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42話【ドルイディ視点】色々な夜空

 出された輝く料理の数々……


 それらを腹五分目ぐらいまで私は食べたよ。


 お腹いっぱいまで食べなかったのはこの後にダンスを踊ることになっているからだね。


 前にも、何度かダンスを踊ることになっているパーティは何度か祭の最終日に行われていたが、その時は決まってダンスが先だったらしいんだよね。


 なんで、今回は後にやるのだろう。


 理由はわからない。聞けなかったよ。


 でも、今回は色々と特殊なことをやりたいと言っていたし、多分……ダンスと食事の順番もいつもと同じではつまらないと思って変更した……とかかな。


 それを知っている方は、多分どの方もお腹いっぱいになるほどは食べてないと思うよ。


 リモデルはもちろん、近くにいたエフィジィ、ヒグリ、レグフィ……ギュフィアお兄様、ルドフィアお姉様などにも聞いたけど、みんな同じだったし。


 たくさんあるから、残りそうな物だけど、残ってもちゃんと無駄にならない対策はしているらしいとお父様とギュフィアお兄様は言っていたよ。


 ま、二人の言うことだから信じていて……特には何も聞かないでおいている。


 食べ物を魔道具に入れて、魔力に転化させるとかそんな感じだと思うけど、どうだろうね。


 どこの場所の人たちも食事の手を止めた……そんな時にお父様はコホンとわざとらしく咳をする。


 結構、私の周りではこうやって咳をする人いるけど、お父様は特によくやる気がするよ。


 まあ、人の目を簡単に向かせられるからね。いいよね。別に悪いとは思わないよ。



「……楽しんでもらえたようだな。それでは、少し早いが、ダンスパーティに移るとしよう」



 お父様がそう言って棒を操作すると、天井、床、壁の一部が変形。色も変化していく。


 机は全て床に引っ込み、カーペットが新しいものに変わる。少なからず汚れたからだろう。


 この変わったカーペットは気分を高揚させる効果があるようだ。今まさに高揚してきている。


 壁の色は分ごとに色が変わる仕様で……色によって気分が変わるようになっていた。


 天井に関しては火光石の入れられた照明の形が変化。意思を持っているかのようである。


 四角くなったり、丸くなったり……面白いね。


 そういった変化を楽しみつつ、私はリモデルの手を取り……一緒に踊りを楽しんでいく。


 私もリモデルもダンスに関しては、意外とよくやっていてね。自信があるんだよね。


 他の方に関しても、ダンスを嗜んでいるようで……ぎこちない人というのは全体の一割にも満たない。


 その一割にはエフィジィやディエルドも含まれる。


 エフィジィの相手はヒグリだけど、彼がリードしてくれているからあまり恥ずかしくはなさそう。


 ディエルドも同じ感じだね。相手をしてくれるルドフィアお姉様が上手いから目立ってない。


 ……まあ、良くも……悪くも。


 この会場の凄いところは百人以上は人がいるというのに、今のところ誰もぶつかってないところ。


 気分が高揚して、普通に踊る時よりも遥かに周りが見えなくなっているだろうにね。


 それがこの会場の不思議なところ。


 何か特殊な力が働いているのか、近づこうとすると透明の結界のようなものに阻まれるんだ。


 ……凄いよね。去年までも特殊な会場を使っていたけど、今年ほどじゃないよ。


 こんなに楽しめるとは意外だった。


 息が届く距離で、好きな人と踊り合う……幸せな時間故、いつまでも続いてほしかったが……


 それは……三十分で終わることになる。


 まあ、時間が押しているからだね。


 大分、遅い時間になってしまったし。



「皆、ダンスを楽しんでくれたようで嬉しい。それでは、次は……」


「お父様。それは言わない方がいいかと」


「それもそうだな、ギュフィア。では、皆の者……今からはまばたきをすることを惜しむほどの綺麗な光景を見せようと思う。楽しんでくれると嬉しい」



 お父様がそう言って、棒を操作すると……


 天井、壁、床……それらが全て変色し……夜空のように黒く変わる。星を表すような黄色い光がそこに生じ、なんと……オーロラのようなものまで出る。


 オーロラの色は濃紫と薄紫……とても美しい光景。


 目を奪われたのは……私だけじゃない。その場の全員がその光景に……その目を惹きつけられる。



「リモデル……オーロラ、見たことあるかい?」


「……いや、初めてだ。ドルは?」


「私も初めてだよ。知っているだけさ。こんなに……綺麗なものなのだね。本物ではないのだろうけど、あまりの綺麗さに感動している私がいるよ」


「ふふ、俺もだ」



 味わえたのは五分……名残惜しいが、別にいい。


 まだまだたくさん綺麗な光景が見れるようだから。


 次はどうやら、とある特殊な島からの夜空のよう。


 緑色の……少し不思議な夜空。星がチカチカとまたたくところ、そこは同じなんだけどね。


 緑色といっても、濃い緑ではなく、薄緑。最初は巨大なオーロラかと思ったが、そうではなく、島から見た空が特殊な結界によって緑に見えているだけみたい。


 にしても、そんな島……初めて知ったよ。どうやら、実際に行ったことのある人はほとんどいないみたい。


 この中にはきっと……ゼロだろうとお父様は言っていた。そんな場所の夜空をよく知ってるよね。



「危険じゃないのなら、近くで見てみたいものだね」


「……そう思うが、行ったことのある者があまりにも少ないと言うからな。危険じゃないといいな」


「そうだね。行くとしたら、よく調べよう」



 ……次はどうやら、魔物たちが遥か昔に蔓延っていたと言われる魔域(まいき)と呼ばれる地域の空。


 今はどうやら、もう存在しない場所であるため、見れないようで……お父様は本物を完全再現することはできていないかもしれない……と言っていた。


 本物はこれより綺麗なのだろうか。


 それなら、凄いね。


 この空の光景が映されたのはほんの三分だったが、目に焼きついた気がするよ。


 ……次は……エルデの使徒が多く流れ着いたとされる召喚の島……そこから見える夜空……だね。


 一見すると、普通の夜空に感じるが……たまに紫色が空の黒に混じったり、流星群のようなものがたまに観測できる。実際は流星群じゃないらしいが。


 オーロラのようなものも発生するため、とてもよく楽しめた。私も……きっと、他のみんなも。


 この光景はおよそ、十分続き……最後。



「……あれでまだ付き合ってないって言うんだから……本当に驚かされると思わない? リモデル」


「それは俺も思うよ。ドル」



 今、気づいたんだが……食い入るように夜空を見つめているエフィジィとヒグリが見えたんだ。


 昨日の宙光を観測した時にも二人は見入っていたからね。こういうの凄い好きなんだろうね。


 もちろん、そうは言うが、私も好きだ。


 ……これで、終了のようだね。


 会場の色も形も……全てが元に戻っていく。


 でも、まだ何か残っているんだよね。


 今年は今までで一回もやったことないようなことをやってみると、お父様がコッソリ教えてくれた。


 私はワクワクしながらお父様を見た。

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