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32話【ヒグリ視点】人形狩りの嫌がらせ

 怪盗ディープは城のどこかに人形狩りを隠すと言っていたそうっすけど、まさか……城の地下に牢屋が作られていて、そこに入れられているとは……


 ……そもそも、地下空間が存在していることから、既に驚きっすけど、わざわざこんなところに牢屋を作っていることにだって驚きはある。


 なんか、本当に怪盗って……変な奴っす。オレも自分が変な自覚あるけど、あそこまでじゃない。


 自分はまだ……あいつと比べれば全然マトモ……思い出しててそう強く思うっすよ。


 オレたちはそれから、奴らが何をするつもりなのか曲がり角からじっと静かに見守る。


 今、出たら何をしたいのかわからなくなる。



「……」



 それからも、人形狩りはずっと檻を揺すっていた。出たいということなんすか……?


 でも、そんなことしても意味ないでしょ。見た感じ、あいつらの腕力で破れるようなヤワな牢屋じゃない。いくらやっても出れないと思うっす。


 それとも、近くに仲間がいて……そいつを呼ぶためにやっているんすかね……?


 ……なんか、この考えありそうな気がするっす。


 だとしたら、一体どこに仲間はいるんすかね? 地上? それとも、そいつも地下に?



「……来たか」


「……?」


「……わかってるんだ。もうわかってる。出てこいよ、お前らが来たことはわかってる」


「……」


「お前らだよ。王族人形と人形師と服飾師」



 ……こちらを見た……!


 やはり、やはり……自分らのことっすか。まあ、誰もいないし当たり前っちゃ当たり前っすけど。


 仲間を呼んでいたわけじゃ……なかったんすか。


 自分らを誘い出すために音を出していたと? やられた。


 檻を揺する音が小さかったのは、自分やリモデルさんのような特段耳がいい者だけを呼び出す意図があったんでしょうね。ホント……やられたっす。


 くーっ、悔しいっすけど、表情には出さん。


 罠でしょうし、バレているとはいっても、取り敢えずは姿を出さずそのままいるつもりっす。


 ……息を殺し、静寂を作り……奴らが口を開くまで……ただ、じっと……待ち続けていく。



「……なんで……出てこねぇ。出てこいよ」


「来てないんじゃねぇのか……? 誰かしらが来てるのは気配的に確実だが、たくさん人や人形がいたしな。あいつら以外にも耳が良い奴がいる可能性は否めん。やっぱり、檻を揺する作戦はやめた方が……」


「うるせぇ! じゃあ、他に何ができんだよ! 持ち物は全部取り上げられるし、魔力は使えねぇし……手に打ち込まれた杭のせいで檻を壊すどころか、怪盗が昼に持ってきた苹果すら潰せなかったんだぞ!」


「ちょっ……さすがにキレすぎだろ。わかった。俺が悪かったよ。確かに他に何もできんよな」



 自分は何を見せられてるんすかね……


 えっ……思ったより、遥かに……こいつら、ポンコツっぽい……思わず、笑いそうになるほどに。


 ま、でも、ここで笑うのは居場所の特定までされるし、相手方の神経を逆撫でするだろうから、しないっすけどね。心中で笑っておくっすよ。



「……どうするよ? 出てこないが」


「もう一回試すか?」


「いいけど、その後に……」


「待て待て。近くにいるんだぞ。この会話だって聞かれている可能性がある。安易に計画を話そうとするな」


「わ、悪かった……」



 何かしら計画は立てていたんすね。


 取り敢えず、呼び出して……その後のことはその時に考えるって感じかと思っちゃったっす。


 ……さすがにそこまで救いようのないアホではないんすね。


 ま、救いようはあってもアホはアホっすけど。それに、救いようがあったところで、自分らに救う意思はないので……どっちでも……いいっすねぇ。


 自分はもうこのまま見ても埒が明かないと思い、ドルイディさんたちに断りを入れると……


 進んでいきます。すぐにエフィジィさんが自分の手を引いて引き留めようとしましたが……


 『大丈夫っす』と言っておくと、少し悲しそうな顔をしつつも、離してくれました。


 罪悪感が発生するっすね。悪いことをしちゃった。これで、怪我でもしたら……後で謝ろう。



「お、来たぞ」


「……人形じゃなくて、服飾師じゃねぇか」


「マジじゃん」


「服飾師で悪かったっすね」



 こいつらは人形を狩ることが目的……だから、やっぱり……自分のような人間にはあまり興味がないんでしょうね。物凄い、残念そうっすよ。はは。


 ちょっと落ち込まないこともないっすけど……


 ま、同時に安心したっすね。これで、何もされない。



「お……!」



 自分はその場で横に跳ねたり縦に跳ねたり、地面で地団駄を踏んだりしてみましたが、何も起こらない。


 この感じだと……特に罠もなかった感じっすかね。良かったー。またまた安心っすー!!


 ふっふふーん。自分はくるくる回転しつつ……


 檻の中の人形狩りの一人の顎を持ち上げる。



「あんたらはどんな計画を立てている? その詳細を自分たちに……大きな声で話すっすよ」


「なっ、馬鹿じゃないのか? そんなふうに脅したところで馬鹿正直に話すわけがないだろ!」



 それがねぇ。話すんすよねぇ。


 ……にしても、馬鹿正直に話すわけがないと本気で思ってるにしては必死っすねぇ、こいつ。


 さっきの会話で思いましたけど、何もしなくてもうっかり計画を話してしまうようなうっかりアホ野郎なんでしょうね。笑っちゃうっす。あはは。



「……『君、正直に計画を話せ』」


「『わかった。話すよ』」


「なっ……!?」



 ナイスっす! リモデルさん!


 詰め寄ったおかげで奴はおれ以外、視界に入っていなかった。


 だから、リモデルさんは楽ーに奴に自白のための糸……『人操糸』を巻きつけることができたっす。


 いやー、最高。笑いが止まらんす。


 おれは邪魔になる可能性を考え、隣の糸が巻きつけられてない方は手刀で気絶させときます。



「『オレたちはお前らに捕まった後、この地下で発見した数匹のモグラと仲良くなり、そいつらに怪盗を捜し出すこと。人形共の部屋を荒らすことを頼んだ』」


「待て。モグラ……? そいつらの名前は?」



 ドルイディさんが突然に血相を変えてそう言ってきた。


 なんすか。モグラの名前がなんで気になるんでしょう。もしかして、飼いモグラがいたんすかね。


 モグラを飼うとか……まあ、人(人形)の自由っすけど、少し……いや、かなり珍しいっすね。


 ドルイディさんはそれから、奴に名前を聞いて……何故か安心していた。


 自分の飼いモグラが悪さをしていないことに安堵したって感じかな。ま、良かったっす。


 ……なんか、よくわからないけど。



「……『パーティの会場を荒らすことやここにやって来ている道化師型自律人形を改造すること。そういった命令はモグラに対して下していないのか?』」


「『そういったことはモグラにやらせてない。というか、今……初めてそんなことがあったと知ったぞ』」


「なんだと……? それなら、なんで……」



 道化師型自律人形は会場を壊したのか……っすね。


 自分も疑問っすね。それなら、一体誰が暴走をさせたのか……?


 それとも、本当に誤作動なんすかね……?


 真相は少なくとも、ここではわかりそうにないすね。リモデルさんもそれはわかってそう。



「……『後になんかやったことがあれば言え。まだ隠し持っている情報なんかがあればそれも話せ』」


「はぁ……『お前らへの嫌がらせのために……モグラに服を処分させた。パーティには参加できねぇぜ』」


「は?」


「何を……言っているんだ、こいつ……」



 リモデルさんと、ドルイディさんは絶望と怒りの混じった表情でそう言いながら、男に詰め寄る。


 エフィジィさんやディエルドさんも……無言ではあるものの、人形狩りに対して向けている表情に強い怒りと殺意の感情が宿っているように見える。


 ……今、こいつはこの場の全員を怒らせたんす。


 おれも……正直、怒りが我慢できなくなっている。


 他にも聞きたいことがあるかと詰問してみるが、それ以上は無言……何もなしのようっす。


 取り敢えず、服をどうにかしないと……


 そう思ったおれたちは奴のことを睨みつけると、急いでエフィジィさんの部屋に向かった。

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