19話【ドルイディ視点】『グタイテキモード』
作戦内容は既に話した。
簡単だよ。リモデルにこの前にガッツリ教えてもらった『人形操技』という糸を使う人形師の技……
この操技のために生み出す糸は罠の探知に使えるから……それをそこかしこに伸ばすんだ。
かつて、これを使って前人未到の魔窟と呼ばれていた魔物だらけの洞窟を制覇した人形師がいるらしいから。人形製作の材料を求めて行ったみたい。
一応、技の名前やどういう物かは知ってたけど、今までは使えなかったんだよね。
使えると、本当に便利だと伸ばしてみて思ったよ。
少なくとも、庭には罠はなかったとわかったから。
「なかったんだよねぇ〜?」
「もちろん」
「もちもち? モッチ?」
「モッチをまた食べたくなったのか?」
「いや、もちろんの意だよ……」
伝わらないよ。
ま、ディエルドの意味わからない言葉は無視でいいよね。気にしても意味なし。
プララとラッシュの方を見ると、彼らはこちらが何かを言う前に庭に立ち入っていた。
「……危なかっしいなぁ」
「キミもだよねー……」
ディエルドが半目で下から見ながら、そう言った。その動作、うざったいしやめてくれ。
もう前のことになってしまったが、地下空間でのことを思い出して「うっ」となるよ。うっ。
「まあ、確かに否定できないが……」
「でしょ〜」
「でも、貴方ほどじゃない」
「……かーっ……ああ、そうくっか……ま、いいけど」
何が『ま、いいけど』だ。
危なっかしさに順位をつけるなら……あ、もちろんこの場にいる者での順位ね。
一位はもちろんディエルドだが、二位はプララで三位がラッシュかな。
ラッシュはプララよりまだしっかりしてる方だ……と思っているんだよ。少し……ね。
四位は自分で言うのもあれだが、私。
自己評価高いと思われるかもしれないが、ここにいる者たちがあまりに危なっかしすぎるだけだ。
私は私で危なっかしいんだろうね。
「貴方たち、ここであんまり好き勝手に行動すると危険かもしれないよ。罠はないことはわかったが」
「……? それなら、大丈夫だと思うのですよ」
「大丈夫だと思うのだよ。一応」
プララはともかく、ラッシュはこうして庭を好き勝手に歩き回るのは危険だと……
少しは思ってくれてそうで……まだよかった。
「いやいや、いつどこからこの屋敷の家主が出てくるかわからないだろう? 敵意を持っていて、攻撃をしてきたら、それにすぐ対応することができるとでも?」
「警戒しすぎなのですよ」
プララ、貴女は警戒心がなさすぎるんだよ。
私はこういう危険な状況では決して警戒を解かないでいるように決めたんだ。
過去の過ちを繰り返さないためにもね。
ラッシュに何とか説得してもらおうと思ったら、近くにいた彼が私に説明をしてくれた。
「ねーたんとボクは屋敷の中に第一王女様がちゃんといるのかどうか確かめたのだよ。そして、いることがほぼ確定したから具体的な場所を調べたんだよ」
「待て待て。どうやってだ」
「もちろん、『ミツケラレーダー』を使ってなんだよ」
えっ、なんかラッシュが『ミツケラレーダー』を持っているんだけど……
本人も『ミツケラレーダー』って言ってるし、本物なのかな……? あれ、でも……
『ミツケラレーダー』って二つあるんだっけ? だって、私も同じ物を持って……
「……って、ない!?」
先程まで持っていた『ミツケラレーダー』がなくなってしまっていた。
す、凄まじい早さ。いつの間に……
私はずっと肌身離さず持っていたつもりだった。警戒心は解かずにいて、その上結界も張っていたというのに何たる失態……恥ずかしいよ。
「……」
この姉弟は手癖が悪いのか……? そう思ってちょっと引いていたところで……
横にいたディエルドの間抜けなニヤケ面が見えて、私は一瞬で察してしまった。
プララとラッシュ、ごめん。
こいつ、なんだよね……? 奪ったの。こいつが奪って貴女たちに渡したんだろう?
「……わかったよ」
「ってて……!? なんで!? ドルちゃん、唐突に腹を殴るのやめてよ!! 痛い!?」
「ごめん、悪かったよ」
「ねえ!? それ、誰への謝罪?」
「……」
「少なくとも、オレへの謝罪じゃないね!? それ」
絶叫しているディエルドの腹を一頻り殴ってスッキリした。心做しか気分が晴れた。
不安も同様に晴れた気もしてる。やったね。
私はラッシュのもとに行くと、途中で終わってしまった説明を求める。
「……それで、その『ミツケラレーダー』を使ったら、どうやってルドフィアお姉様がここにいることを確定させることが出来たんだ? 教えてほしい」
「具体的な場所を調べた方法もだよね」
「あ、ああ、そうだ。お願いしたい」
「いいのだよ〜……」
ラッシュは快く返事をしたと思うと、私に対して結構丁寧にそのことを説明してくれた。
確定させることが出来たのは壊れていないか確かめた後にルドフィアお姉様がなくなる直前で落としたと思われる首飾りの一部を入れたら、またしてもここにいるのだとレーダーが告げてきたから、なんだと。
そして、その説明が終わると、ラッシュは具体的な場所を調べた方法について教えるためだと言って、『ミツケラレーダー』を裏返しにして見せた。
そこには小さくて色が目立たないために教えてもらわないと見つけられないようなボタンがあった。
どうやら、これを押せば『モード切り替え?』というものが出来るらしい。
それで、よくわからないが、『グタイテキモード』とやらになったこのレーダーを屋敷に当てれば、場所の正確座標と捜す相手の正確な状態がわかるらしい。
ほう……本当に便利だ。
私がそう思っていると、ラッシュはレーダーを私に笑顔で渡してきて、言った。
「第二王女様も使ってみる? 別にいいのだよ」
「あ、じゃあ、お言葉に甘えて」
そのモードを切り替えられたレーダーは私もちょっと使ってみたいと思ったしね。
彼は私に機能をちゃんと知ってもらうために一度表示されたお姉様の座標情報や状態の情報を消した。別にそんなことをしなくてもいいんだけど……
とにかく、一からやってと言われたので、私は言われた通りにそのレーダーを使うのだった。
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