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12話【ドルイディ視点】いい恋人さんなのですね

「ぼくたちのとーさんとかーさんがそういう物を人形と一緒にたくさん作ってたから……」


「横でずっと見ていて、作り方を教わったわたしたちは『ミツケラレーダー』みたいなものを自分で作ることも出来るようになっていたんですよ」



 説明終わった。早いね。早口だったわけじゃないのに十三秒で終わってしまっていたよ。


 じゃあ、もう一つの方の説明も待つとしよう。



「先に『ミツケラレーダー』の説明を優先しちゃってごめんなさいなのですよ」


「いやいや、気にしないでいい」


「それじゃ、お部屋の場所についても答えるのです」



 プララは再び「こほん」とかわいらしく咳をして息を整えていた。いちいちそれするのかい?


 かわいいから、何も言わないけども。



「あっ……」



 私は横で同様に癒されてるディエルドを見て、プララのことをにやけ面で見るのを止める。


 なんかね、うん……止めたくなったんだ。



「お部屋の場所については引っ越ししてもらったんですよ。国王様にお頼みして……」



 それはなんでだろう。この子たちは定期的に部屋を変えないと気が済まない性格だったり……?


 それなら、かなり迷惑だ。


 この子たちに対する見方がかなり変わってきてしまうから、そうであってほしくないね。



「実は前に人形を作るのを失敗しちゃって……」


「ふむ」


「部屋の設備が使い物にならないことを国王様に言ったら……新しい部屋を作っていいと仰って……それで二人で色々ぱぱぱぱーんってやってたら出来たのです」



 最後、明らかに説明が面倒くさくなっただろ。


 ぱぱぱぱーんってなんだ……ぱぱぱぱーんって。それじゃあ、全くわからないのだけれど。


 ラッシュの方が説明が得意という言葉を思い出したよ……なるほどね。


 プララには悪いが、ラッシュに聞いた方がよかったんじゃないかと今ので私は思ったよ……


 ぱぱぱぱーんの詳細が知りたかったから……



「……」



 それで、今の説明だとやはり、元々はこの工房は違う場所にあったってことだよね。


 本当にディエルドの言う通り、私の部屋の近くだったりしてね。ま、多分ないよね。



「それじゃっ、整備に移るのですっ」



 ワクワク感が伝わってくる。部屋の説明などをしてた時とはテンションが全然違うよ。


 それだけ、早く整備させてほしかったんだね。質問でそれを先延ばしにしてしまって、悪かった。



「いや、本当にごめんね。質問しちゃって」


「大丈夫なのだよ。気にしないでいいのだよ」



 私たちは今からはこの子たちが人形を作る姿をじっと見ていよう。今後の人形製作のヒントがこの子たちから得られる可能性はあるから、無駄じゃないよ。


 ……まず、プララはラッシュと顔を見合せた後に何故か何も持たずにこちらに向かってきた。


 どういうことかと思いながら後退する。いや、眼前にまで迫ってきたからそりゃまあね。


 ドン引きしてるわけじゃないよ。ビックリしたのさ。



「第二王女様、後ろに下がらないで欲しいのですよ」


第二王子様(ディエルドさま)は意外と乗り気でいてくれてありがたいのだよ。そのままにしてほしいのだよね」



 ラッシュに感謝されるとディエルドがこちらを見て『どうだ?』とでも言いたげなニヤリ顔に。


 なんか、まるで私が言うことを聞けない幼子のようではないか。腹立たしいね……


 ここで逃げても何にもならない。一度整備していいと言ったのだから我慢するとしよう。


 これがトムファンとかなら我慢する気はどうしても起きなかっただろうが、この子ならまあ……


 私が停止すると、プララはニッコリと笑って私のことを何か見てくれていた。



「裸眼で状態がわかるというのか?」



 わかるとするなら、かなり凄いぞ。私は出来ない。


 そういう機能を付けてみたいと思ったこともあるけど、その時は材料が単純になくて諦めたんだっけ。


 今度、材料探して作ろうかな。



「わかるのですよ。わたしたちの目は特殊な目ぇなので」


「ふーん」


「……それで、なんですけど、あの……」



 何かモジモジとしている。


 告白でもするかのようでドキドキしてしまったが、まあこんな状況だし違うだろうね。



「第二王女様は! 何も問題なかったのです!!」


「え……ああ、うん。それなら、よかった」



 何も問題なかった……か。ま、それならいい。


 きっと、健康的な生活を送っているからだ。普通の自律人形なら、普通の健康的な人間と同じ生活を送っていても整備が必要になる場合があるが……


 ……私は普通の自律人形と違って人間に物凄く近ーい自律人形だからね。例外さ。



「いいことなのですが……ちょっと弄りたかったのです……しょぼんなのです……」


「落ち込まないでくれ。何か弄るかい?」


「いや、いいのです。ラッシュが弄っているところを見ているだけで我慢するのですよ……」



 どうやら、ディエルドの方は問題があったようで解体されて部品の修理をされている。


 その修理箇所は下半身。いや、上半身のパーツも一部修理されているな。


 普通の人形師なら見た感じ早くても一時間はかかると思われる作業。早く終わるのかな。


 そんな心配そうにしていた私を見てプララが「早く終わるから心配いらないのです」と言ってくれるが、これで本当に早く終われるなら本当に天才だね。



「……我慢できるの?」

 

「ちゃんと出来るのですよ!」



 ウズウズしているから、我慢できなさそうに見えるんだけど……


 途中で弟と一緒に整備……いや、修理を始めそうだ。


 それならいいけど、弟を除けて修理をしようとしたら困るよね。まあ、ないと思うけど。


 この二人、仲良さそうだし。



「……終わったのだよ」



 ラッシュが汗を拭いながら、そう言った。大体三十分ぐらいだったかな。早いよ。


 故障していた部品は経年で劣化していた物もいくつかあるが、先程部屋から出てきた人形たちに圧迫されたことで壊れた物もいくつかあったようだね。


 ラッシュがそのことで謝ると、ディエルドは「いいよいいよ」と笑顔で言っていた。うーん……


 彼も私と一緒で人間に近い自律人形なんだが、部品などが私とは確か違うんだよ。


 修理してもらっていた内臓も人間に近い物でなく、見た目はただの鉄塊って感じだったかな。


 ま、鉄塊なのは本当に見た目だけで見た目ほど硬くはない。解体も容易な部品だったはず。


 経年で劣化した物があると言ったが、その鉄塊風内臓も経年劣化物の一つらしいね。



「ありがとねっ! なんかスッキリしてる感じするよっ。えっと、プララちゃんとラッシュくん?」


「はいなのです」


「はいなのだよ」



 嬉しそうに答える小動物のような二人に対して、気持ち悪さを感じさせない純粋な笑みで……


 ……ディエルドは二人の頭を撫でた。


 そういう顔が出来るなら、いつもその顔でいてくれよ。


 この一瞬だけは彼が心の優しそうな青年に見えてしまったから不思議だよ。はぁ……



「あっ、第二王女様……」



 プララはディエルドから頭を撫でられまくった後に……こちらのことを見て、何やら大事なことを思い出したという感じでトタトタと駆け寄ってくる。


 おちょぼ口にしているのはどういうことかな。



「……ちょっと、お耳をお借りしたいのです。よろしいですか? すぐ終わるのですよ」


「……? いいよ」


「……あの、第二王女様……もしかして、整備って誰かがやってくれていたのですか?」


「っ……!?」



 頬が赤くなってしまう。ダメだダメだ私。



「……どうかしたのです?」


「いや……いや……何も」


「恋人さんなのですか? 隠しているのですかね? それなら、申し訳なかったのです」


「あ、うん……」



 リモデルかも。私が寝ている間に整備してくれていたということは普通にありえる。


 そう思うと、嬉しさで顔がニヤけてしまいそうだ。


 至近距離にいるから俯いても意味ないよね……


 私は頬を何とか自力で戻そうとしながら、彼女の問いに対して何度か頷いた。


 名前は出さないよ……うん、恥ずかしいから。



「……いい恋人さんなのですね」


「ありがとう……プララ。貴女もいい子だね」



 私もディエルドがやったように……しかし、彼とは違ってポンポン……と頭を撫でるのだった。


 あんまりワシャワシャするとこの子の綺麗な赤毛の髪の毛が乱れてしまう。


 それは嫌がると思ってね。


 ま、そんな簡単に髪の毛が崩れないようになっているのは、ディエルドが撫でた時に髪の毛が崩れていないことからわかっているけど、一応ね。



「それじゃあ、みんなで探しに行くのだよ!!」


「第二王女様、レーダーはちゃんと持ったですか?」



 私は元気よく首肯しながら、彼女の頭から手を離すと……同じく元気よく、扉を開けた。


 ルドフィアお姉様探し本格開始だ!!


 『おー』という掛け声を恥ずかしいために心の中で行っておいてから、私は部屋を出たのだった。

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