こうして行ってるわけだよ。ちょっと駆け足気味に行ったからこの感じだとそうかからないはず。
五分で付けると推測しているが、そうなるといいね。
……念の為に『ミツケラレーダー』に指で線を書いていこう。どんな道を通ったか覚えておけるように。
この機能は少し前に知ったんだ。プララたちが教えてくれなかったのは忘れてたとか、かな?
「あ、そういや……」
話は三分かかると言っていたからちょっとまずいな。歩みを遅めれば、まあ聞けるか。
あまり飛ばしすぎて疲れるのもよくないと思っていたこともあって、私は少し速度を落とす。
そして、後ろから何やら考えつつ、こちらに向かってくるディエルドのことを横目で見る。
「ドルちゃん、いい情報」
「えっ……」
「キミが向かおうとしている場所がどこかは知らないけど、リュゼが『遊び』が本格的に始まるまでは不思議の館の機能は切ってあるんだってさ」
「へえ……それはいい情報だね。ありがとう」
「も一つあるよ。聞いてく?」
「そうだね。今のがいい情報だったし聞かせてくれ」
こんなにガッツリ聞くつもりなかったが……
私は一つ目の情報がよかったこともあり、歩きながら後ろを向いていた。
もちろん、たまにも前は見ている。
いや、本来は後ろの方をたまに見る程度にすべきなんだけどね。危ないしね。うん。
「オレが出ていったの普通にバレてった」
「えっ……それ、どこがいい情報なの?」
「待ち待ち! 続きがあるから……!」
「そ、そうか……」
「バレてたからか、こちらを見て口パクで言ったんだ。『空いている部屋があるのでそこでくつろぎながら『遊び』が始まるのを待っていてくださいまし。楽しみで待ちきれないとは思いますが』って」
まるで、私たちが遊びたがっているとでも思っているかのような言葉だな……腹立たしい。
私たちは付き合ってあげている側だというのに……
「それにしても、空き部屋か……その詳細な場所というのはちゃんとわかっているというのか?」
方向だけディエルドに指差しで教えてもらった。
それはリモデルの香りが残っている方向と同じだった。
もしかしてだけど、これって……リモデルの部屋なのでは……? リモデルの部屋に行けば、『遊び』が始まるのだと……リュゼは伝えたかったのかも。
……いや、空き部屋って言ってたから違うかな。まあ、どちらにしろ行ってみるけどさ。
「……はぁ」
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