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14話【ドルイディ視点】モチモチモッチ、二人でハムハム食む

 前方確認をきちんと怠らないようにしながら、私は『ミツケラレーダー』に表示された青点……ルドフィアお姉様がいる場所へと歩いて向かっていた。


 同行しているのはうるさい兄ディエルドとかわいいプララとラッシュの姉弟だよ。


 兄の方は大人しく待っていてほしかったけど、置いていくとそれはそれで面倒なのでね……


 嫌そうな顔をしたら、その時点で泣きそうな演技をされた。誰だって連れていくよ。


 この男を知る者なら、何かをしでかす予兆の泣き真似だと理解し面倒くさくなるし、知らずとも可哀想だと思うんだ。顔がよくて王子でもあるから。



「おうゃーん、こえ食べやいんん〜?」


「何を言っているのかわからない。それを食べないのか聞いてるってことかい?」



 多分、『ドルちゃん、これ食べないん〜?』と言ったのだろう。食べながら話すな。


 人形国の第二王子がそんな行儀悪くてどうするんだか。礼儀作法に関してもルドフィアお姉様はよくご存知だから、彼女にまた叩き込んでもらうとしよう。


 食い意地の悪さについてもね。


 昔の……そう。幼少期のように。


 まあ、私たち自律人形は人形であるが故にいくら人間に近いとはいっても見た目にさほど違いはないがね。昔も彼の見た目や性格はあんな感じだった。


 ……精神は幼かったけどね。



「それ、どこで手に入れたんだい?」


「……んぐっ……さっきプララちゃんがくれたよ〜ん」



 ゴクリと飲み込んでから、喋った。


 うん。私の視線に耐えかねて急いで食べたんだろうね。途中物凄くモグモグしていたから。



「……けほっ……ほっ……えっ」



 一気に飲み込んだせいか()せているし……


 ()せるほど、早く食べる必要ないから。まだお姉様のところまではしばらくかかるみたいだし。


 普通に食べ終わってから喋ればいいんだよ。


 それにしても、プララがくれたのか。あのモッチ。あそこに食べ物を保管する場所なんてあったか?


 プララに視線を向けると、ピースしてきた。いや、違う。説明が欲しいんだが……


 そんな私の思考を読んだようにラッシュは近づくと、私の耳元で教えてくれたよ。


 どうやら、とある人形の体内を食べ物を冷蔵できるように改造しているらしい。


 出す時は……口からなんだとね。汚いからやめてほしいよね。どういう発想?


 やめてほしいと言おうと思ったが、それを言う前に面倒くさいことを言われると思ったのかラッシュはそそくさと無言で……無表情で姉の横に戻る。



「で、それ……モッチだよね?」


「うん、そだよー」


「食べないのかと聞いてきたってことは……もう一つあるんだよね? もらえないかな、好物なんだ」


「あれっ、ドルちゃんってこれが好物なんだっけ? 違うよね。この食べ物ってこの国の食べ物じゃないし」


「……っ……いや、実は最近に食べる機会があってね。その時に好物になったんだよ」



 モッチを渡してくれたリモデルのことを思い浮かべる。


 今頃は慌てているだろうか。


 いや、書き置きがあるから大丈夫だよね。大丈夫であることを祈っておくとしよう。



「食べる機会がぁ……? 誰がくれたんだよ。メイドの誰かさんだったりするか?」


「まあ、そんなところだ」


「あ、違いそう。メイドじゃなくて執事か?」



 なんでそういう変なところで勘が良くなる……?


 ……かと思ったが、執事なのかという問いに首肯したら納得したから勘が良かったわけじゃなくて、何となく言っただけっぽかったな。よかった。


 ディエルドは首肯後、プララのもとに行って、モッチをもう二つ持ってきた。


 ……なんで二つなのか……? 想像は出来てるが。


 ……どうせ、一つは自分の分だと思っていたら……案の定そのモッチを自分の口に放り込む。


 はぁ……お腹が減ってたんだね。まあ、そりゃあれだけ色々なことしてれば、人間近い我々はお腹も減ってくるよね。空腹は仕方のないことではあるが……


 ……もっと、間隔を空けてもよくない?



「あい」



 モッチを全て口に放り込んでいるので、頬が膨れている。その状態でディエルドは渡してきた。


 口を開けて食べないのはいいことだが、そんな一気に食べたら喉に詰まらないだろうか。


 さっきも言おうと思ったけど、ゆっくり食べようよ。


 頬を膨らませ笑顔でモッチを渡してくる彼を……少し、ほんの少しだけかわいいと思いながら……


 私はそのモッチを感謝して受け取る。



「……ありがとう」



 受け取ったモッチをハムハムと食む。美味しい。


 相変わらず歯に張りつく食べ物だが、名前の通りモチモチとしていて美味しい。


 ……前に食べたものと比べたら、若干、味が薄い気がするけどね。甘味がもっと欲しい。


 今度、このモッチを作った人に会えたらそのことを嫌味でない感じで伝えてみようかな。



「……んっ……んっ」


「……やっぱり、詰まってるじゃないか。本当にしようのない人形だな、貴方は」



 私は喉にモッチを詰まらせて唸るディエルドの背中を私は叩いてやる。


 人間と同じで背中を叩いてやると飲み込めて、楽になるだろうからそうしてやった。


 他にも色々あると聞くが、私はこれしか知らないのでね。



「……大丈夫か?」


「うっ……うぇっ……大丈夫。大丈夫だよー……ドルちゃん。本当に迷惑かけてごめーん……」


「貴方はさっきから迷惑しかかけていないよ……全く」



 ん? 後ろで何か笑い声が。


 振り返ると、プララとラッシュが笑顔になっていた。なんだ……なんか面白いことあったかな。


 あの二人が私たちを嘲笑する……かはわからないが、なんかそうではない気がする。


 ……多分、思い出し笑いだろう。見てごめんね。



「……良……だよね」


「……うん、仲が……伝……るよ」



 微かに聞こえた言葉の意味はわからなかったが、取り敢えず私はディエルドに注意を。



「ディエルド、今後詰まった時は自分でやってね」


「えっ、まあいいけどー……」


「水魔法でやると取れるの早いかもよ?」


「ありが……あっ、もしかしてドルちゃんもオレみたいに魔力欠乏で……? ひゃー、愛されてるー!!」


「違う!!」



 ディエルドの後頭部を引っぱたく私を見て、また何か笑い声が聞こえた気がしたけど……


 私はそのままディエルドへの注意を続けたのだった。たくさん言いたいことがあるしね。

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