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43話【ドルイディ視点】揺蕩

投稿を忘れてました。申し訳ございません。

 お父様のことを見ながら、じっと待っていると……


 ……突如、私の五感が全て消えてしまった。


 何も見えず、何も聞こえず、何も香らず……何も触ることもできず、触られることもない。


 これはなんだろう。何かの罠の可能性も考えたけど、多分これがお父様のやろうとしていたことなのかも。


 この……五感を消された状況でゆったりと過ごさせ、私たちの疲れを取るつもりなんじゃないのかな。


 ……退屈にも感じそうなものだけど。


 意外にもそんなことはなく、気づいたら……



「……」



 ……意識は飛んでいた。寝ていたのかも。


 時間の経過も感じられず、そのままゆっくりと待っていると……視覚が復活した。


 それだけじゃないか。触覚も……


 目を開けると、私はリモデルと二人きり。


 ちなみに手を繋いでいるよ。こうなる前に手を繋いでいたけど、どうやら私たちは五感が遮断されてもその手を離していなかったみたい。いいね。


 最高だ。恋人だからこそ……きっと。


 『愛のなせる技』ってやつなのかもね。



「……ドル、良かった。横にいたんだな」


「うん、ずっと……いたみたいだね」


「そうか、良かった。手も……離さずいれたんだな」


「この感じ、接触していなかった者は分断されるんだろうね。かなり近くにいても。ディエルドとかかなり近くにいたのに、この空間にはいないし」


「……だな。それで、どうだ? 気持ちいいか?」



 私が頷いて同じ問いをリモデルに返すと、リモデルも頷いた。


 頷き方が私と同じだね。ふふっ。


 私は笑うと、堪能することにする。


 折角の安らぎの空間。楽しまなきゃ、損だよ。


 手足を投げ出し、視覚が戻っているのにも関わらず、再び目を閉じて……ゆらり……ゆらり。


 ゆらり……ゆらり……ゆらり……ゆらり。


 この空間には地面がない。それ故に全く冷たくのない水の上に浮かんでいるような……


 そんな感覚を……味わうことができる。



「……」



 ゆらり……ゆらり……ゆらり……ゆらり。


 揺蕩う体……心地良い。繋ぐ恋人の手から伝わる体温……それも心地が良い。



「すぅーっ」



 息を吸うことができる。


 それ故に吸ってみると、澄んだ空気が口腔の中へとスーっと吸い込まれていった。


 それも、また心地良いもの。


 折角の空間。来年も同じことをやるかはわからないし、全身全霊で……楽しんでいきたい。


 ゆらり……ゆらり……ゆらゆらり。


 たまに、リモデルと見つめ合いつつ、揺れあって……何分……いや、何時間経ったかな。


 ……いや、パーティの終了予定時刻を考えたら、何時間も経っている……ということはないかな。


 でも、この空間で私は色々なことをした。かなり時間は経っているとも思うが、どうなのだろう。


 時間の流れが違ったりもするのかな。


 だとすると、ありがたいね。


 そう思ったあたりで、私の足が床につく。


 ……どうやら、終わりのようだね。


 こちらで終わりは決められなかったようだ。でも、十二分に楽しめたし……いいかな。


 微笑んでくれるリモデルに私は微笑み返す。



「楽しめたな」


「楽しめたね」



 私たちが戻ってきたあたりで他の人たちもどうやら、戻ってきたようだ。


 各々が疲れや怒りの感情が去った……安らかな表情をしている。


 そういう表情の人を見ていると、気分がいいよ。


 ちなみにディエルドも戻ってきている。あの空間に行く前と同じ場所にね。


 エフィジィ、ヒグリ、レグフィらもちゃんと戻ってきている。


 お父様はその数を数えて、全員がきちんと戻ってきていたことがわかると、話を始めていく。



「……皆、楽しめたようだな。良かった。それでは、最後にとびっきりの幸福をプレゼントしたい」



 とびっきりの幸福、か。何かあるとは思っていたけど、これも何をするのかは知らないな。


 ま、わざと言っていなかったのだろう。


 お父様が頑張って準備したであろうこと。私はとても、期待しておくことにするよ。


 ワクワクと期待して待っていると……


 一つの光が左側の壁からすぅーっと現れ……反対側の壁から出てきた光と混ざり合い、龍のような形を成した後、会場の中をぐるぐると廻る。


 それを見ている途中で再び左側の壁から光が出てきて、それは魚の形や鳥の形を成す。


 それらはただ、会場内をぐるぐると自由に動き回り、私たちの目を楽しませてくれたが……


 ……とびっきりの幸福とは?


 ま、確かに幸福っちゃ幸福ではあるんだけどね。こんな綺麗なものを見せてくれたわけだから。


 そう思っていると、それらは部屋の中を十分に廻った後、突如四散して私たちのもとに降り注ぐ。


 光の粒子となったそれらは、魔力に変換されているようで、元気が漲ってくるのを感じる。


 いや、ただの魔力じゃないな。幸福感がある。体がほんのりと温かくなるのと同時に宿ったそれは私……に限らず、会場の全ての者の頬を緩ませた。


 なるほど、お父様。


 ……こういう、ことだったのか。


 それにしても、こんな凄いものを用意するなんて大変だったろうな。


 お父様だけでなく、ギュフィアお兄様たちも尽力したそうだけど、そのおかげもあるかな。


 幸福感に包まれ、それを皆が享受したことを確認したお父様は満足げな顔になって……


 ……パーティの終わりを告げる。


 名残惜しそうにしているが、私もそうだよ。


 きっと、皆もそうだろう。最初からパーティを楽しんでいた者も、揺蕩う前までパーティを楽しめていなかった者も……きっと、名残惜しいと。


 私は……近くに行ってお父様やギュフィアお兄様に感謝の気持ちを伝えると、リモデル、ディエルドと手を繋いで、楽しい気分で会場を出ていった。

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