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3話【エフィジィ視点】お姉様に恋人が!?

 髪先を右手の人差し指で弄りつつ、私は既に出来上がっている自分用の服を持ち上げ……


 じーっくりと見ていった。ミスがないかどうか、確認するのは大事なことだよ。


 もう、この確認六回目だけどね!


 だって、暇なんだもんー! ドルイディお姉様もディエルドお兄様も早く来てよー! もう!



「ふぅ〜」



 髪先を弄るのも飽きたし、確認ももういい。縫製に問題はないし、生地に破けた箇所もなし。


 あー、そうだ。二人が来るまでの間にお茶でも入れておこうかな。


 そうだよ。いいよね、お茶。どこにしまったかな。普段はあまり飲まないから場所がわからない。


 立ち上がって、フラフラと茶葉を探していたところ、何やら気配が近づいてくるのを感じた。


 ドルイディお姉様とディエルドお兄様だ! そう思って喜びかけたけど……


 なんか、気配が三つ……なんだよね。一人多い……? 誰か同行者がいるのかな……?


 執事やメイド……? まあ、なんでもいいけど。


 私は取り敢えず、すぐに来ることがわかったので、茶葉を探すのをやめて、椅子の用意を始める。


 みんな、わたしが服を作る間に暇しちゃうだろうから、椅子がないと辛いと思ってね。



「……よいしょ、と」



 椅子はたまたま近くにいくつか積み重ねていたからね。すぐに出し終わったよ。


 あとは……化粧だ。


 事前にやっておいたけど……崩れてないよね?



「う、うん……大丈夫そう!」



 崩れてない。近くの窓に顔を映したことでわかる。


 服に関しても変な皺がついていたりってことは……特になさそうだったよ。


 あとは……もう、出迎えるだけだね。


 わたしは扉の手前に立ったまま、待機する。


 足音が三つ……近づいてくるね。


 香りが……知らない香りだ。新入りの執事かメイド……かな。いや、それっぽくない香り……?


 なんか、香水つけてる……? 誰……?



「エフィちゃ〜ん、来たよ〜」


「ディエルドお兄様!」



 良かった。少なくとも、ディエルドお兄様がいることは確て……いや、断言はダメかも! 危険かも!


 色々な魔道具が世にはあるもんねぇ。声を変えて、わたしを黙していてもおかしくない。


 幻術(?)の可能性もあるしさ〜。もっとちゃんと疑っていかないとダメだね、わたしは〜。


 えっと、どうしようかな……?


 ソワソワしながら、わたしは扉の隙間から外を覗く。



「エフィちゃん、早く開けてよ!」


「うわっ、ビックリするじゃん!」



 覗いた瞬間に扉の物凄く近距離にいたディエルドお兄様と目が合ってしまったんだ。


 あぁ〜、凄い驚いちゃった。心臓バクバクしてる。


 この心臓、人工心臓なんだけどね……わたし、自律人形だし。


 その人工心臓を抑えるため、胸に手を当てて何度か深呼吸。


 少し落ち着いたところで扉の隙間からガッツリ

顔を出して、彼の顔を見てみた。



「……」



 ……見てみた、ものの……全く誰なのかわからない。初めて見る人だ。こんなかっこいい人、忘れたなんてことりえないよ。絶対に初めて見たと思う。


 男性みたいだけど、執事の格好はしていないし……


 なんか……ドルイディお姉様とやけに親しそうにしているけど、一体何者なんだろう……?


 全くわからないなぁ。えーっと……



「……うーん」



 友達の距離感……ではないよね。


 あっ……もしかして……もしかしてだけど、彼はお姉様の……恋人的な何かだったりするのかな……?



「ちょっとー、開けてってば……」


「……っ! ……ーっ……!!」


「……? 何を顔赤くしてんのさ? エフィちゃん」



 わたし、今顔赤いんだ!?


 意識してしまって、そうなったんだ。絶対。


 恥ずかしさを隠すために俯きながら、わたしは顔をパタパタと仰ぐ。ああ〜暑いなぁ〜。


 仰ぎ続けていると、視線が刺さるのを感じた。



「……」



 ディエルドお兄様だけじゃない。ドルイディお姉様の『まだか……』という視線も突き刺さる。


 これ以上、待たせてはいけないよね!


 わたしは急いで扉を開けると、三人を中に招き入れる。


 約一名はよくわからないけど、ドルイディお姉様とラブラ……いや、親し……そうにしているあたり、それなりに……いや、かなり仲のいい人なんだと思う。そんな人を邪険に扱うなんて……わたしにはできない。


 いやぁ、隣を通り過ぎた時にほんのーりと良い香りが漂ってきたよ。花の香り……


 ……これは……アガプンス……かな……?



「エフィちゃん。もしかして、服作ってて疲れた? さっきから、ボーっとしすぎじゃない?」


「え?」


「いや、本当に大丈夫? オレ、心配だよ」


「ああ、うん。本当に大丈夫だよ。ごめんね。ディエルドお兄様。心配をさせちゃって」



 わたしはそう言いながら、お姉様と親しそうにする方のことをさりげなーく見つめていく。


 ……背が高くて顔のパーツも整っていて……良い香りがする……『イケメン(?)』だなぁ。


 こんな人と……お姉様は本当にどんな関係なの?


 いい加減に質問するべきか、悩んでいたところ、わたしの頭の中を覗いたかのようにお姉様が……



「エフィジィ、もしかして、私の隣の人のことが気になってる感じ? さっきからチラチラ見てるし」



 わたしがそれに頷くと、ドルイディお姉様は笑顔になって隣の人の紹介を始めてきた。



「この人はリモデル。私の恋人だ。こんなに早く紹介することになるとは思っていなかったよ」


「リモデル・スキィアクロウと言います。第六王女様ですね? よろしくお願いいたします」


「や、やっぱり、恋人なんだ……! お姉様、凄い……! わたしのきょうだいってみんな凄いなぁ……」


「エフィジィも服飾の才能があるだろう。私は貴女のことも他のきょうだいに負けないほど凄いと思ってる。もっと、自信を持って良いと思うよ」



 服飾の才能……かぁ。あると思いたいけど……



「わたしはレグフィお兄様と比べれば、まだまだだから。そりゃ、好きな気持ちは負けないつもりだよ? でも、まだ多分お兄様に技術では並べてないよ」


「そんなことはないと思うが……まあ、いい。それで、今日は服を作ってくれるんだよ……ね?」


「うん。二人のパーティ用の服を作りたいと思って……あ、リモデルさんもお姉様の恋人ってことは一緒にパーティに参加するんですよね? 服……作らせていただいてもよろしいですか? 凄い……作りたいです」


「もちろん。というか、こちらからお願いしようと思っていたところです。第六王女様」


「堅苦しいですよ。わたしもリモデルさんと呼ぶので、こういう場では普通にさん付けでお願いします」


「はい。エフィジィさん」



 ニッコリと笑うリモデルさんにドキッとしかけますが、横のドルイディお姉様の厳しい視線が刺さったことで……わたしはやめた。まずいことしたな。


 そうだよね。お姉様の恋人だもんね。


 お姉様の恋人にドキドキなんてしたら良くないね。やめとこ。それより、服のこと考えないと。



「……」



 それにしても、本当にラブラブ……なんだなぁ。


 わたしが服を作るために立ち上がったところで二人を見たけど、互いを大事に思っていることが……


 見つめ合うところから、何となくわかる。


 ……って、恋愛なんてしたことない……服飾ぐらいしか今まで興味なかったわたしが何言ってんだって感じなんだけど! ホント! いや、もーホント!


 あー、わたしも恋愛……してみたいな。


 わたしはお姉様たちを横目で見てそう思いながら……裁縫道具や新しい生地などを取りに行く。

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