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16話【ドルイディ視点】オトノマース大祭二日目

 私とリモデルはあの後に壊れた街の建物を直す作業を五人で頑張って行っていった。


 もちろん、あんな格好(ドレスなど)は作業に不向き。不本意ではあったが、着替えて作業した。


 大規模であったが故に街の人たち数名の手助けがあったのに、時間は夜までかかってしまった。


 それによって、疲れた私たちはその日の十一時にベッドに入り込み、そのまま眠ってしまった。


 ……化粧を落とすことや髪のケアのことなど……そういうことは完璧に頭から抜けちゃってたよ。


 それに、気づいたのは……目覚めてすぐ……朝の七時……つまり、現在なんだけどね。


 私とリモデルは二人でそれから、一緒に顔を洗って化粧を落とし、歯を磨き、祭の準備をする。


 朝食はまだ食べない。今日も祭なんだし、食事は家で簡単に済ませるなんてことはしたくない。



「……よし」



 顔洗い完了。歯磨き完了。金銭など持ち物確認も終わり、再化粧と着替えも……完璧に終わり!


 ちなみに着替えなんだけど……昨日は結局半日ぐらいしか着ることができていなてもったいないということで、今日も着用している。別に嫌々ではない。


 ディエルドとは今日も合流することになっているんだけど、彼も別に嫌じゃないと言っていた。


 家の前まで七時前には来ると言っていたから、きっともう既にドレスの状態で来ていることだろう。


 あんまり待たせるのも良くないし、準備が終わったら早く家を出ないとね。扉の前にいるかな?


 それとも、この家の下にある飾り同然の空き家の方に入っちゃったりしてるかな……?


 そういうこと、事前に伝えれば良かった。



「……あー、いや……でも」



 ……まあ、もしも入っていても出せばいいだけの話。危険な場所ってわけではないし、いい……か。


 ちなみに服に関してなんだけど、昨日の半分の時間ぐらいでリモデルはドレスを着られている。


 やっぱり、リモデルの慣れの早さには驚かされる。



「出よ」


「ああ」



 リモデルと一緒にお金を持ち、結界も張り……準備の整った私たちは家の扉を開けた。


 すると、案の定、アホ面が待ち構えていた。


 気配……かなり微弱だったからまだ遠くにいるかもと思っていたが、こんなに近くにいたとはね。


 彼はあれからかなり色々と修行や改造を行っていたと聞くし、その段階できっと気配を薄くする(すべ)も身につけたのだろうね。うん。


 心の中で褒めてあげよう。凄い凄い。


 口に出したらつけあがりそうだから、表情は変えない。


 私たちが特に反応を見せずにいると、ディエルドがムスッとしながらも私たちに言う。



「……それじゃ、行こーか。二分は待ってたよ〜?」


「そうか。それはすまなかった」



 私がそう言うと、頷いた後にディエルドは歩き出す。


 ……先頭で歩いているけど、どこか目的地があるんだっけ? 私たち聞いてない気がするんだが。


 いや、彼のことだし何も考えずに歩いているかも。



「ディエルド、どこに行くつもりなの?」


「あれ? 言ってなかったっけ?」


「うん、言ってなかったね。リモデルも具体的にどんなところに行くかなんて聞いてないよね?」


「ああ、ディエルドからどこに行くかなんて話は一切聞いていないな。間違いないと言える」


「おぉーう。そっかぁ……じゃ、言うよ」


「待って。そこって食べ物の店? 食事目的?」



 別に何の店でも構わないけど……


 祭の最中である以上、飲食店はどこも混んでいると思うのだが、並ばずに入れるのか……?


 それとも、私たちに何分も待たせるつもりなのか? そういったことは本当に先に伝えてほしい。



「……そこも言ってなかったっけ。他のことに気を取られて、すっかり記憶が残ってないなぁ」


「……」


「そんな目で見ないでよぉ。悪意は一切ないのさ。本当にごめん。悪かったと思ってるよ」


「それで、結局どこの店に行くわけ?」


「……並ばずに入れる良い店をエフィちゃんが紹介してくれたのよ。そこに行くわけ」


「へぇ〜」


「ま、楽しみにしといてよ。美味しいはずだから!」



 ディエルドは自信満々にそう言った。


 エフィジィが紹介してくれた店らしいし……期待はしといていいかもしれないね。


 それにしても、並ばなくていいとはどういうことだ? 人気がない……ということなのか……?


 美味しいのに人気がないというのは考えにく……いや、開店したばかりで見つけられていないとか……


 立地の問題……料金の問題……それか、少々失礼だが、上位互換とも言える競合店があるのかも。


 まあ、なんであれ美味しい物が並ばずに食べれるというのなら行かない手はない。


 リモデルに視線を向けると、彼は頷いた。



「うん。じゃあ、行こっか」


「良かった〜。これで行かないって言われたら……」


「じゃ、行かない」


「……ほぉっ」


「もちろん、冗談ね。あ、一応聞きたいんだが、その店にはヒグリもいたりするのかな?」



 私の問いにディエルドは頷く。


 ふーむ、凄いな。


 昨日が初対面なはずなのに、もう二人一緒にご飯を食べに行くほどの仲になっているとは……


 本当に一緒とは思わずに聞いたから、冗談ではなく本気でそのことに驚いているよ。私は。



「あ、そだ! オレさ、今日も怪盗ディープの予告状を持ってきたんだよ。昨日は結局人形狩りのせいで見せられなかったじゃん? 三日目にパーティで会う前に奴が盗む物をリモデルも把握すべきと思って」


「なるほど。そういうことなら読ませてもらおう。わざわざ今日も持ってきてくれてありがとな」


「大したことじゃないさ〜。受け取って」



 私は一応覚えているからね。読まなくても大丈夫。


 怪盗ディープは複数の物を盗むつもりらしくてね。一つは灯火草の代わりに灯りとして使われている火光石(かぎろいし)で二つ目は杯形(はいぎょう)。オトノマースが産んだ杯の形をした動く土塊だ。土塊人形と同じ。


 最後に……何故か物ではなく、人……それも、私たちが捜している人形狩り……そのうちの二人を盗むとのこと。人を盗むとはどういうことだ……?


 盗む……という言い方はしてるが、これって……誘拐ってことだよな……?


 改めて考えると、本当に不思議。奴はそれらを盗んで(誘拐して)……一体何をするつもりなのか。


 私が思考のために意識を闇に沈めようとしたところで……ちょうどリモデルが読み終わったようだ。


 私とディエルドの方を向いてきたので、私は思考を闇に沈めるのは後回しにし、彼を見る。



「読ませてもらった。一つ目と二つ目に関してはどちらも希少である故、きちんとひた物だからまだ盗むのは納得がいく。しかし、三つ目はどういうことだ?」


「あ〜、やっぱり、おかしいと思うよね〜。リモデルも」


「これは誰が読んでもおかしいと思うだろうな。盗むという言い方はしているが、やはり『誘拐』ということかな……? 身体の一部を盗むなどとは書いてないし……心を盗む……みたいな詩的表現も皆無だし……」


「私も誘拐だとは思うけど、誘拐して一体彼は何をしたいんだろうね。何に利用するんだろう」



 誘拐して殺す……つもりかな……?


 ……そんなことに何の意味があるのかわからないけど。私だったら、その場で殺すだろうし。


 ……何かしらの情報を聞き出すつもり?


 いや、よくよく考えれば、アイツは糸を使っていた。多分、『人形操技』の使い手である。


 わざわざ連れていって拷問とか面倒くさいことをしなくても、『人操糸』で聞き出せばいい。



「……いや、親玉に関する情報を聞き出そうとしたら爆発したもんね。怪盗(アイツ)はそのことを知っていて……体内の爆発物を取り出すために誘拐を……?」



 ……どうなんだろう。


 いくら考えても答えは出ないのは自分でもよーくわかっている……わかっているが、次から次へと溢れる疑問を解決したいという気持ちが抑えられない。


 自分で考え続けるのも良くないと思った私は……それからの道中、リモデルとディエルドと良さげな飲食店の物色と意見の交換を行いつつ、歩いていった。

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