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21話【オブセポゼ視点】面倒くさい質問

 オレの名前はオブセポゼ。


 ファルナーメ、とかいう男の体を乗っ取った後、協力者の狸であるラクーヌと合流。


 今はオトノマース王国の王城……そこのルドフィアという第一王女の部屋……の隠し部屋にいる。


 ここ、彼女が創ったらしいんだけど、中々に凄い。


 ちなみにこの部屋の存在と第一王女自身が部屋を創ったということを教えてくれたのはオレの隣に座っている……リュゼルスハイムという女だよ。


 どこかで聞いたことがある名前だと思ったら、どうやらオトノマースと同じ人形国のルィスティヒ人形国の王女様らしい。凄いよね。


 王女様のような高貴な人がオレたちの手伝いをしてくれるなんて光栄なんだけど、なんで手伝ってくれるのかは教えてくれないんだ。何度、聞いてもね。


 まあ、別に知らないと困るということも特にあるわけじゃなし。だから、いいんだけどもね。



「あ、リュゼルス様。アンタがアサとやらに付けた『位置情報発信器』、どうやら壊れたみたいだよ」



 この王女様、とある男の自律人形に位置情報がわかるように発信器ってのを付けてたんだよ。


 球体のヤツ。ちなみにこれが壊れると、オレたちが持っている似てる見た目の球体……それが青と赤に点滅する。何故、点滅するのかと聞いたら、『面白いでしょう?』だってよ。確かに面白いよね。


 その言葉を聞いた時、オレはこの王女様は中々に面白い人形なんだと思って、組めることに喜びを感じたよ。マージで嬉しい。見た目もかわいいしねー。



「本当ですの? それは大変ですわね」


「まるで他人事みたいな言い草だな。壊れたんだぞ?」


「まあ、これでわたくしたちはあの子の場所がわからなくなりましたが、それでもあの子ならきっと自分でやってきますわ。心配なんていりませんことよ」


「へーえ。ま、オレたちは高貴な人形の心臓が手に入れば、何でもいいんだけど。ね? ラクーヌ」



 オレが尋ねると、ラクーヌは久々に口を開いたよ。こいつ、オレや王女様と比べると無口なんよな。



「……本当に高貴な人形だったら……な。王女様、何度も聞くようで悪いが、本当にアサとやらは高貴な人形なのか? オトノマースの王族にそんな名前の人形……いないよな? 今さっき確かめたんだが……」


「……あれ? そうですか? 間違えた情報を掴んだのでは? きちんといらっしゃいますよ。アサという名前の王族は。アサ・ペンデンス・オトノマース。ふふ」


「ふざけているのか? オラはオブセポゼと違って、冗談は通じないんでな。真面目に話せ」



 ラクーヌは近くにある机をバン、と力強く叩いた後、王女様に詰め寄っていったよ。怖いね。



「……ふふ、そんなに怒らないでも。ほら、さっきわたくし、お茶っ葉を持ってきたと言ったでしょう? 今、入れて差し上げますので少々お待ちください」


「そうやって答えを逃れようとするな」


「……そうですわね。逃れようとしてます。わたくしにとってはとてつもなく面倒くさい質問ですし」



 面倒くさい質問か。まあちょっとわかる。


 でも、オレもラクーヌと同じくその質問の答えが気になるんでね。答えてもらいたいと思う。



「……認めるのか」


「はい。認めます。まあ、でもそんな面倒くさい質問にもお茶を入れた後になら答えて差し上げます。なので、お二人はもう少しそこの席にてお待ちになって」



 本当にお茶を入れた後にはちゃんと答えるのかよ。ちょっと怖いぜ。オレは。


 ラクーヌがガチギレしてしまわないか……怖い。


 ガチギレしたら止めないとな。物凄い面倒くさいんだけどね。うーん、止めれっかな……



「……何分で出来るんだ?」


「せっかちですわね。五分もあれば、出来ますわ」


「五分か。まあ、十五分とかじゃないなら、別にいいか。わかった。待つ。嘘だったら許さんぞ?」


「そんな嘘は吐きませんわ。あ、そうだ。何のお茶っ葉がいいですか? 色々な種類のお茶っ葉を持ってきていますので、今ここで選んでください。五種です」



 そう言ってリュゼルス様が見せてきた茶葉は全部色が違った。ひえー、茶葉ってこんな見た目違うんだ。


 オレ、茶なんて飲まないし、全然知らなかった。見た目も違うし、味も大違いなんだろうな。


 少しだけ興味が出てきたし、飲みたいかも。


 さーて、どれを選ぼうかな。



「……これがオススメですわ」



 リュゼルス様が勧めてきたのはどうやら、ルィスティヒ王国原産の茶葉だって。


 少し甘めの仕上がりになるから、甘党なオレら二人にはいいんじゃないかということらしいよ。


 オレらが甘党だってこと、出会った時に軽く言っただけなのによく覚えてたね。凄いわぁ。



「あ、でも、甘いとは言っても他の茶葉と比べると……って感じですわ。砂糖ほどではありません」


「……えー、そうなんだ。ま、別にいいよ。オレはそこまでの甘さ求めてないしな。ラクーヌもだろ?」


「……ああ。オラもそこまでは求めてない」


「良かったです。では、早速入れますね」



 トクトクと入れる様をオレはじっくり見ていたよ。


 ま、気になるっていうのもあるし、今後オレも自分で入れたいなー……ってそう思ってね。


 自分一人で飲む時もあるだろうしー……女の子と飲むことだって……これからあるだろうしねー。


 それから、二十秒。お茶を入れ終わった二つのカップをリュゼルス様はオレたちの前に置いてきた。


 二十秒とか入れるのに時間かけすぎでしょ。もしかして、ここでも少し時間稼ぎしてたとか?



「……おー、美味しい。勧めるだけあるねぇ」


「……美味い。まあ、オラの国の茶の方が美味いが」


「ラクーヌさんの国では美味しいお茶があったのですね。是非、お飲みしたかったです」


「オラの国が滅んでいることは知ってるだろ。飲ませられないよ。あ、これ以上この話続けるなよ。これ以上、やられたら、オラは確実に機嫌が悪くなる」


「申し訳ございません。では、話……ですわね?」



 ラクーヌが頷くと、リュゼルスはパン、と手を叩いた後にラクーヌのことを見ながら口を開いた。


 今の手叩きはなに? 気持ちを切り替えるため?


 よくわからないけど、取り敢えずオレもラクーヌと一緒に聞く姿勢になっとくわ。大事なことだし。



「……アサという名前の人形はオトノマースの王族の中にはいないのか……とのことですが、まあ確かにいません。別の国の王族……というわけでもありません」


「なら、なんで高貴な人形などと嘘を吐いた?」


「嘘ではありませんわ。高貴な人形ではありますのよ。彼は第一王女であるルドフィアによって、王族とほぼ同じ部品を使って作られているのですから。まあ、自己修復機能などは搭載されていませんが……ね」



 自己修復機能が付いてないのね。


 その意味ってなんなんだろう。あ、もちろん聞かないぜ。リュゼルス様はそれも話すだろう。



「……貴方たちが言う『高貴な人形』には高貴な方が高貴な人形と同じ部品で作った物も該当すると言っているのですわ。おわかり……いただけたでしょうか?」


「……なる、ほどな。それが本当なら、疑って悪かった」


「いえいえ、わかっていただけたのなら、良かった。それで、貴方たちはまだ……質問、ありますわよね?」


「……ああ、よくわかったな。それで、質問というのはいくつかあるが……まず、あの子ならきっとここにやってくるとか宣っていたが、そのアサとやらは一体どんな手段を使ってここに来ると睨んでいるんだ?」


「そーれーは、答えられませんわ。お楽しみです」


「答えるって言っていなかったか?」


「答えられる質問と答えられない質問がありますわ。他にも聞きたいことはあるのでしょう? 他の質問にしてはいただけませんか? それなら、お答えします」



 ラクーヌのことだ。それぐらい、答えろよ……とでも思っていそうだね。あ、オレは違うぜ。


 これはさほど重要なことじゃないし、オレとしては別に隠されていてもいいかも。


 というか、隠していてほしいわ。オレも。楽しそうだしな。オレがリュゼルス様でもそうしてた。


 不服そうだが、まあいい……と思ったんだろうね。声を荒げて聞かせるように迫ってくることはなく……


 そのまま、次の質問に入ったよ。良かった。



「……リュゼルス……様。貴女はオラたちの目的をなんで手伝っている? 何を企んでいる?」



 そう来たか。これは期待だ。


 ラクーヌが聞かなきゃ、オレの方から聞こうと思っていたりしなかったりしたぐらい気になる質問だわ。是非是非答えてほしい質問だね。本当に。


 どう答えるかと思ってワクワクしていたら……



「ふふ……」



 リュゼルス様は机に置かれたカップを回収しつつ、こちらを見ながら笑ってその答えを言った。

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