45話【エフィジィ視点】二人で服作ろ!
服を十着って相当な数だから、受け入れてくれるかわからなかったけど、受け入れてくれて嬉しい。
ちなみにわたし五着(うち三着自分用、二着ヒグリ君用)、ヒグリくんも五着(うち三着自分用、二着わたし用)って感じ。十分ぐらいで決まったよ。
パーティも終わったからパーティ用に作る必要ないとわたしもヒグリくんも思ったから……
双方普段使いができるような服を作っていく……ということになったよ。
時間を確認したけど、今ってもう二十二時なんだね。すっごい時間経っちゃってる。
五着分のデザイン決めで今日一日終わっちゃいそう。
ま、それでも全然……いいんだけどね!
「ヒグリくん、この紙に描いてこ」
「そうっすね。隣で描いていいっすか?」
「……も、もちろんだよ。一緒にね」
わたしが紙を渡した時に手のひらが触れる。
えー、これぐらいのことで恥ずかしがらないでよ。わたし。
すぐに首を振って紙を彼に押しつけると、わたしはすぐに筆を持って服のデザインを描き始める。
思いついたデザイン……それを全部、紙に描いて……その中から決めていくことにするんだよ。
「……ワンピース」
あ、口に出ちゃった。
まず、描いたのがワンピースなんだよね。カシュクールワンピースってやつだよ。
すごーい良いのが描けたと思う。自信あり。
紫色の花……ライルァックという花の柄を入れたワンピース。そんなに凝ったデザインにはしてないけど、かわいくて……自分に似合いそうだと思う。
二つ目なんだけど、こちらもワンピース。
とはいっても、一つ目に描いたのとは違ってシャツタイプのワンピースにしてみたよ。
変に柄はつけず……色は薄い青。七分丈。
うん……うん。
「よーし、よし……描けた……!」
それで、同じシャツワンピースで色の違うものを四種描いてみた。どれも良い感じ。
最初のライルァックのワンピの方が好きだけど。
じゃ、次はワンピから離れて……ブラウスかな。
紫にしたい……けど、濃い紫はやめよ。最初のライルァックのワンピは作るのほぼ決定だからね。それと色が被るのがなんかやだ。薄紫にしよう。
……いや、赤紫もいいね。どちらも描いて比較かな。
それで、そのブラウスに合わせる用のスカートも描く。黒のプリーツにしておいた。
でも、同色のフレアスカートも描きたくなっちゃって横に描いた。後で合わせてみて、選ぼ。
……なんか、自分の分はもういいかな。ヒグリくん用にも作るつもりだから、そっちのこと考えよ。
「えっと……ヒグリくんに似合うのは……」
彼が喜びそうな服……わたし、あんまりわからないんだよね。
今日の朝に立ち寄ったあの服屋……あそこでヒグリくんが見ていた服はどれも茶色か黒を基調にしたもの。それらから、茶色と黒が好きだと推測。
茶色いジャケットとか……いいね。
あとは……どうしよう。黒と茶を使った服を考えようかな。どちらも適度に盛り込んだTシャツ。
その途中で……パーカーのアイデアも思い浮かんだ。茶色いやつね。多分、似合うと思う。
取り敢えず……一回描いてみなくちゃね。
頭に思い浮かんだものを……忘れないうちにシャシャシャッと紙に描き起こしていく。
紙がどんどん埋まっていくの……いいね。
「エフィジィさん、楽しそうっすね」
「そうでしょー? すっごい楽しいよ。ヒグリくんは?」
「……もちろん、楽しいっす。見ます?」
「あ、先に……わたしの……見てくれない?」
「ふふっ、それだけ自信があるってことっすね。いいっすよ。見せてください。楽しみっす」
ちょっと恥ずかしいけど……寄ってきた時に紙をジャーンと広げて彼に見せてみる。
ちょっととか言っちゃったけど、やっぱ大分かも。大分……恥ずかしい。んー。
チラチラと紙の横からわたしは彼の反応を伺う。どうかな……ダサいと思ってないといいけど。
じっくりと見てくれて三十秒……
ヒグリくんが笑ってくれて……わたしはホッとした。
少しの間だけど、一緒にい続けたからなのかな。その笑顔は嘲笑なんかじゃないと感じる。
「……どれもいいんすけど、このワンピースが個人的にもとても好みでいいっすね」
「おお……嬉しい。わたしもそれがお気に入りなの。五着のうち、それだけは作るの確定なんだよ」
「へえ、良いっすね! 最高っす!」
「ふふ」
「で、このスカートの下に描かれてるのがおれのために作ろうとしてくれている服っすよね?」
わたしが頷くと、ヒグリくんは「へぇ〜」と言ってこちらも興味深そうに見てくれた。
嬉しい……けど、ドキドキするな。
男性の服を考えることなんてあまりないし、そもそも彼の服の好みもあんまり、わからないし……お気に召さないということも十分にありえる。
でも、この……視線……輝いてるようにも……見える?
大丈夫……だと思っていいのかもね。
「……嬉しいっす。おれのためなんかに」
「ヒグリくんのためなら作りたい。そう思わせてくれたのはあなたがわたしのことを惚……」
「……? ほ……?」
「……ううん、ごめん。何でもない。ヒグリくんは自分のことを過小評価してるでしょ? わたしはヒグリくんはわたし含めた誰かの為に動けるとても立派な人だと思ってるよ。だから、作ってあげたくなるの」
ヒグリくんはその言葉を聞くと、少し止まった。
そして、三秒後……顔が少し赤くなる。ほんの少しだけど、わたしにはわかるんだ。
……恥ずかしがった。恥ずかしがってくれた。
かわいい顔が見れて、嬉しい。
わたしは喜びながら、彼を見つめる。
「すっごい、照れるっす……正直」
「ふふ、やった。照れさせられた」
「……このジャケットとか凄い好みですし、パーカーもTシャツも。なんで、好みをこんなにわかっちゃってるんすか? ビックリっす。ホント凄い」
「……わかってたわけじゃないよ。こういうのはどうだろうと思って描いた物がヒグリくんの気に入るものだった。今ので覚えたよ。こういうのが好きなこと」
「覚えられちゃいましたね、はは。それで、良ければ……おれの描いた服も見てもらえるっすか?」
ヒグリくんはそう言うと、大量に服が描かれた紙をこちらに見せてくれたよ。
自分の分もたくさん描きつつ、わたしのための服に関してもたくさん描いてくれているみたい。
嬉しいな。
わたしはその紙を受け取ってじっくり見ていく。
まず、彼が自分用に描いた服を見たんだけど、わたしと同じでパーカーが描かれていたよ。
デザインは似通っているけど、色はわたしのデザインしていた茶色のパーカーより更に薄く、そこに白や黒も足されている。茶色七割、白二割、黒一割って感じ。いいね。わたしのよりも良くない?
ジャケットもあったけど、これはなんか真似したのかなってぐらい、同じ感じだった。
……なんか、運命を感じちゃうよね。ふふ。
「じゃ、早速始めないとね」
時間はこうやって描いたり話したりしてるうちに二十三時を回っているんだよね。
寝る時間も確保したいし、今日は二人で協力してどちらかの服を一着作ったら終わりって感じかな。
わたしたちはそれから話し合って、ヒグリくんがデザインしたパーカーを作ることを決めると……
仲良く、服を作り始めたよ。
……深夜の……一時くらいまでには作り終わりたいけど……ま、わたしたちなら終わるよね。
少しでも面白いと思ったら、広告下の評価ボタン(☆☆☆☆☆)のクリックをお願いします。
ブックマークもしていただけると作者は嬉しいです。




