43話【ドルイディ視点】ルドフィアの伝えたい言葉《2》
「そういや、マオとルドルフがさっきいたよね? 彼らはなんであそこにいたの?」
部屋に戻るまでの道中でファルとイディドルに尋ねたら考える素振りを見せず、即答してくれた。
「多分、こちらの危険を察知してやってきてくれたんだ。そういう察知能力が高いようだから」
「ふーん、やっぱりあの二匹は凄いな」
「普通のモグラじゃないよな。優秀だよ」
本当に優秀だ。あんなモグラ見たことない。
私はリモデルと顔を見合せて、彼らのことを思い出してその優秀さを口頭でも心中でも褒める。
「今度、彼らと話すための機能を付けようよ」
そう提案してきたのはまさかのファルだった。
私とリモデルはもちろん、賛成である。そのためにすぐにファルの言葉に頷いた。
でも、折角なら彼らだけでなく、動物や魔物全てと会話できる機能が欲しいよね。
まあ、難しいからすぐには搭載できないだろうけど、不可能じゃないと思うし、やるつもり。
プララとラッシュなら、すぐに作れそうな気もするが、ここのところ頼ってばかりだったし……
私たちも技術力向上のために、ちゃんと自分たちでそういう機能を頑張って作っていくのだ。
「……そういえば、あのマルアってメイドが元に戻ったって確か言ってたよなァ。第二」
「ああ、言ったね」
「乗り移ってたオブセポゼは今どうなってんだ?」
「壺に閉じ込めた、ペルチェが。歩いている途中で妖魔人形に運ばれるところを発見し、紆余曲折を経、マルアの肉体から追い出し、閉じ込めたんだって」
「ペルチェ……? 誰だ、知らねェ名だ」
「とても優秀なこの城の執事だよ。彼が私たちの知らない間に色々やってくれたみたいなんだ」
ペルチェはやはり凄い執事だ。
今日のことで私はそう強く思ったね。今はどこにいるんだろうな。会えたらお礼をしなければ。
何も伝えてないのに、会った瞬間すぐに乗り移られていることがわかったんだってよ。
マルアがそう教えてくれた。
彼はお礼などいらないと言うだろうが、私がしたいのだ。きっと、ここのみんなもそう思ってる。
「……まァ、良かったよ。じゃ、本当にルドフィアと話をすれば全て終わりッて感じだなァ……」
「だね。あ、そろそろ部屋に着くよ」
もう目の前に見えてきていた。
ルドフィアとフィアルドは私たちの少し後ろを歩いていたが、すぐに前に出ると扉を開けた。
そして、手を引いて部屋の中へと入れてくれる。
「……椅子を用意するわ。全員分」
「ルドフィアが椅子なら私はお茶でも用意するわ。みんな、少し時間かかるけど、待っててね」
ルドフィアは別の部屋に行って椅子を取りに行き、フィアルドは部屋の奥でお茶を作り始める。
二人共、やる気が満ち満ちていた。
嫌々、やっていない。奉仕の精神が強く感じられるところを見て、なんか心が温かくなる。
私たちも何もしないのはなんか嫌だな。
そう思って動き出そうとした私とイディドルとラプゥぺの肩にリモデルとファルが手を置く。
「彼女らは俺たちにゆっくり休んでほしいと思っている。ここで俺らが動くのは違うよ。大人しく待とう」
「僕もリモデルと同意見だ。別に手伝わなくても大丈夫さ。大人しく待っていようよ。ね?」
二人がそう言うので、私はゆっくり待つ。
壁にもたれてね。
ここの壁、そんな硬さを感じないからもたれても痛さを感じることというのは特にない。
それから、三分後、八人分の椅子を一度にルドフィアお姉様が持ってくる。力持ちだなぁ。
フィアルドお姉様がやってきたのはそれから十分後だった。意外にもかなり時間がかかったね。
「ごめんなさい。ティーカップを探すのに時間がかかってしまったの。六人分くらいしかなくて……」
「大丈夫だよ。フィアルドお姉様。気にしてない。八人分のティーカップなんて普通はないよね」
私はそう言いつつ、フィアルドお姉様からティーカップを受け取る。どれも良いカップだね。
丈夫で出来ていて……
って材質が二つだけ違うな。もしかして、魔力で創ったとか? ありえるな。
急いで創ったからか触感が違うからわかった。みんなのためにこんなことしてくれるなんて。
本当に嬉しい。そう思いつつ、ティーカップをみんなの手前の机に丁寧に並べていく。
ちなみに私はその魔力製(?)のカップを取ったよ。使ってみたかったからという理由でね。
このカップのいいところは……別に意識した作ったわけではないかもしれないが、熱が通らないところ。故に湯気が出ているのに熱く感じないんだよ。
「……うん、美味しい」
飲む前からフィアルドお姉様の凄さに感動していたが、飲んだ後にもお茶の美味しさに感動。
その感動にみんなで存分に堪能後……
ルドフィアお姉様が……口を開いた。
「じゃあ、少し遅くなってしまったけれど……ドルイディ、アサ……貴女たちに言いたいことがある」
「……うん」
「……ああ、話せよ。口は挟まねェ」
「うん、二人共。じゃあ、言うね。ごめんなさい。今まで、私たちは貴女たちに酷いことしたわ」
「……」
「……眠っている間にも、貴女たちに謝罪する夢を見ていた。それだけ……謝りたいと思ってたのよ」
夢にまで見ていた……か。
「自分の行動を思い返すと、恥ずかしくなる」
「……」
「私は今まで自身の兄弟(姉妹)以外をぞんざいに扱ってきた。その理由は昔にこの地にやってきた別の人形に兄弟(姉妹)を傷つけられたから。でも、そんな理由でぞんざいに扱っていいなんてこと……ないわよね」
「……」
「本当に……ごめんなさい。いや、言葉だけじゃ……ダメよね。謝罪なんて……誰にでも出来るし」
ルドフィアお姉様は拳をグッと握り、私たちのことを真剣な目で見据えると、言った。
「私はこれから、償うためにきちんと行動する。迷惑をかけた他の人形にも謝りに行くし、これから生み出すかもしれない人形にはきちんと愛情を注ぐ」
「……ふう、お姉様。ちょっといい?」
話さないつもりでいたが、少し話したくなった。
アサが「おいおい、口挟むなよ」と言おうとしたようだが、私はその口に人差し指で栓をする。
「私こそ……ごめんなさい。私は貴女を本物のお姉様じゃないと決めつけて、酷いことを言った」
「いや、そんな……気に病むことじゃ……」
「酷いことを言ったのは事実だからね。ちゃんと謝らなきゃ。悪いことをしたら、謝る。それはルドフィアお姉様が昔に私に対して言っていたよね?」
悪いことをしたらいけないという考えは実は私の製作者一人とカコイ神様が最初に教えてくれた。
でも、それを知らないお姉様はそれから数ヶ月後ぐらいに私に対して自慢げに教えてくれた。
その時のお姉様はかわいさもかっこよさもあって……凄い記憶に残っていたんだ。間違いない。
「……これからは、仲良くやっていこう」
「……オレも悪かったな。オマエのことを憎み、本気で壊そうとしていたわけだしよォ……」
「アサ」
「ルドフィア、今までのこと、完全に許しはしないが、咎めることはもう二度としないつもりだ。だッから、絶対にもう昔みてェなことはすんなよ?」
「……うん」
「わかッたなァ?」
「……え? あ……いや、もう私……うんって言ったわよ? 二度言わせるの? 聞こえてなかった?」
ルドフィアお姉様はそれから、困惑しながらもアサの目を見つめて……再び「うん」と言った。
その瞬間にたまたまカーテンの隙間から外が見え、景色が顕になった。
もう、時間が経ってすっかり夜か……
いい気分だ。綺麗な星々が見える。
「……」
私はその星々たちを眺めながら、ティーカップを他の七人と共に……ゆっくりと傾けた。
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