42話【リモデル視点〜ドルイディ視点】足音の主は……
闇属性の人形にも、名前がある。
土属性なら土塊人形、木属性なら木製人形といったようにね。
闇属性の場合はそれが闇魔人形だった気がする。ただ、大きくすればするほど魔力は消費するし、時間もかかるというから、小さくする。
言うなれば、小人……いや小人形……ミニ……闇魔小人形かな。まあ、何でもいい。
「……」
小さくするのはするので意外に手間取る……ということが作ってみてわかった。
なんか途中で崩れる。
疲労による集中力の乱れが原因ではありそうだが、失敗を二回経験して、三回目の挑戦にて成功。
……変に凝ろうとしたわけでもないんだがな。
もっと練習を重ねて疲労状態でも容易に作れるようになっていこうと思うよ。人形師だからね。やっぱり、どんな人形も作れるようになっておきたい。
「……よし……でーは……」
行かせようと思ったが、躊躇う。
いや、思っていたよりなんかかわいくできてね。愛着が湧きそうで……あれ、俺さっきも同じようなことを……マオルヴルフの時に思わなかったかな?
俺は……本当にかわいいものが好きらしい。動物も人形もただの物もさ。
自覚していたつもりだが、まさかここまでとは思っていなかったよ。重症と言っていい。
ちなみにこの闇魔小人形……丸みを帯びているのが最大の特徴なんだ。土塊人形みたいになったら嫌だ……それだけの思いで丸みを帯びた形にした。特に大きな意味はなし。
……うん。今、思ったけど敢えて丸みを帯びた形にしたのも失敗した原因の一つではあるな。
「……投げるかぁ」
小さいが故にトコトコと歩かせると時間がかかるから、俺は足音が聞こえた方に投げることにする。
トコトコと歩く姿も見たかったが、今はそんな状況じゃないからな。諦めないとな。
「……確認が終われば、俺たちがいるところまで無事に戻ってくるようにな。危険な奴がいたのなら見つけた瞬間にすぐ戻れよ? これは命令だ」
こう命令しておけば、きっと自衛もできるし、役割を済ませたら戻ると思うんだよな。
風属性の魔力を生成時に織り交ぜたから、滞空時間はそれなりにあるだろうし、間違えて自分で地面に激突して壊れることもないんじゃないかな。
まあ、戻ってこなくても誰かがいたということはわかるからいいんだが……丹精込めて作った人形が壊されるのはあまりいい気がしないから嫌なんだよ。
「……わかったみたいだな」
頷いた闇魔小人形を俺は右手で掴むと、勢いをつけて投擲する。
我ながら、上手く投げられたと思うよ。
ヒューン……と手を前に伸ばして飛ぶかわいい小人形を見ながら、俺は無事な帰還を祈る。
足音が聞こえてから少し時間が経ったが、足音の主は今どの辺りにいるんだろうな。
気配などがあればいいが、そのようなものはなかった。魔力なども感じていない。
気のせいということなら、ただ俺とペルチェが無駄に魔力を使って小人形を作っただけで終わり。
「……だが」
……いた、みたいだな。
潰される音がした。誰かに。
踏んだのか手で潰したのかわからない。どちらにしろ、怪力ではあると思うが。
残念だと思いながらも……これで誰かがいたということに確信が持てた。
俺はペルチェと共に触れることで結界の強度を確認すると、恐る恐る足音がした方へと歩んでいく。
あちらが姿を自発的に見せないと思って、そうしたわけだが……
「……わ」
そんなことは全くなく……俺は足音の主と思われる人物と思い切り、頭をぶつけてしまうのだった。
えっと……女性……っぽいな。
勝手に男性だと思っていた俺はペルチェの片目を奪った人物と同一か確かめるためにペルチェを見た。
……そして、そのペルチェが「誰……ですか?」と驚愕に満ちた声で言うのを見て……困惑する。
こいつじゃないのか?
「悪いねーぇ。まさか、そちらの方から来るとは」
「こちらの台詞なんだが」
「そうかぁ」
声は中性的……なんだなぁ。
声が一致してるかの確認も視線でペルチェに行ってみたが、首を振っているあたりどうやら違うらしい。変声……してるとか? そういう技術も持ってる?
変装するだけなら、まあできるとしてもさ。変声って中々に高等な技術じゃないか?
「……俺の小人形を壊したってことは君は敵ってことだよな? 唐突だが、拘束させてもらう」
敵意のようなものは感じないが、別にこちらの隙を生み出すためにやっているだけだろ。
今なら、多分やれそうな気はする。相手は思ったより、ひょろく魔力もさほど強くないと感じる。
さすがに殺すつもりまではないが、拘束する。
ペルチェの目潰しの件やラプゥペ誘拐などといった行動は何のために行ったのか……知っているだろうから、ここで聞き出してやろうと思っているんだ。
「やめてよねぇ。おれにそんなつもりはないから」
女(?)は大袈裟に驚いた後に手を挙げてきた。
攻撃の意思はないということを伝えたいっていうので合ってるのか? これは。
ふざけて挙げただけの可能性もあるが、一番嫌な可能性として油断を誘っているというのがある。
こちらに油断が生まれた瞬間に攻撃なんかされたら最悪なので、警戒心は弱めない。
「……通してよぉ。邪魔だからさぁ」
おれが道を塞いでいることが不服な様子。何がしたいんだ。やはり、ラプゥペが目的か?
ラプゥペは後ろに置いてきているからね。理由は当然危険な目に遭うかもしれないから。
だが、目の前の女(?)はおれとペルチェの間を高速ですり抜けると、ラプゥペのことなどどうでもいいというような顔で全く別の場所に向かっていった。
「あっ……そっち……」
行こうとしているのは、どうやら蓑虫となったドルイディの複製人形。
もしかして、こいつは助けに来ただけなのか?
俺はポカンとしながら、その様子をじっと見た。
******
「……ん、ここ……は……」
私……えっと……
私は……ドルイディ・ペンデンス・オトノマース……オトノマース人形国の第二王女である自律人形……そして、リモデル・スキィアクロウの恋人……
合ってる……よね?
目覚めた私はまず顔をペタペタと触り、その後に自分の体に目を向けていった。
見る限りでは体に異変はなし。『ERROR』の表示も出ていないし、あの言葉も聞こえない。
名前もきちんと覚えているし……どうやら、まだ改変されていないようだな。
もしかして……さっきの私の殴りで倒れたとか? だとしたら、時間差気絶……?
わからないけど、まだ地下空間のあの捕らえられた部屋と同じではあるよう。
「……いない?」
首を横に向けて誰かいないか探ってみるが、誰もいないように見えた。私には。
「……早く、脱出しないとね」
リモデルがきっと待ってくれている。
早く彼の元に行かなきゃ……
そう思って駆け出したところで私は誰かが倒れているのが目に入った。
暗い部屋の目立たない場所に目立たない服で倒れていたら、気づかないのはおかしくないよね?
物凄い体勢で寝ているな。死んでいるわけではなく、寝ているのかな?
……傍に椅子があるし、この人は多分そこで寝ていたら倒れてしまったんだろうな。
私はうつ伏せになっていたその人物を転がす。もちろん、顔を見るためだった。
そして、その人物が今現在、私が最も会いたくないと思っていた人物であったことに気づいて……
「いっ……」
と、驚きの声を出してしまった。
私はその人物が起きてしまう前に立ち上がってそそくさとその場から立ち去ろうとした。
だが……そんな私の足はすぐに止められた。
「はぁっ!?」
動こうとした時に男が誰と勘違いしたのか知らないが、私に近づいてきたのだ。
思わず、蹴ってしまって……その人物は起きる。
「あちゃー……」
顔を抑える私を見て……そいつは寝ぼけながら……
「あ、なんでオマエー……ここにー……?」
はぁ……それはこっちの台詞だよ。えっと……
……マリネッタ……だっけ?
「……再っ悪だよ」
私はマリネッタを軽く見た後に再び顔に手を当てると……
今度は心の中で『あちゃー……』と呟いた。
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