41話【ドッキー視点〜ドルイディ視点】感謝と謝罪《2》
あんなことがあった後にパーティなんか楽しめない……そう考えていそうなパーティの参加者さんたちが歩いているのをワタシは見つけてしまいました。
そうですよね。あんなことがあった後に、パーティなんて楽しめるわけがないですよね。
それが普通だと……きっと思います。
帰った方もいらっしゃるのかな。急がないと。
出来る限り、たくさんの参加者さんたちに謝るんです。ワタシがやってしまったことに対する。
あまり音を出すと良くないので抑えつつも、急いでいき……ワタシは城の出口に到着。
息切れをさせながらも、今にも出ようとしている元参加者さんたちの前に立って、ワタシは……
ウィッグを外して、頭を下げました。
「あの、お二人とも、先程は申し……」
「誰……?」
「あ、この髪……もしかして、あの突然に暴れた道化師人形ではありませんこと……?」
「そう……見えますね。何を企んでいるのでしょう。気味が悪い。無視して行くとしましょう」
「ま、待ってください! あの……」
「……」
謝罪が出来ただけでも良かったですが、大体の方はワタシが最後まで言葉を紡ぐ前にそれを掻き消すような声で何かを話した後、去ってしまいます。
……そりゃ、そうですよね。
あんなことした道化師型自律人形が、突然に現れて謝罪をしようとしているんです。
気味が悪いし、話を聞こうとは思いませんよね。
中にはワタシの顔を見た瞬間にトラウマを思い出されたのか、悲鳴を上げて逃げる方も。
落ち込みますが、そうなるのが当たり前……なのです。受け入れていかなきゃ……いけませんね。
そんなところ、ワタシの目の前にとある方が。
「ド、ドルイディさ……様……?」
「……」
「えっと、貴方もお帰りになられるのですか?」
「……私は彼女と顔は似ているが、違う。複製人形でね。イディドルと言うんだ。彼女に頼まれて、極悪な貴方が何かしないように監視をしに来た」
「監視……ですか」
「そうだ。聞くが、貴方はここで何をしている? 正直に話した方がいいぞ。少し痛い目を見てもらうことになる。私は彼女より優しくない」
嘘をつく気なんて……ありません。
「……訂正。持ち物検査もさせてもらおうかな」
「持ち物検査……?」
「ポケット、膨れているだろう。何か隠しているんじゃないのか? 見せてもらうよ」
「……」
「……罠だとしたら確かに危ない。だが、私はこんな時のことも考え、手袋を持ってきている。遠慮なく出してくれ。出さないならこちらが出すからな」
「わ、わかりました……」
こんなところで出すべきじゃない。
そんな考えはよぎりましたけど、今は困っている時。怪盗ディープさんは困った時に開けるように言っていました。それなら、きっと今でも……
そう思ったので出してみました。
ポケットを引っ張ってそこから取り出してみたら、ワタシはそれが何なのか……
「え……?」
全く……わかりませんでした。
ちなみにイディドルさんもわからないようです。ワタシが視線を向けただけで疑問に思っていることに気づいたようで首を横に振っていたので。
取り敢えず、渡すよう言われたのでワタシはその……謎の四角く黒い物体を渡しました。
イディドルさんはそれを罠が発動すると考えたのか、指だけで持つと、気味が悪いと思っていることがバレバレな表情でじっと観察していました。
そして、裏側に何か紙が貼られていることに気づき、取り外してワタシに見せてきました。
紙が貼られているなんて知りませんでした。
「これはなんだい? 読んでしまうよ?」
「お願いします」
イディドルさんは貼り紙の文字をワタシに聞こえるほどの声で音読していきました。
内容……『これは貴方の中の謝罪の気持ちと言葉をあの会場の中の迷惑をかけた全ての人間に届けることの出来る神造物です。使えば、貴方の悲しい気分も晴れるはず。貴方に不利益は一切ないので、自由に使ってくださいね。貴方のことが好きな怪盗ディープより』。
これがホントーなら、それは凄いこと。
でも、まあ試してみなきゃわからないですよね。
ワタシはイディドルさんに許可を取った後、それを使ってみることにしました。
どうやら、物体のてっぺんの部分によく見ると、窪みがあるのでそこを押せばいいようです。
それにしても、イディドルさんが許可を出してくれるとは意外でした。ダメと言われるかと。
かなり、厳しそうで怖い方なのでね。
押した瞬間、物体は光を放ちます。
光量は多いものの、部屋を覆うほどではなく、何故か眩しくも感じず……それどころか、浄化されているかのような心地良さを光を浴びる時に感じます。
これが……『神造物』。神が造りし物。
とんでもない物を……怪盗ディープさんは渡してくれましたね。
少し待っていると、物体から生じた光がいくつもの線となり……参加者さんが帰った方向と第一会場の方向へいくつも飛んでいきました。
数えきれないほどの光の線でした。あそこにワタシの謝罪の気持ちと言葉を届けてくれるのでしょうか。
でも、ワタシはまだ何も……
そう思っていたら、ワタシの頭に光が届いたことを知らせる謎の言葉が響きます。
そして、届けたい言葉を口にすることを求められたので……ワタシは……
「皆さん、この度は本当に申し訳ございませんでした」
……と精一杯の気持ちを込めた謝罪の言葉を……その物体に向けて、口にするのでした。
それが届くこともワタシにはわかりました。
ピンときていないようですが、イディドルさんはそんなワタシのことを見て、何故か嘆息。
そして、去っていってしまいました。
……気持ちが……確かに晴れました。
面と向かって言えないのが残念でしたが、ワタシの謝罪が皆さんにきちんと伝わったのは良かった。
晴れ晴れとした気持ちに包まれながら、その後……ワタシは城から出ていきます。
今度、機会があれば……芸を皆さんに……
*****
起きた私がイディドルにドッキーの監視を命じ……いや、頼んでから三十分。
部屋に戻ってリモデルと話していたら、唐突に頭の中に……ドッキーの声が聞こえてきた。
彼の……心から反省していることの伝わる謝罪の気持ちもそれと同時に私に伝わってきたよ。
リモデルを含めた周りの人にもどうやら届いているようだね。みんな、とても驚いているよ。
「これ、凄いね」
「ああ……どんな魔道具を使えばこんな……」
驚いた人間、その中には「謝ったところでやったことが帳消しになるわけじゃないだろう!」と激昂する者もいたが、大方は意外にも許す気になったよう。
会話をちょっと、盗み聞かせてもらったんだ。
帰った者もたくさんいるが、それでも百人はいるからね。聞くのは大変だけど、まあ。
それにしても、本当に凄い魔道具(?)だよ。
是非、欲しい物だとそう思った時に……お父様がわざとらしく咳をして視線を向けさせる。
パーティを再開するつもりなんだよね。
「皆の者、待たせて申し訳なかった。再開の準備が出来たため、パーティを始めさせてもらう!」
もう、時間は十八時三十分……既に外は暗くなり、本来ならもうダンスを踊っている時間……
……だが、食事は結局出すことになったみたい。
お父様が手元の棒のボタンを押すと、そこに見た目も風味も極上の食事の数々が召喚される。
ミュール貝の酒蒸し、巨大イカ焼き、キノコ類をふんだんに使用したソテー、トマトのパッスタなど……
他の机を見ても、ケンヴィナ風サラダ、キラキラエビのガールィックスリンプ、バレー芋のバター焼きとか……見るだけでヨダレが垂れそうなものばかり。
私たちはお父様の号令を聞くと、先の嫌なことなど忘れ、パクパクとそれらを食べていった。
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