15話【ドルイディ視点】『ミツケラレーダー(改)』《2》
プララとラッシュが『ミツケラレーダー』を改良している間、私とリモデルとイディドルは彼らが製作した様々な人形をじっと鑑賞していた。
私は改良しているところを見たかったのだが、彼らが『ミツケラレーダー』よりも人形の方を見てほしいと言ってきてね。仕方なく、そうすることにした。
まあ、でも非常に楽しめたよ。
人形の数々は彼らが創った隠し部屋に展示させられていたんだけど、その種類は百種類はあった。
自律人形だけでもかなりあったが、土塊人形や木製人形のような魔力充填式の人形もあり、初めて見るような電力充填式の人形まで見ることができた。
それだけではない。飾りとして最適なバブシュカ人形という木製の人形もあるし、規定の時間になると飛び出して時間を教えてくれるお知らせ人形もあった。
これらはどれも私が今までの人形生で見てきた人形より、材質、性能……共に優れていた。
プララが触っていいと言っていたからね。触って確かめたことにより、それがわかったんだ。
いやぁ、見るだけでなく触れて良かったよ。
「ふぅ、終わったのだよ」
とある一体の自律人形を見つめていたら、背後からやってきたラッシュが私の肩を叩いてそう言った。
「あ、終わった? 良かった」
「うん。もう戻ってきていいのだよ」
「ラッシュ。どれも本当に良い人形だったよ。見せてくれてどうもありがとう。感謝する」
「いやいや、こちらこそ見てくれてありがとうなのだよ。楽しめたようで本当に良かったのだよ」
その言葉を聞きながら時間を確かめたが、どうやらプララとラッシュの『ミツケラレーダー』の改良が終わるまでは三十分ほどかかっていたようだね。
まさか、そんなに経っていたとは。まだ体感時間的には十分くらいだったため、驚きだね。
それだけ、見入っていたということか。
私は人形を褒められて照れているラッシュをかわいいと思いながら、元の部屋に戻っていく。
少し名残惜しいと思うほどには良かった。また来た時にもう一度見せてもらおう。そうしよう。
「これがその『ミツケラレーダー(改)』なのだよ」
ラッシュが机に置いたそれを私はじっくりと見る。
うむ。どうやら、携帯しやすくするためか、少し小さくなっているな。見た目も変わっている。
格子の模様は変わらず、表示される点の色も変わらないが、レーダーの上部にボタンが付いていて、背部に輪が付けられている。私の腕ほどの大きさ。
もしかして、腕に装着して使える……と?
私のその考えを当てるようにプララが言う。
「その輪っかは腕に嵌めるのですよ。腕輪として使えていいですよね? いいと思いませんか?」
「思うよ。とてもいいと思う」
私はプララが渡してきたので、実際に腕に嵌めてみる。ピッタリだ。
「……これって、私のためだけに付けた輪っかなのかな? 私はピッタリだが、リモデルは嵌められないよね?」
私とリモデルでは腕の太さが異なる。
私と同じ太さの腕を持つイディドルなら問題なく付けられるとしても、リモデルが付けられない。
リモデルにも嵌められるようにしてほしい。
「安心してもらっていいのですよ。これは伸縮するように出来てるから誰でも嵌められるのですよ!」
自慢げにプララはそう言うと、私の腕に嵌められていた腕輪を外し、リモデルの腕に嵌めた。
まさか、勝手に外すとは。言ってくれれば、私から渡すのに。せっかちだな。まあ、いいが。
目を輝かせるプララにリモデルは笑いかける。
「ありがとうな。プララ、それとラッシュくんも。ちゃんと俺の腕にもピッタリだよ」
目の輝きがリモデルの発言により増した。今のリモデルの発言がとても嬉しかったってことだね。
ラッシュもプララほどではないが、嬉しかったようだ。口角が上がっていたからね。
……たまたまだが、見えたんだよ。
「それで、この上部のボタンは一体なんなんだ?」
「……ああ、それは捜したい人物、または人形の香りや指紋が付いた物を入れるためのボタンなんだよ」
「ボタンの中に入れる……ってわけじゃないよな?」
「説明不足だったのだよ。あのね、ボタンを押すと、レーダーが変形して、箱の形を成すから、その箱の中に証拠となるような物を入れればいいのだよ」
「なるほど」
「今のでちゃんとわかった?」
リモデルが頷いた後に、ラッシュは私とイディドルのことも見てきたので、同様に頷く。
わかりやすい説明だったので、ちゃんと理解できたよ。
説明が伝わってホッとした様子のラッシュは、私たちに少し待つように頼み、保管庫に向かう。
保管庫から食べ物でも取り出すつもりなのかと思ったが、透明の被せ物(?)を取り出していたよ。
レーダーと同じ形……レーダーに被せる物かな。
「これは盗難防止用の被せ物なのだよ。結界を張らなくても、これを被せておけば盗られなくなるのだよ。持ち主以外が触ることができなくなるから」
「へえ……えっと、無料で貰っていいと?」
「もちろんなのだよ。お代なんていらないのだよ。そんなに手間もかからなかったし」
「……レーダーの方は……?」
「レーダーに関しても無料でいいのだよ。あっ……いや、そうだね。リモデルさん、質問していい?」
「質問……?」
リモデルに質問か、私というわけではなく……
ラッシュはプララがいつの間にか淹れてくれていたコーヒーをリモデルに手渡すと、質問を始めた。
「リモデルさん。第二王女様とデートしたりした?」
「……そういう質問か。なるほど」
「うん。それに答えてくれれば、渡すことにするのだよ。ねーたんも気になるのだよね?」
「気になるのですよ。あ、でも嫌なら他の質問でもいいのですよ? 恋愛関係の他の質問をするのです」
「……したよ。子供になる前もなった後もね」
リモデルは咳払いをすると、そう答えた。
恥ずかしさをすぐに隠せて凄いな。
そういうのを隠すのは人形である私の方が向いているのが道理だが、私は未だ恥ずかしさが顔に出ている気がするよ。そっぽを向いて、隠させてもらう。
……その後、リモデルだけでなく、私もラッシュたちから恋愛関係の質問を大量にされるのだった。
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