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22話【ルドフィア視点】シンゾウヲ……

「ほあ……あ」



 欠伸をして……私、ルドフィアは目を覚ました。


 外を見る限り、もう昼ね。どうやら、かなりの時間眠ってしまっていたようだわ。


 リュゼルスはどこかしら……? 気配を感じないけど……隠しているだけ……ってことはないわよね……?


 アサの気配も……そういえば、ない。


 二人とも、外出しているってことかしら? 何のために。買い出しとか……?


 わからないけど、気になるわ。確かめないと。



「んん、あー……肩が少し凝ってるし、背中も痛いわね。変な体勢で眠っちゃったのかしら。人間に近い人形だとこういうことがあるから、少し不便よね」



 はぁーあ……こういうところも、自己修復機能でどうにかなるように改造しようかしら……


 出来なくはないと思うのよね。試したことないけど。


 まあ、また今度覚えてたらやることにするわ。それより、ご飯でも食べるかしらね。お腹空いたし。



「……ん、特に残ってないわね。これは二人がいなくなった理由は買い出し……ということで確定かしら?」



 食材の保管庫を確認した物の、食べ物はなかった。ゼロじゃないけど、単体で食べることはないような調味料とかばかり。もう少し帰ってくるのを待つか……


 それとも、自分で買いに行くか……どちらにしましょうか……?


 待ちたいところだけど、何となく遅くなる気はしているのよね。かといって、自分で買いに行くのはとてつもなく面倒くさいわ。


 買い出しなんて王女がやることじゃないし、待つのがいい……かしらね。いつ戻ってくるかはわからないけど、さすがに夕方には戻ってくるでしょう。


 私はベッドに入ると、うつ伏せ状態になる。



「ふー……」



 いや、本当に退屈だわ。一人だとやることなし。


 妹のことでも、妄想しようかしら。エフィジィ、ペティー、プアップ、テディアー……


 そして、ドルイディのことを……


 まあ、散々暇な時に彼女らの妄想をしてたし、今回は前に見て一目惚れしたあのプララちゃんとラッシュくんが仲良くする姿を妄想して、過ごすわ。


 ああ、あの二人……また来てまた来て。お茶をたくさん、それに合うお茶菓子をたくさん用意して、二人が好きそうなおもちゃだって用意して待ってるから。


 新しく好きな物がわかったら、それは次の次に……ああ、まだまだ早いけど……妄想しちゃうわ。


 二人がこの館にやってきて、楽しく遊んだり、楽しく会話したり、美味しそうにお茶を飲み、お菓子を食べる姿を妄想していた私なんだけど……


 その楽しくて楽しくてはしゃいでいた私は……窓から唐突に飛び込んでくる人形を見て、表情を変える。


 敵襲かと思い、すぐに結界を張ったが、それは……


 リュゼルスの……鸚鵡(オウム)型自律人形だった。外にいる時に情報伝達用として、ごくたまーにあの子が使ってるっぽいのよ。私も貸してもらったことある。


 結構、従順でいい子なのよ。好き。


 確か名前は……何だったかしら。自分の名前から取っていた気が……あっ、『ルゼ』だわ。


 そんな名前だった。いい名前よね。



「それで、貴女はどんなことを伝えに私のもとへ来てくれたのかしら? 話してちょうだい?」


『ルドフィア、シンゾウノウゴキヲトメラレタクナカッタラ、アサノシンゾウヲモッテ、アナタノシシツニキテクダサイ。ヒガシズムマデニ。カクジツニ!』


「……」


『カクジツニ! カクジツニ!』


「……もういいわよ。あいつのもとへ帰ってちょうだい」



 久々にルゼの顔を見て、嬉しかったのに……その気持ちは今の伝言のせいで、完全に冷めたわ。


 リュゼルス……貴女、何のつもり……? 何がしたいの……? 遊びのつもりなら、全く面白くない。



「ふざっ……けんじゃないわよ。馬鹿にしてんの?」



 買い出しには行ってなかったのね。


 ……行っておけば、良かったのに。それなら、貴女にこんなに怒ることはなかったわ。


 いや、買い出しじゃなくても、何か試しているのだとしても、その内容がこんな馬鹿げたものでなければ、ここまでお腹の底から怒りが湧いてくることなんてないわよ。リュゼルス……会ったら、殺してやるわ。


 拳を握り、私はそれを自分が座るベッドの真横に叩き落とした。


 ベッドが軋む音……叩きすぎたかしら? いや、そんなことはない。私の怒りが力に変換されるのなら、もっと……ベッドが壊れるほどの力が発揮されて……然るべきだと思うわ。あぁ……っ……本当に腹立つ。



「取り敢えず、アサのことは捕まえ、心臓も握りとってやるわ。その言うことは……聞いてあげる」



 本当に私の人工心臓が握り潰される可能性はあるしね。胸の少しの違和感……それが教えてくれるわ。


 今の伝言を聞くまで……気づかなかったけど。



「言うことは……聞くけど、それで部屋にやってきた時、貴女の心臓を逆に奪い取ってやる。覚悟しなさい」



 シーツをギュッと握っている手……それを持ち上げられず、強く……強く掴んでしまう。


 怒りの発露が……終わらせられない。



「ダメよ……ダメ。私、自分を抑えないと」



 やっとのことで自分の中の怒りを抑え込んだ私は、立ち上がると部屋から飛び出した。


 まずは、他の部屋の食材保管庫を見に行くわ。


 やはり、人間に近い人形である以上、お腹が空いたなら食べないと力が出ないのよ。仕方ない。


 残っているといいけど、残ってなかったら……買いに行かないといけないわね。面倒くさいわ。



「……」



 こういう時に多機能付きのボードを使えればいいんだけど、あれの使用権限が私にはない。


 ボードを叩いても、何の反応もしないからわかった。本当に何なのよ、あの女。


 なんでこんなことをするのか理解できない。私を苦しめたいだけなのかしら。


 もし、そうなら嫌な女すぎるでしょ。そんな女だとは思っていなかったわ。本当に。最悪。


 面倒くさがりながらも、他にある食材保管庫……三つを全部探したが、そのうち二つは何もなし。


 だけど、最後の一個……入口近くの広間にある食材保管庫にはおつまみ用として置いていた干し肉が。


 それだけしかないのは不満だけど、まあ食べ物であって、その上美味しい物なら別にいいわ。


 私は食べながら……


 あと、リュゼルスへの憎悪を強めながら……『不思議の館』から外へと勢いよく出ていった。

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