17話【ドルイディ視点】どこに行く?
私、ドルイディとリモデル、そしてファルは夜の闇の中をなるべく静かに……でも、早足で歩いていた。
服に関してはちなみにみんなそのまま。正体がバレるとまずいからフードを被ろうとも思ったけど……
……夜だから人が少ないし……その上、暗くて前が見えないと困るからということで今は被っていない。
さすがに緊急時には被るけどね。
「微かに家の光があるとは言っても、夜はやはり少し怖いね」
「ああ」
「守ってくれるかい?」
「当然だろ」
リモデルはウインクをしながら、笑ってそう答える。この人は歯を見せて笑う顔もいいな。
もちろん、本気で怖いわけではないが、こう言うことによって彼の守りが更に強くなってくれるかな、と。
「……僕の存在、忘れてないかな」
「忘れてないよ、ファル。拗ねないでくれ」
私は後方でこちらを睨みながら歩くファルにそう返答する。
……リモデルが苦笑してしまってるじゃないか。
「ファルも隣に来い。君もドルのことが好きなら、そうした方がいいだろう」
「……はぁ、そうだね」
嫌々、そうだけど……これは私が嫌というよりリモデルが嫌なのだろうね。
……あ、これは想像だよ? 実際そうなのかはわからないさ。思考を読むなんて高度な機能は有してない。
「あのさ、リモデル」
「なんだよ?」
「アンタらは恋人だと思うんだけどさ。恋人って告白してなるものでしょ? 告白ってどちらがしたのさ?」
「ぶっ」
リモデルが思わず、噴き出しそうになってしまう。
なんてことを言うんだ、ファルは。とんでもないな。これが爆弾発言(?)というやつか……
「なんてことを言うんだよ。こんなところで」
「別によくない?」
「よくないだろ……ドルの目の前だぞ」
ああ、思い切り私の目の前だ。正直、物凄く驚いているよ。だから、リモデルの気持ちはすごいわかる。
ここが人のいない夜中でよかった。昼間だったらとんでもない嫌がらせになっていたぞ。
「いや、今聞いておかないと忘れると思ってさ」
「は?」
「知っておきたいというのはあるだろう」
人間、本当に何を言うかわからないものだよね……
「言わん」
「……そうか。まあ、いいや」
やけにあっさりとしているな。諦めるのか。
そこまで知りたいことでもなかったということかな。本当に何なんだよって感じだよね。
ため息をつくリモデルを私は見ながら、歩く。
「それで、道の話だが……」
それは五分後の言葉。リモデルは息を整えながら、私とファルを見ながらそう言ったんだ。
最初にファルが行こうと提案した路地裏に今来ているのだが、そこにはどう探してもいなさそうだったからね。
「ドル、君はこれからどこに行きたい……いや、どこに行けば見つかりそうだと思う?」
「城、かな」
「城? いや、城はやめておいた方がいいんじゃないか? この国の城のことだろ?」
いや、そう思うのも当然だよね。この国の城は厳重。
一日中働いても疲れることのない特殊な門番型自律人形が目を光らせている。
もちろん、彼らは夜目も利くから辺りの灯りを消すという作戦などを考えたとしても意味はない。
でも、私の勘が告げているんだよ。
……そこに……いると。モグラをあの家にけしかけ、その上自律人形を一体盗んでいった犯人がね。
……正直、『勘』などという曖昧なものに頼るのも私は私で一応どうかとは思ったよ?
かといって他に犯人がいそうな場所も思い浮かばなかったからさ。言うことにしたんだ。
……あ、ちなみにだけど、私がこの国の姫であるということは事前にこの二人の前で明言している。
私が姫だと知った上で彼はやめた方がいいと言ったわけだ。それが真っ当だよね。
「……いや、すまん。そうだな。それでいこう」
「は? 悪いが、リモデル。そんなんで納得していいのか? ドルイディは何も説明をしてないぞ?」
「そうだな」
「何となく思いついたことを言っただけかもしれないじゃないか? 明らかに危険だし、徒労になる可能性も高いだろ。やめておいた方がいいんじゃないか?」
ファルが言うことは最もだ。私はそれに怒ることはない。
リモデルもその意見で私の提案を「やっぱりやめよう」などと切るかと予想していたが、それは外れる。
「恋人が言うことなら、なるべく信じたいという思いがあるんだが、今回はそれだけじゃない」
「は?」
「これを見てほしい」
リモデルはそう言うと、おもむろにどこからか小さい発信機のような物を取りだした。
なんだそれは。初めて見たな。
「これは見た目からわかる通り、発信機だ。ラプゥペの場所がわかる。これによると、城にいるとのことだ」
ラプゥペというのは盗まれた自律人形の名前だったか……いや、でも今はそれはどうでもいい。
「あのさ! なんでそんな物を持っているなら最初から使わないんだよ。頭おかしいのか!!」
「いや、それは言い過ぎだろう。ファル」
頭おかしいとまで言うほどじゃない。
だが、大方同意見だ。なんでそんな物を持っているなら最初から使わないのか。
忘れていたなどと言ったら、ちょっと笑う。
「……忘れていたわけじゃないんだよ。さっきの部屋でこれを見つけて、折角だから持ってきたんだけど……何故だか少し前まで機能しなかったんだよね」
「それを信じるとでも?」
うん、ファルは懐疑的だな……
「機能するようになったのはほんの五分前ぐらい。多分、ラプゥペについている発信機が壊れかけなんだろうな」
「いや、だからそうデタラメを……」
「私は信じるよ」
「そうか、ありがたい」
「……っ……」
ファルは何かを考えている。どうすれば、私たちの意見を変えられるのか考えているのだろうか?
それとも、他に犯人がいそうな場所があったか考えているとか……どっちもありえるな。
「……」
「……どうする? ファル」
「……っ……まあ、信じるかどうかはともかく、確かに他に探せる場所もないし……行って、みようか」
渋々と了承。よかった。これでやっと進める。この話し合いの間、三分ほど立ち止まっていたから。
私はそれで納得がいかずにムスッとした顔のファルを見て、リモデルと共に軽く「ごめん」と謝まっておく。
「緊張するな……」
やけに緊張する。こんな時間だというのもあるし、許可を取らず勝手に侵入しようとしているからでもあるね。
人間に近づいていることの証の一つ。でも、これにはあまり喜ぶ気は起きないかな。
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