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56話【ドルイディ視点】お父様(国王)への報告

次が二章の最終話です。

 ルドフィアお姉様は欠伸をして目覚める。


 その挙動に何故か懐かしさを感じて、少し嬉しくなりながら……私は彼女に欠伸をしてはいけないことを伝えた上で、この城にやってきた理由を伝える。


 城に来た理由は睡眠前にも伝えていたけど、覚えてないこともあると思って改めて伝えたんだ。


 すると、「覚えてる」とのこと。それなら、良かったよ。彼女の言葉なら比較的信用できる。


 私はお姉様が少し考えたところを見た後……



「……入ろう?」


「そうね」


「入ろ入ろ。とっとと入ってとっとと報告をして、父さんのことを安心させちゃお」



 私はお姉様とディエルドと手を繋いで、三人で共に扉を叩きながら、お父様のことを呼んだ。


 お父様なら、すぐに返事をくれるのだが……忙しかったのか……いつもより遅く返事が来た。



「……入れ」



 私は二人と顔を見合わせると、扉を開けた。


 中にはすっかり痩せ細るお父様がいた。


 なんか……想像以上に疲れていそうだね。


 再び二人と顔を見合せた後、私は聞いた。



「あの……お父様……ディエルドと協力してお姉様を無事に救出することができました。お父様……?」


「……ん……ああ、って……なっ!?」



 ビクリとお父様は驚いたように跳ねた後、こちらを見てまた跳ねた。二段階跳躍である。


 よほど驚いたのだな。お父様のこんなところは中々目にすることはできないと思うよ。


 きっと……お姉様のことが気がかりで……今まで何も手につかなかったのだろう。


 あの顔を見る限り、そうとしか思えない。



「……ルドフィア……ルドフィア……なのか?」


「はい、お父様……ルドフィアです」


「そうか……ルドフィア……よくぞ生きて……無事に……ここに戻ってくれた。嬉しく思うぞ」



 痩せこけていた頬はそのままだが、瞳に光が宿ったように感じないこともない。


 声も明るくなっている。やっぱり、ルドフィアお姉様のことが心配でこんな姿になっていたんだな。


 戻ってくれそうでよかったよ。


 嬉しそうなお父様の姿を見ているだけで……私も、つられて非常に嬉しくなってくるよ。


 実際に似たような笑みを浮かべながらお父様を見ている私の横でルドフィアお姉様は言った。



「お父様、ご心配をおかけして、大変申し訳ございませんでした。今後はこのようなことがないよう、より一層警戒心を持って生活すると誓いますわ」


「いや……悪いのはお前を攫った者だと儂は思うよ。警戒心を持って生活することは大事だが、精神をすり減らすことのないようにな。これは国王というより……ルドフィア……お前の一人の父としての言葉だ」


「……その言葉、常に留意して生活いたします」



 まだ硬い態度だね。まあ、私も大概だが。



「……ああ、下がって良いぞ。今日はもう……ゆっくり休め。ドルイディ……ディエルドも同様にな」



 それはお父様に私が言いたいと思っている言葉でもあるよ。お父様もゆっくり休んでね。



「はい、父上」


「うん、ゆっくり休ませてもらうよ」



 私はディエルドと共にそう答える。


 ちなみにこの城の自室でゆっくりしてほしいという意味でお父様は言ったのだろうけど、リモデルが待ってるし、私は彼の家で休むつもりでいるよ。


 休むという言葉に偽りはないから、わざわざそのこと(リモデルと寝ること)を伝えはしない。


 お父様が下がるように言ったので、私たちは三人とも最後に頭を下げると退室した。


 顔が明るくなっていたし……これで回復してくれるんじゃないかな。そうなることを願う。


 私は三人で退室後、少し話がしたくて移動する。



「お姉様、これからどうしていく?」



 今はまだ昼だというのもあるし、お姉様は先程まで眠っていたわけだから、もう一度眠るのはキツいんじゃないかと思ってのことだ。



「取り敢えず、部屋に戻るわ」


「……そうなんだ。眠るの?」


「いや、さっき眠ったばかりだからか、あんまり眠くはないのよね。休眠状態にもしない」


「まあ、休眠状態になったら、自発的に目覚めることが簡単には出来ないからね。うん」


「そういうこと。ちゃんと休みはするから、心配いらないわ。二人は行きたいことがあるから、部屋には戻らないんだっけ? 聞いてもいい?」


「えっ、あっ、オレは部屋に戻るよ」



 ディエルドはそう言った。


 まあ、貴方も少し眠そうだったしね。


 私は彼を一瞥して、心の中で軽く苦笑した後に……ルドフィアお姉様に返答した。



「私は城の外に行くんだ。ちょっと……会いたい人がいる。いつか……紹介するから待ってて」


「……へえ……わかった。待ってるわ」



 ルドフィアお姉様は館で見た複製人形と思しきお姉様とは違う……気味悪さのない純粋な笑顔を見せる。


 何度も言うが、本当に嬉しいことだ。


 館に行って、宝だけ持ち帰ることができても、さほど嬉しくはなかっただろうよ。


 ここまで嬉しいと思えるのはルドフィアお姉様を連れて帰ることが出来たからだ。


 本当に……良かったと思っているよ。


 私はディエルドとルドフィアお姉様と手を振って別れると、少ししてから城の外に出た。


 尾けられることはないと思っているが、二人に見られるのも嫌だと思ってのことである。



「……あっ、リモデル……!」


「待ってたよ」



 城の門から出て、少し歩いたら一瞬だけ見えた彼の魔力の色……可視化させたのだ。一瞬だけ。


 それで、近づいたら笑顔で待っていてくれたわけだ。嬉しいね。私も笑顔になる。



「そんなところで待たせちゃって、本当にごめん」


「いやいや、俺が好きで待ってたんだから、全く気に病むことはないさ。それより、ドルこそ大丈夫か?」


「え、なんで……?」


「いや、少し予想より時間がかかったからさ。何か中であったのかと思っただけだよ」


「あー、報告自体は割と早く終わったけど、その後に城内でお姉様やディエルドと話をしていたから、遅くなってしまっただけだよ。全く問題なし」



 私がそう言うと、リモデルはホッとしてくれる。


 良かった。胸を撫で下ろしてくれているところから、本気で私のことを想ってくれているんだということが……これでもかというほどに伝わってくるから。



「帰ろ、リモデル!」


「ああ、そろそろお腹も空いてきたしな。買ってある食材で何か作って食べるか」



 私はそれに首肯した後に、笑顔を浮かべたままで……大好きな彼と共に帰路を歩いた。

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