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8話【ドルイディ視点】道化師人形ドッキー

 化粧にも時間をかけたかったところだが、よく見たらかなり時間が経っていたため、簡素に済ませる。


 ちなみにもうとっくに昼時は過ぎている。


 午後の三時……ぐらいだね。そんなに経ったか。


 私はガックリと肩を落としながら、自分の化粧を始めた。リモデルの化粧は終わってる。


 ディエルドの化粧もちなみに終わった。三分ほど前に。


 リモデルは私が担当したけど、ディエルドの化粧はエフィジィが担当したんだ。


 くすぐったがったせいで少しやりにくかったそうだが、まあそれでも私より三分遅かっただけ。速度としてはまあまあ早い方だと言えるだろう。


 「ふう……」と疲れた様子で肩を落としたエフィジィは……私と同様、自身の化粧を始めていく。


 私もそうだが、男装である故にあまり濃くするつもりはない。口紅なども塗らない予定だ。



「……うっ……まあ、これでいいかな」



 少し納得はいかないが……それから、二分ほどで私も、エフィジィも自身の化粧を終わらせた。


 目元を強調。私もエフィジィも格好良いと他者から言われることはないが、この化粧なら、誰かしらからそんな言葉を浴びせられてもおかしくない……


 ……かもね。まあ、わからないけれど。



「じゃあ、今度こそ準備OKかな」



 靴に関してもじっくり選びたかったが、やめ。


 エフィジィは中々にセンスを感じる格好いい靴や……かわいい靴を多数有していたため、その中……およそ三十種類から選んで履くと……私たちは外に出た。


 なんか、久々の外って感じがする。


 いや、廊下だから厳密には外じゃないが。


 私は廊下を四人で歩きながら、そういえば聞いていなかった気になることを……尋ねることにする。


 ……ディエルドに。


 肩を叩いたら、振り向いてくれたので口を開く。



「ディエルド、そういえば……貴方ってなんでロングドレスにすることを希望したの?」


「え?」


「エフィジィが言ってたよ。貴方のドレスがロングドレスなのは貴方自身が希望したからだと」


「あ、ああ、そういえば、そうだったね。そうだよ。オレはロングドレスにすることを希望しましたー!」


「いやいや、早くその理由を話してよ」



 はぐらかそうという魂胆は見え見え。


 その考えを先んじて、私はぶった斬る。


 ぶった斬られたことにより、素っ頓狂な顔を見せてくれたディエルドだが、すぐに笑うと……



「わ、わかったよ〜、ドルちゃん。話す話す〜」


「……」


「おぅ、なんだその顔……で、した理由なんだけど……単純にリモデルが短くすんならオレは長くしようと思っただけ。一緒なのは何となく嫌だなって」


「あ、そういうことなんだ……」


「リモデルの書いた紙、実はオレに見えてたんだよ。リモデルがそのことに気づいてたかは知らんけど〜」


「気づいてたよ、ディエルド。やけにジロジロ見てくると思っていたらそういうことだったのか」



 リモデルはジトーっとディエルドに白い目を向けながら、そうこぼした。ははは。


 疑問が解決してスッキリしたところ、庭園に出る。


 エフィジィが久しぶりにみんなで庭園を通って外に出たいと言ったため、そうしたんだ。


 色とりどりの花を見ながら庭園を抜け、門に到着。


 行きのように門番に挨拶をすると、私たちは少し早足気味に外へと駆ける。


 近くにいた祭を楽しんでいたと思しき子供がこちらを見て、目を輝かせていた。


 目を輝かせるのはその相手に対して好印象を持っているから……であるはず。ということは……



「ふふ……」



 少し嬉しくもなりつつ、歩いていき……


 私たちは噴水の広場へと到着した。


 ここはただ、噴水や座るための長椅子などがあるだけの場所だが、今日はたくさんの人がいた。


 その数……およそ、五十人。


 理由は……ここであと十五分後ぐらいに道化師型の自律人形がやってきて、芸を見せてくれるから。


 私も外に出てから思い出したんだよ。いやー、いいタイミングで外に出たと自分を褒めたい。


 あと、数分遅かったら始まってたかも。


 折角なら最初から見たいからね。


 これが普通の道化師や自律人形なら、ここまで期待はしないのだが、今回やってくると言われている人形はとある有名な人形師……名前は何だったか。


 とにかく、リモデルが「凄い」と言っていた人形師なのだから、凄いと思われる。


 そんな人形師が作ったと言われる人形なら、そりゃ期待してしまうというものだろう。



「あ、来たんじゃない?」


「そうだな。間違いない。あれだろう」



 私の視線が届くギリギリ……そこにチリチリのボリューム多めの赤毛、白塗りの肌、頬に赤と青の何かを貼り、虹のように様々な色の入ったオーバーオールを着ている。見た目こそ典型的な道化だが……


 そこから漂う高濃度の魔力と、人形とは思えないあまりに人間じみた歩き方と表情から……


 私の心は……もう既に期待で跳ねていた。


 これはリモデルの言う通り、高性能な人形だと、それだけでもう……わかってしまうわけだから。


 徐々に接近し、噴水広場に設置されていた人が十人は乗れそうなそれなりに大きい台に道化師型人形は上がると……こちらに向かってぺこりと頭を下げ……


 ……途端にニコりと笑うと、自己紹介してきた。



「ワタシはドッキーと言いまーす。道化師型の自律人形なんですよ〜。みんな〜、よろしくね〜」


「すっごい気さく! いいねぇ〜」



 隣でディエルドがそう言って褒めている。


 ……何となく、彼と似ているからね。ディエルドはあの人形に何か近しいものを感じたのかも。


 私もリモデルもエフィジィもワクワクしているが、ディエルドほどじゃない。はしゃぎすぎ。


 そんな彼のことを見て、苦笑しながら私は道化師型自律人形……じゃなかった。ドッキーを見る。


 見たところ、何も道具は持ってないようだが……一体どうするつもりなのだろうか……?


 忘れた……ってことはまあないだろうが。


 なしで芸をするということなのかな……?


 私がどうするのか心配で見つめていると、ドッキーは突如虚空に手をついた。


 その瞬間、虚空に穴が出現し、そこから様々な道具が出てきた。なるほど。そうするのか。


 これは想像通り……いや、それ以上に期待ができそうで……嬉しいよ。


 私は更に高鳴る胸を右手で抑え、左手でリモデルと手を繋ぎながら、彼の芸を見るのだった。

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