47話【ドルイディ視点】祭は終わる
私はパーティが終わった後、リモデルを連れて一緒に自分の部屋へと向かった。
ちょっと、休むためだよ。
エフィジィの部屋じゃないのは、その部屋にはエフィジィとヒグリが向かっていったから。
きっと、二人でゆっくり休むつもりなんだ。
もしくは……仲良く服作りでもするのかも。
何であれ、私たちの存在はきっと彼らの邪魔になってしまうだろうから行くべきじゃない。
「……パーティ前より心の距離が縮まっていたような気がするし……告白の時もそう遠くなさそうだよね」
「……そうだな。俺も遠くないと、そう思うよ」
「私たちの心の距離も……更に縮まったと思う?」
私がそう言うと、リモデルは一瞬硬直。
だが、二秒後に私のことを見ると、ウインク。それによって何が言いたいか私はわかる。
既にラブラブではあるのかもしれないが、ああいったイベントを重ねて更に心の距離を近づけたい。
リモデルも、そう思ってるよね。
握っている手に力を込める。そして、自身の指を彼の手に絡ませていく。
温もりを更に感じるための行動。
「ふぅ……あ、そうだ。二人でマッサージをやり合おうよ。お互い、凝っているだろうから」
「いいな、名案だと思うよ」
私は人形であるが故、肩凝りなどの疲労は自分でどうにかなるものではあるんだ。
でも、それじゃつまらない。人間と同じように、マッサージして……痛みを和らげたいんだ。
それも……恋人にやってもらってね。
名案だと言ってくれたことで嬉しくなりながら、私はリモデルの肩を揉んでいった。
そういう知識は割とあってね。
ツボがどこにあるのかも頭に入っている。
触ったり、話を聞いている感じ、リモデルには眼精疲労があるし、少し肩も凝っている。
ということでそれらに効果のあると後頭部の天柱というツボを押していくよ。
リモデルにも同じことをやってほしいと思ったので教えようとしたけど、どうやら既に知っているみたい。
さすがリモデルだと、そう思ったね。
「ああー、気持ちよかった。さすが、ドルだ」
「いやいや、そんなに褒めないでくれ。じゃ、リモデルにも同じようなマッサージを頼もうかな」
「任せてくれ。俺も得意だからな」
私は彼に背中を見せると、天柱を押してもらう。
ああ、気持ちいい。効果が強く感じられる。リモデルは確かに凄いマッサージが上手なんだな。
上手だからというのもあるが、やってくれるのがリモデルだからということもあり、押されている間は非常に幸せであると……強く感じさせられた。
リモデルはちなみにおまけで天柱から少し外側に離れたところにある風地というツボまで押してくれた。本当に気持ちよかったし、嬉しい。
私も彼にやってあげようと思ったけど、リモデルに時間を教えてもらい、今が二十二時二十分だということを知って、悲しいけどやめることにした。
実は二十二時三十分にこの街の噴水広場にてとあることが起こるらしい。ギュフィアお兄様の情報。
パーティは終わったけれど、オトノマース大祭はまだ終わっちゃいない……ってことなんだね。
夜の寒い街に出るために服を着替えると、私たちは二人で手を繋ぎながら、急いで向かう。
「はぁっ……はぁっ……」と冷たい息を虚空に撒きながら、辿り着いた時間……
……ギリッギリ……二十二時二十九分。
途中は嫌だしね。間に合ってよかった。
それから、一分待っていると……
「おおお……!」
城の外壁。その一部が剥がれ落ちると、集まっていき……人形の形を成していった。
その数、およそ二十。人間のような形をしたものもいれば、亜人の形のものもあって……
どの子もトコトコと可愛らしく歩いている。
その城人形は私たちのところにやって来て何をするのかと思ったら、こちらに手を振ってくれる。
なんかかわいいね。この城人形。
それだけで終わりかと思ったら、見ている私たちに向かって『オツカレサマー』と声をかけてくれる。無機質だけれど、可愛らしくて癒されるよ。
……その上、何か私たちに贈り物と言ってプレゼントの箱を手渡してくれるんだ。なにこれ。
かわいいと思いながら開けると、中からは物ではなく……光が。
それを浴びると、精神だけでなく、肉体の疲労まで……完全に消え去っていった。
まあ、さっきのリモデルのマッサージのおかげで既に疲労はもうほとんど消えていたんだがね。
それでも、すっごい嬉しいプレゼントだ。
感謝の言葉を伝えると、人形たちはニッコリと笑って振り向いてくれる。本当にかわいいな。
城人形はそんな感じでプレゼントを渡したつつ、街をブラブラと歩いた後……爆散。
宙光のように綺麗な光を辺りに見せつつ……
その部品は城へと最終的に集まっていった。
あの城、あんなこともできるのか。知らなかった。
最後のイベントも楽しめたことで……私はとうとう、祭りが終わってしまうのだと思って、悲しくなる。
あぁ、終わってほしくないなぁ。
……だけど、時間は過ぎていく。
あの城人形のことを見ていた大勢の人も……もうイベントが終わったということで退散して……
街は昼間の喧騒が嘘かのように静まり返る。
私とリモデルを入れて、十人ぐらいしかもうここにはいない。
その人たちも一時間もしないうちに消えるだろう。
寂しいが、終わらない祭はない。
もう二度と祭が行われないわけじゃないし、あまり落ち込んでも仕方ないね。
祭は盛り上がるものだ。それ故、その終わり時に落ち込むのは良くない。
また……来年だね。その時もリモデルが……私の隣にいてくれるといいな。
本気でそう思っているよ。心から。
「……リモデル、また来年も一緒に」
「ああ、絶対に二人でまたこの国のこの街で祭を楽しむとしよう。また来年も楽しくなるといいな」
「うん。それを強く祈っているよ」
街はもう深夜だというのに、どの建物も色とりどりの明かりをこちらに見せてくれている。
目が楽しい……とも言うべきか。
歩いていて、退屈しない。
私はそれをリモデルと一緒に見続けながら、全ての店が営業を終え、明かりも消されると思われる深夜の一時くらいまでは歩くことを決めるのだった。




