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18話【ドルイディ視点】薬屋ディエスへ

 (ドルイディ)とリモデルはファルを捜していて見つかったアサを助けるため、薬屋に行くことに。


 アサは別に重篤ではなさそうだが、この後にファルのことを助けに行くことも残っている。


 ゆっくりすることなどできないということで、私とリモデルはかなりの駆け足で向かっていったよ。


 財布の中身は歩きながら確認。先程落としたり、妖魔人形によってどさくさに紛れて盗まれることはなかったため、充分に買えるだけのお金がある。


 良かったよ。少しだけ心配だったのでね。



「昼の時間帯だが、人が少なめだな。さっきの霧と妖魔人形のせいだろうか……? 通りやすいのは良いが」


「そうだろうな」



 この場所が少ないだけで、霧の被害が少ない場所に関してはきっと人も多いんじゃないかと思う。


 それにしても、結局妖魔人形はアサで何をしたかったんだ……? なんで連れていくことを阻止しようとしたのだろう。かなり、気になってしまっている。


 妖魔人形が次から次へと出てきたことも、どこから出てきたのかも……何もかもが謎である。


 何か未知の能力か魔道具を有している可能性が浮上してきた。今はファルの救出や奴らの捜索が目的ではないが、警戒心は依然として変えずにいよう。


 薬屋は予想通り、客が全く来ておらず、暇をしたと思しき店主はうつらうつらとしていた。


 眠っていなくて良かったよ。起こすのは手間。


 この店……『ディエス』には前にも来たことがあるんだが、こんな店主だっただろうか。


 記憶が朧気だが、違ったような……前の店主の父親? 知り合い? 兄? 従兄弟だろうか……?


 まあ、別になんだろうといいのだがね。



「あの、これとこれとこれ。頂けるかい?」



 私とリモデルは協力していくつか薬を持ってくる。


 麻痺治しだけのつもりだったが、他にも買っておきたいと感じる薬がたくさんあってね。


 二人でたくさん持ってきたよ。十五個もある。


 一つはもちろん、麻痺治し。二つ目は呪いの進行を抑える薬だ。治せる物があれば良かったが、なかったのでね。安価だったし、買うことにしたのだ。


 どちらも五個ほど買っている。残りは人形に使える毒治し五個だ。毒には別になっていなかったように思うが、こちらも呪いの進行を抑える薬と同様、安かったために買っておいた。家には置いてないしな。



「……おお、えと……」


「金貨一枚で足りるだろう? 置いとくね」



 目覚めてはいるようだが、少しぼーっとしているようで計算に時間がかかりそうだった。


 それ故に私はリモデルの財布より手渡された金貨を店主の目の前に置いた。


 店主はそれを受け取って、自身の後ろの引き出しに仕舞うと、目を擦った後に私たちを見る。



「ええとぉ……アンタらは……姉弟? 親子?」


「ん、ああ……そういうことを聞くか……」



 まさかの質問に驚いてしまう。



「恋人だよ。店主」


「……?」



 首を傾げている。老人であるが故にちゃんと聞こえてないらしい。


 その後にリモデルに近づくと、頭を撫でようとしてきた。


 何をするのかと思ったら、まさかそうするとは。



「お、おお……?」


「ああ、悪かった。結界を張っててな」



 撫でられないことに気づいて驚く店主のことを見て、リモデルはすぐに結界を解除した。



「リ、リモデル!? 解くのかい?」


「大丈夫。敵意はない。感じるのは好意だ。好意を向けてくれる相手の前で結界を張り続けるのは無礼だろう。それに、もし危険があっても俺なら問題ない」


「……そうだね。ごめん。悪かった」



  店主は私たちが話をしているのを聞いて目が覚めたようだ。しっかりと目が開いているのを確認した。



「ああ、なんか……悪かったな。兄ちゃん、その感じだと見た目が子供っぽいだけで実は大人なのかい?」


「……まあ、そんなところだ。よくそうやって見られるし、店主さんは別に気に病む必要はないよ?」



 そう言ってウインクと笑みを見せるリモデルは素敵だった。


 とある箱のせいで子供になっているなどと言っても本当であると信じてもらえないだろうし、とても良い誰も傷つくことのない嘘をつけていると思うよ。


 既に他人に分けられるほどの好意を彼に抱いているというのに、それが更に増幅するのを感じる。


 彼にそう言われて店主は少し照れた後、私のことも見た。ジロジロと。何か付いていただろうか?



「お嬢さん、よく見たら……前に会ったような気がするな。既視感がある。名前は一体なんだい?」


「……ドルだ。苗字は言えない。ドル、とそう呼んでほしい。ここにはかなり前に兄と一緒に来たことがあるんでね。それで見たことがあるんじゃないかな?」


「……なーる……ほど。わかった。どちらも何かと事情がありそうだな。これ以上、個人情報みてぇなのは深くは聞かねぇでおくよ。色々と悪かったな」


「ああ、別に気にしないでいい」


「いやいや、さっきは酒のせいもあってかぁ……お前さんらにはダル絡みしちまったろ。何か欲しい物があったら、一つおまけしてやるよ。何がいい?」



 ダル絡み……ダルいと感じてしまうような絡み方……のことだったか。自分でそう思っていたのだな。


 欲しい物……欲しい物か。どうしよう。何が……って何を普通に私は貰おうとしているのだ。


 王族であるというのに、貰える物は貰っておこうなどという考えが入ってしまうとはね。


 私は頭を振って、その考えを消そうとする。


 ……これは兄弟の影響かとも一瞬思ったのだが、よくよく考えたら、私の製作者がそういう性質を持っていたよ。そのせいでそうなっているのかもね。



「何もいらないよ。その気持ちだけで嬉しいさ」


「いや、そういうわけにいかねぇよ。何か持っていってくれ。欲しいもんとか言ってくれよ」


「……そう言われてもね」



 そこまでして何かあげたいのか。入ってきた時と大分印象が違うよ。まるで別人のようだね。


 私がどうしようかと考えこもうとしたところ、リモデルがそれを手で制止して、前に出てきた。


 そして、ニッコリと笑うと、店主に対して言う。



「それなら、そこの香水を頂けるか? それ、好きな香水でね。先程から欲しいと思っていたんだ」


「そんなんでいいのかい? じゃ、持ってってくれ」


「良かった。ありがとう。では、また」


「ああ、また来てくれよ。素敵なお二人さん」



 店主が笑顔で手を振ってきたので、私とリモデルはそれに対して振り返しつつ、店の入口に向かった。


 確かにいい店だ。以前見た時もそうだったと思うが、今でも変わらずに品揃えがよく、店主も前にここに来た時と同じように良い印象を受ける。


 機会があったら、本当にまた来たい。


 もちろん、リモデルと一緒にね。そう思った。

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