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25話【ファルナーメ視点】渇き

 ファルナーメ、ことファルだ。


 僕の現在の状況だが、満身創痍で壁に手をつきながら、人形国城の中を行き先も決めずに歩き回っている。


 何故、そうなったか説明すると長くなるが……別に目的地があるわけでもないので話すこととする。


 僕はこの国……というより、ドルイディの執事らしき男に対して魔力消費の激しい魔法を使ったことで魔力欠乏症に陥り、壁に手をついて嘔吐した。


 ……今思えば、それが決め手というだけでその前に使った魔法も欠乏症の原因の一つではあるんだろうな。


 五分後、歩ける程度には回復したかと思ったら執事が僕の使った魔法から自力で抜け出して、僕のことを気絶まで追い込んだというね。一応言うと腹パン。


 その後、更に嘔吐しながら恨み節を吐いた気もするんだけど、正確な記憶は残っていないし、さほど重要なことでもないし……何より汚いので割愛する。


 欠乏症だけなら、ここまでボロボロになることはないが、腹パンまでされてるわけだからね。満身創痍になるのはおかしくない。傍から見たら死にかけだよね……



「あぁー……」



 もう、やってらんないって感じだよ。折角使った魔法の蔦からは逃げ出され、欠乏症のところを腹パンされ……


 そんな状態になりながらもドルイディたちと合流できず、道に迷ってしまっている。もう、泣きたい。



「ドルイディたち、どうしてるかな」



 何となくだけど、ペルチェはもう二人のことを見つけている気がする。そういった勘も鋭そうだし。


 そして、彼はドルイディたちを動揺させるために敢えて「(あの男)なら始末した」とかデタラメを言いそうな気も……



「はぁ……それは嫌だなぁ」



 僕はため息をつきながら、城の壁に弱々しくもたれかかった。体が重く感じて無理。歩くのが辛い。



「はぁ……寝る場所が欲しい」



 もう何でもいい。どこでもいいから、寝させてほしい。


 いや、廊下は嫌だけどね。誰かに見つかったら困るというのもあるし、単純に汚いだろう?


 いや、城だからそこらの建物と比べれば床も綺麗だろうけどね。それでも、ないわな……と。



「水も欲しいし……喉が渇くのって本当にキツいね」



 喉が渇くことは以前にも何度もあったよ。でも、ここまではないんじゃないかな。


 確か、人間って体の七十パーセントぐらいは水だっ……いや、魔法使いは魔力があるから違うか……


 まあ、何であれ水というのは人間の生命維持にとって物凄く必要なものだ。欠乏していてはいけない。



「……喉がカラカラすぎて喋るのがダルい。黙るか」



 ……それから、二十分は歩いた気がする。


 十五分ぐらいから、段々と魔力欠乏症はマシになってきた。魔力が回復してきているということだ。


 さっき、誰かの残留魔力を踏んだことが原因かもね。廊下の途中にあったようで誤って踏んでしまったんだ。


 急激な魔力回復の後にそこにあった残留魔力が可視化されて、気づいた感じ。


 これが、不幸中の幸いという奴かな。


 ……まあ、そういうわけで回復してきたから寝る場所を探すことに関しては一旦後回しにするよ。


 今はそれより水が欲しいんだ、僕は。時間経過で更に渇いてきてる気がする。ヤバいかも。


 そんなもの、恵んでくれるような人間も都合よく湧き出るものもないだろうけどね。


 ああー……本当にそこらの部屋に入れればいいんだけどな……どこも鍵がかかってなければな……


 ……まあ全部のドアは確かめてないんだけど。


 さっき二十箇所ぐらいドアノブを捻って……それで疲れたからね。どうせ、閉まってると思ってやってない。


 開いている可能性はあるかもしれないし、またそこらのドアノブを捻って開けられるか確かめてみるかな。


 僕は満身創痍ながらもやっとたどり着いたドアのノブに手をかける。


 だが、それが下がることはなく……



「はぁ……やっぱりダメじゃないか……」



 そう思ってペタンと床に尻をついたところで一つのドアが目に入ってきた。


 何の変哲もないドアなのに、何故か視線が惹きつけられたことを僕は不思議に思った。


 でも、もしかしたら開いているのかもと思った僕は体を引きずりつつも、そのドアの方向へと歩く。


 近づくとわかったが、微かに音が聞こえる。多分、これは人形の音……かな。動作音というか……


 満身創痍だとしても、何となくわかった。そんなに小さすぎる音でもなかったから。


 音をもっとよく聞くためにドアに自身の右耳を近づけようとしてみたら、僕は何故か何もないところで躓いてしまい、ドアに思い切り顔をぶつけてしまった。


 当然、音が出ないわけもなく……



「……誰だ?」



 腫れで赤く染まる鼻を抑えながら、ドアから離れようと思っていた。


 だが、それが間に合うことはなかった。


 当然だな、相当鈍かっただろうし。


 開いたドアから現れたのは……



「……え?」



 ドルイディだった。

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