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44話【エフィジィ視点】告白……?

「エフィジィさん……」


「……なに? ヒグリくん」


「この後にちょっと、自分と……」



 え、え……もしかしてこれって……


 ……わたしは少し恥ずかしくなっちゃって、ヒグリくんのことを手で制止する。


 「ほんのちょっと! ほんのちょっとだけ待ってほしい! 心の準備が!」と言いつつ。


 いや……まだ、ホント……心の準備ができてないの、わたし。突然だったから、全く……


 今、心臓がバクバクしているよ……


 ……だって、これ……告白でしょ……?



「……えっと、そろそろいいっすか?」



 待たせて三分ぐらい……かな。


 ヒグリくんはそう言ってきた。そうだよね。待たせてるよね。ごめんね。


 でも、なんでこんな場所で?


 告白するのに、廊下を選ぶもんかな……?


 あ、でも……今はあれだもんね。パーティによって気分が高揚してる状況だからね。


 確かに適していないこともないこともな……



「あのー……」


「あ、ご……ごめんね。でも、心の準備が……」


「……? 何のことっすか? そんな……心の準備をするようなことじゃないと思うんすけど」



 するようなことじゃない……?


 え、あ……ヒグリくんは告白とか手慣れてるの? 手慣れてるから心の準備なんて必要ないと?


 まあ、格好いいし、強いし、服作りは上手いし……そりゃ、モテているよね。


 恋人がいたことも……あるんだろうなぁ。


 どうしよ……なんか、凄く……恥ずかしい。



「ホントにどうしたんすか? そんな変なことを言うつもりじゃないっすよ。とにかく、聞くっす」


「え……と、そうだよね。待たせて……ごめん。うん」


「……? ま、いいや。それで……エフィジィさん、自分とまた一緒に服を作らないっすか?」


「……えっと、友達から……で……? え……?」


「……え? 友達? どういうことっす? 何の話だと思ったんすか? 違いますよ」


「ん、え……ええと、今のが言いたかったこと?」



 『一緒に服を作りたい』という……


 聞き間違いじゃなければ、そう言ったはず。


 もしも……それが合っていたのだとしたら、わたしは……物凄く……物凄く恥ずかしい勘違いを。


 告白されるかもしれないと思っていたから、彼が何か言う前から恥ずかしかったけど……


 ……更に……恥ずかしくなっちゃった。


 顔が熱い。多分、赤くなってると思う。


 それも赤龍のように。真っ赤に。


 あー……あー……もうやだ。消えたい……



「……あー、なんかすみませんっす」


「い、いや……謝ることじゃない! 謝るべきはわたしなの! わたしが勝手に誤解して、待たせちゃって! 変なことまで言っちゃって……ホント、ごめん!」


「……そ、そうっすか」


「う、うん……」


「……す、すみません。返事聞きたいんすけど」


「えっと……」



 そっか。一緒に服作りたいのかぁ。


 告白じゃなくて……服作り。わたしと一緒にしたいと言ってくれるなんて……嬉しいなぁ。


 それは一緒に作るのが楽しいと思ったから、有意義だと思ったから……出てきた言葉だもんね。


 わたしはそう思ってたよ。だから、そう思ってくれていたことが……ホントに嬉しいなぁ。



「うん、作ろ! 一緒に!」


「……良かった。嬉しいっす」


「わたしも嬉しいよ。作りたいと言ってくれて。しつこいようだけど、さっきはホントごめん」


「いやいや、大丈夫っす。じゃ、行きましょ」



 わたしは頷くと、彼の手を握って歩き出す。


 とても温かく、頼りになる手。さっき、一緒に謎の空間に飛ばされた時も握ってくれた。


 大きくはないけれど、ホントに好きな手。


 彼の指に自分の指をさりげなく絡ませてみる。


 すると、彼はちょっぴり恥ずかしそうにこちらを見た。


 わたしがそんな彼に向けて笑うと、彼も「ははは」と言って笑ってくれた。いいねぇ。


 それから、他愛もないことを少し話していると、いつの間にか部屋の前に着いちゃった。


 扉を開けると、わたしはまず背伸びをした。


 ゆーっくりとね。疲れちゃったもん。


 もう、パーティは終わって余裕があるからね。こういうことをしても、大丈夫。


 服だって……ゆっくりと作る予定だよ。



「エフィジィさん、作りたい服……考えました?」


「ううん。色々考えてたんだけどさ。たくさん、作りたい服が思いついちゃってね。決められてないの」


「……実は自分もっす。悩みますよね、やっぱ」


「だよね! 物凄い悩んじゃうの!」



 単純にわたしが服好きだというのもあるし、わたしが着たいと感じる服、わたしがヒグリくんに着せたい服がたくさんあるというのももちろんある。


 だけど、それだけじゃないんだ。


 彼と作れること……それが嬉しくて、たくさん作ることでいつまでもその作業を続けていたいと……


 そう思ったからでも……あるんだよ。


 だけど、彼だってここにずっといられるわけじゃないと思うから……絞らないとね。



「ずっと……作り続けたいと思ってる」


「……おれもっすよ。エフィジィさん」


「だけど、ヒグリくんはずっとここにはいられないでしょ? どこかに行くでしょ? だから、ちゃんと決めるつもりでいるよ。複数は作らない」


「複数……別にいいっすよ。確かに国を出ようとは思ってましたけど、すぐの予定ではないんで。エフィジィさんが作りたいだけ作っていいんすよ?」


「え、そうなの……?」


「はい。全然大丈夫っす。むしろ、たくさん作っちゃいましょ。おれだってたくさん作りたいんすよ」



 ニッコリ……その彼の笑み。そこには嘘がない。


 少なくとも、私はそう感じたよ。嬉しいな。



「じゃ……わたしとヒグリくんで合わせて十着は作ろう? もちろん、休みを取って」


「そうっすね。まあ、でも今日はもう遅いから途中で終わる感じにはなりそうっすよね」


「そうだね。ヒグリくん、泊まるところは決めてる?」


「ないっすよ。もしかして……」


「もしかしなくても、泊めるよぉ!!」


「ありがとっす〜!!」



 抱き合いそうになったけど、寸前で恥ずかしくなってやめる。わたし、テンションおかしい。


 嬉しすぎて……そのせいだ。


 また顔が熱くなってきたからパタパタと仰ぎながら、わたしはヒグリくんの椅子を持ってくる。


 そこに彼に座ってもらうと、わたしは近くにある椅子を持ってきて、座った。


 ヒグリくんの方が柔らかくて良い椅子にした。わたしのは使い古している大して柔らかくない椅子。


 わたしの分も同じやつにしても良かったけど、わざわざ二つ持ってくるのがめんどくさかったの。


 早く作りたいという思いがあったのも原因かな。


 座った瞬間に浮かんできた選択肢……


 わたしはそれを、彼が聞いてくれる姿勢が整った瞬間に……一つずつ、話していったよ。

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