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10話【ドルイディ視点】遂に発見!

すっかり更新するのを忘れていました。

明日からしばらくは八時と十七時に自動更新するようにします。

 プララとラッシュの部屋……部屋……


 私はディエルドを完全に無視して、二人の姉弟の部屋を探しているんだが、見つからないな……


 部屋は部屋でも工房のようだから、扉が特徴的で見つけやすいというようなことを後ろの男が言っているが……これも場所と同じで嘘だったか……?



「はぁ……どうすれば、いいんだ。申し訳ございません、お姉様。まだ何も出来ていません」


「まあまあ、気にすんなよ。ドルちゃん。姉さんは多分壊れてねぇから」


「……そう言える根拠は?」



 軽々しく言わないでもらいたいものだ。なんでそんなことが言えるのか。


 一体何を考えているんだか!


 私は後方を振り返ってディエルドを睨みつける。



「姉さんは強いから。精神的にも……割と肉体的にも」


「……まあね」



 いや、『まあね』っておかしいな。私のことじゃなくて、お姉様のことだから。


 それより……



「なんか、頭が痛くなってきたかも……」



 話している時に、唐突に頭痛が私を襲ってきた。音で形容するなら『キーン』という感じ。


 同時に軽めの悪寒もあるので、私は反射で自分の体を抱きかかえてしまったよ。



「だいじょぶ?」


「『ERROR』は出てないんだよね。だから、ただの体調の不良だと思う。多分、貴方のせいかな……?」


「はっはっ……んなわけ……いや、悪い。あるかなぁ」



 私が睨んだら意見を変えた。罪悪感が多少は湧いてきた感じかな? 今朝の貴方なら今の私の言葉でそんなふうに意見を変えたりはしなかっただろうし。



「ドルちゃんちゃん……多分近いよ?」


「……」



 今度はこの男の言葉に耳を貸したりはしないよ。


 騙されてやるものか。精神の疲労は私もあるんだ。そうそう引っかかってはやらない。



「……」


「……聞っかないかぁ」



 視線を左右に何度も振っているせいで首が痛くなってきた。ポロリと落ちたら嫌だな。


 私は首が取れないか、ちゃんと確認しておく。


 ……人間と同じである以上、人形のようにそうそう簡単に首が取れるようなことはないと思うが、それでも心配になるぐらい私は振っていたからね。


 ……イライラのせいだと思うから、普段の私なら多分こんなふうに首を振り回したりしない。


 そんなふうに首の異常の確認を行っている時に……明らかに今まで見たことのなかった扉が……



「えっ……」



 あったので、私はポカンと口を開ける。



「ポカ口かわいいじゃん。天使〜……!」


「ポカ口ってなに?」


「そのポカンと開けてるかわいいお口のことさ」


「むぐっ……」



 私の唇を指でなぞってきた、この男……


 いくら兄でもそんなことするのは気持ちが悪いぞ。腹だって立つし……


 この男は自分が嫌われているという自覚がなさすぎるんじゃないのか? わかってたら、こんなことをしないと……少なくとも、私なら思う。



「あと、扉のことだけど……さっき言った通りちゃんと近くにあったじゃん。見直してくれてもいいんじゃん?」


「……確かに近くにはあったな。ないと決めつけて悪かったよ。そこだけは謝っておくね」



 ま、貴方のそれ以前の行動や言動のせいで疑っていたんだけどね。それ、まだわかってないっぽい。


 面倒くさいから、言わないが。



「ドルちゃんは素直に謝れるいい子だって俺はちゃんとわかってるんだ。次から気をつけてくれればい……って無視して扉を開けないでほしいんだけどもー……」



 謝罪はもっと貴方もすべきだと思うけどね。私が言えたことじゃないが、もっと誠意を込めてさ。


 ま、別にいいんだけど。


 扉を開けながら、そう思う。



「じゃ、入っ……ぶっ!?」


「うわわわわわわ……」



 開けた瞬間にまるで雪崩のようにたくさんの……大小もデザインも様々な人形が廊下に流れてくる。


 ここは人形の雪山かな? おかしいよね。


 私は人形を掻き分けていくが、あまりに多すぎるせいで脱出が難しい。


 何なんだ、これ……ため息しか出ないよ。


 あまりに多すぎるわ。脱出が上手くいかなければ、窒息もありえるよ、これ。



「危ない危ない……」



 何とか抜け出せたが、少し疲れたじゃないか。


 こんな部屋に二人は本当にいるのか? そして、こんなたくさんの人形を入れられるほど部屋は大きいのか? 扉が大きくないために、わからなかった。


 それとも、何か特殊な技術で部屋を広くしているとか? まあ、何でもいいけど……窒息しないでその部屋に過ごせていることが普通に凄い。


 こんな状態なのに片付けないところも……



「片付けが出来ない姉弟なんだろうな……」



 敢えて、片付けない人なんているのか? 絶対そうだと思う。


 いや、私たちが来ることを見越して嫌がらせのために敢えて出した可能性もあるか。


 何であれ、どちらにしろ姉弟に対する印象が会う前から悪くなったと言っていいよね。


 嫌がらせなんだとしたら、性格が悪いし……普段からこの散らかり具合なら、だらしないわけだから……


 私の印象改善は容易くないよ。



「……」



 ディエルドがいない。


 まだ埋もれているんだ。仕方のない男だよ。


 人形が多すぎるからね。彼は別に弱くはないんだが、さすがに自力で出るのは難しかったかな。


 助けるぐらいはやっておこう。一応、兄妹なわけだし、壊れさせたくない。


 私がそう思って積み重なる人形をどけていくと、何か気持ちの悪い視線を人形の中から感じた。


 ドン引きしながら人形をどける手を止めると……中からあの男の笑顔が見えて……


 そして、その二秒後にくぐもったあの男の声が聞こえる。



「ドルちゃーん……なんで手を止めるんだよ〜」


「……」



 私は人形に手を伸ばす。


 だが、それは彼を助けるためではない。


 ……その彼の声が聞こえる隙間を他の人形を押し込むことで埋めようとしているだけだ。


 もう、助けなくていいだろうから。



「酷いってぇ〜……さすがに酷いってぇ〜」


「……」



 微かに聞こえてくる声の方向に私は視線を向けない。もういい、放っておくよ。


 元気そうだし、大丈夫だろう。


 視線を見た時に演技なんじゃないかと少し疑い、その後の声に悲壮感がゼロだったために完全に演技だと何故か即座に理解することが出来たんだ。


 ……この男のことだ。私に助けてもらうことで絆を深めようとでもしていたのだろう。無駄だ。


 扉が開けられるように私は引き続き人形をどかしていこうとしたのだが、そんな時に……



「うっ……!?」



 人形が突然に動いたので驚いた。


 自律人形じゃなくて、見た目は完全にぬいぐるみの人形だからね。自発的に動かないと思ってた。


 それも、一体かと思ったら、そんなことはない。その一体が歩いた後にその後ろを他の人形たちも着いていく。まるで、ぬいぐるみの軍隊だな。


 それらは全員、廊下を抜けてどこかに行くようだった。一体どこに行くというんだ……


 人形は三分後には全てがいなくなった。


 もちろん、人形に埋もれていたディエルドはそれによって、解放されたが……



「あっ……ガクッ」



 完全に干物のようになっている。潰されて死にかけの虫のようにも見えるかな。


 ま、ちょっと回復するぐらいで立たせてはやらないよ。


 私は最近練習で得意になりつつある治癒の魔法で彼のことを治癒すると、部屋の中に話しかける。



「ねえ、貴女たちなんだろう? 人形たちを移動させて、入れるようにしてくれたのは」


「……」



 中がよく見えない。返事も聞こえないので、私は「失礼するよ」と言った後に覗き込もうとする。


 そして、扉のちょうど横にいた二人の男女に……思わず、驚愕して「あっ」と声を上げる。


 ……どうやら、驚かせるつもりのようで微かにだけど、お互い笑っているよ。かわいい。



「そうなのだよ。よく来てくれた。歓迎するんだよ」


「今のが弟のラッシュ。わたしはプララというのですよ。よろしくなのです。第二王女様?」



 プララと……ラッシュ。この子たちで間違いなかったようだ。部屋はやはり間違いじゃなかった。


 安心は出来ないけどね。直前に色々起きすぎて、精神がちょっと混乱をまだ起こしてるから。


 私は軽く自己紹介をすると、苦笑しながら彼女らに手を引かれるまま部屋の中に入るのだった。


 ……もちろん、ディエルドは置いて。

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