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30話【ドルイディ視点】城内の空き部屋にて

「はぁっ……はぁっ……」


「ぜぇ……ぜぇ……」


「ふぅ……ひぃ……っ」



 空き部屋に入った私とリモデルとラプゥペは壁に持たれかかり、三者三様に肩で息をしたよ。


 本っ当に……疲れさせられた。


 最初は抱えられていたが、部屋に着く直前でラプゥペが耐えられなくなり、私も辛くなってきたために走ったんだ。追いつかれないよう、全力でね。



「あぁーあ……はぁ……」



 まさか、こんなことになってしまうなんて思ってなかったよ。


 これは、無事に目的地であるルドフィアお姉様の部屋にたどり着くことができるか不安になる。


 ……ああ、ダメだ。それより、早く作戦のことを考えないといけない。あまりゆっくりはしてられないんだ。


 色々とまだやることが残っているからね。



「リモデル、ラプゥペ。それじゃ、話そう」


「そうだな。はぁっ……話すとしようか」


「……大丈夫かい? リモデル。やはり、速度を出しすぎたと私は思うよ。相手の人形が速度に特化したものだったとはいえ、少し出しすぎていたようにも……」


「……」


「あっ、いや……すまない。そのおかげで助かったんだし……文句を言うべきではないよね」


「いや、別に気にしなくていい。一瞬、俺が黙ったのは君が言う通り、少し疲れていたからでな」


「そう……か」



 少しと言ったが、私にはリモデルはかなり疲れているように見えるよ。こんなに疲れている姿なんて……まだ片手で数える程しか見たことない。


 家から持ってきた疲労を回復させるのに効果的な薬を鞄から取り出そうとしたが、事前にラプゥペが用意していたようで、あっという間に手渡していた。


 有能……だね。彼に執事やメイドの仕事をやらせてみたら、かなり上手くこなすんじゃなかろうか。


 彼はやってみたいかわからないけど、今度聞いて乗り気になってくれたら服を用意しようかな。


 執事服やメイド服なんて城内にいくらでもある。ペルチェに頼んで拝借して着させるのだ。


 リモデルは受け取った薬を飲むと、回復したのか汗が少し引き、顔からも疲れの色が消えた。



「……あ、ちょっと待て。話の前に結界を張らないとな。ウッカリしていた。入ってこられたら困る」


「あ、そうだね。それは私も忘れてた」



 危ないと思い、私たちは二人で協力してすぐに部屋の中に結界を張る。


 上級でないと破られると考え、上級にしたが、魔力の無駄遣いは避けたいため、扉の部分のみ強度を高めており、他の部分はそうでもない。


 故に壁を突き破って来られたりしたら困る。もちろん、床も。 強度は通常の二分の一なんだ。


 まあ、どうせすぐ出るし、いいだろう。



「さて、それじゃ話を始めよう。まず、ここで休む時間だが……二人共、五分も休めば充分だな?」


「ああ」


「は、はい。ご主人様……!」



 私は本当に彼の言う通り、五分で大丈夫だ。


 何なら、今も動けるほどには良くなった。まあ、あくまで動ける程度で戦うのとかはキツいが。


 元々、争いなど好きではないのだ。体調が良くなったとしても、なるべく争いにならないことを祈る。


 リモデルと誰かが争いにならないことも、ね。



「休んだ後、俺たちはそのままルドフィアの部屋に行こう。気配が二つ移動したのがわかった。きっと、アサとイディドルのものだ。向かえば会えるはず」


「そうだね」


「そ、そうですね……! そうしましょう」



 リモデルは私とラプゥペの返事が聞けたら、それで終わりなのか口を閉じた。


 私たちは取り敢えず、五分間の間、体力を無駄に消費することなく、その上最大限回復することができるよう、部屋の中のベッドに入り込んだ。


 このベッドは下に結界の役割も果たすカーペットが敷かれている。結界を貫通できる者が来ても、比較的安全だ。結界が二重になっているわけだからね。



「……」


「……ふう」


「……快適、ですね……!」


「思わず、声が出てしまったか。私もそうだ」



 喋らないつもりだったが、確かにこのベッドは快適。誰にも使われていない空き部屋に置くにはもったいないと感じるほどだ。喋ってしまうよね。


 私たちはそれからベッドを堪能して五分……


 背伸びをしながら、ベッドから降りる。私とリモデルはすぐ降りたが、ラプゥペは魅力に取り憑かれたのか、少しだけ迷った後に出ていった。


 具体的には五秒後。そんなに気に入ったか。


 それなら、あげてしまおうかな。どうせ、空き部屋で誰も使わないベッドだしね。


 あげてしまっても、何の問題もないと思う。



「ねえ、ラプ……」



 ラプゥペに対してベッドをあげる提案をしようとしたところ、私の鼻を謎の香りが通っていく。


 それは花の香りだった。それも私たちのよく知るアガプンスの……香りだ。何故、これが……?


 リモデルやラプゥペがこんな状況で突然香水をかけたわけではない。


 現にリモデルとラプゥペもそのことに驚いている。



「お……っ……と……?」


「……ド、ドル……くっ」


「ご主……人様、だ……だいじょ……」



 リモデルのことを心配しようとしたラプゥペが一瞬で倒れてしまった。


 毒かと思ったが、すぐに寝息が聞こえたことから眠らされてしまったのだとわかった。


 人や人形を眠らせる効果のある香り、か……


 それにしても、なんでアガプンスなんだ……


 私とリモデルは頷き合うと、すぐにここの扉を破壊するために協力して細長い『強闇槍』を生成。


 それを扉に向けて射出していった。


 もちろん、結界を解いてから……ね。


 扉はきちんと壊れ、私たちは外に出ることに成功。



「も、もう少……もう少しで、私たちも……眠って……しまうところ……だったね」


「部屋に結界を張って安心して自分の周りの結界を解いてしまったのが良くなかったな……」



 リモデルは眠ってしまったラプゥペを背負いながら、私のことを見てそう言った。



「ああ……今度から、自分周りの結界は家の中でもない限り、ずっと維持するとしよう。あと、もしも貫通してくる奴がいた時のための対策を練るか……結界の強度を上げるか……もしくはどちらも……していきたいね」


「ああ、そうだな。俺も同じことを考えたよ」



 私たちは未だ眠気を感じている体躯を引きずりながら、歩き出した。うぅ……っ……眠すぎる……


 瞼をこすり、頬を叩き、頬を互いにつねりあったり……とにかく、眠らないための様々な方法を試す。


 そういった行動のおかげか、今にも切れてしまいそうな一本の糸のような意識は……


 お姉様の部屋の直前まで……維持できた。



「リモデル、もうダメそうだ……」


「……俺は……大丈夫だ。君もラプゥペと一緒にゆっくり眠って休むといい。おやすみ、ドルイディ」


「うん。おやすみなさいだ。リモデル……」



 あぁ……本当に眠い。


 ……それにしても、リモデルはなんで私やラプゥペより効果が薄いんだ。よくわからな……


 ちょっと待て。そういえば、私も自律人形だが、ラプゥペも自律人形だったな。そのためか……?


 人形に効きやすい香水というのは普通に聞いたことがあるな。それなんだろうな。わかってよか……


 あ、ダメだ。意識が……切れるな。こ……

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