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55話【ドルイディ視点】お父様のもとに向かおう

 私とリモデル、ディエルド、プララ、ラッシュは不思議の館から完全に脱出することができた。


 しかも、当初の目的であるルドフィアお姉様奪還も叶った。とても嬉しい……とても嬉しいことのはずなのに、まだ気持ちがモヤモヤしているのか……


 私は心から喜ぶことができていなかった。


 表情に関しては、笑顔にしたつもりだけど……心は本当に真反対だったんだよ……


 リモデルは……気づいてくれていたと思う。


 こちらを見て……何か言いたそうだったし。



「……」



 それは今もだよ。私たちはあの館から出て、そろそろ三十分が経過すると思う。


 目的地である城にも、もうすぐ着くだろう。



「……なんか喋りたいのだよ」


「喋りたいのです。無言だとつまらなくないですか?」



 プララとラッシュが……十分ぶりくらいに口を開いた。十分前も同じことを口にしていた気がする。


 悪いね。何も喋らないと不自然だよね。


 私は顔を振って、自身の口角などを弄って平静を装うと、彼らのことを見ながら話を始める。



「プララ、ラッシュ……『ミツケラレーダー』のことだけど、ありがとうね。とても役立ったよ」


「それなら、良かったのですよ」


「ぼくも良かったと思うのだよ。何か問題点……というか直してほしいと感じるようなところはあったかな? あったら、正直に教えてほしいんだよ」



 問題点か……やっぱり、全くないとは言えないけど……わざわざ直すほど問題もなかった気がするから、『ない』と答えていい気がするね。



「……ないよ。あと、もういいや。返す」


「別にもうあげる気だったのですが、いいのですか?」


「確かに便利なんだけど、元々は貴方たちの物だから。借りた物という認識があるし、返したいんだよ。また改良した時には教えてもらいたい」


「……そうなのですか。なら、わたしが受け取っておくのです。ラッシュと頑張って改良しますね」



 プララちゃんは私から『ミツケラレーダー』を受け取った。釈然としない顔で。


 ……受け取っておく選択肢もあったね。


 でも、たくさんあの館で魔道具とかも手に入れてしまったし、いいかと思ったんだよ。


 あ、ちなみにその魔道具とか中身のわからない宝箱は事前に家に戻って置いてきたよ。


 あんな物、持ちながら報告できないしね。



「……もう、着くね」



 城の前に着いた。


 リモデルは王族でないために中に入ると、怪しまれてしまうので、離れた場所で待機することに。


 今後、彼と一緒に入りたいと思うこともあるだろうし、変装技術も覚えてもらおう。


 私も別に知っているわけじゃないから、一から勉強して知識を得てからになるけど。


 あと、アガプンスの花言葉についても聞けていなかった。知らなかったなら教えたいと思っていたわけだし、姿が見えなくなる前に聞いておこう。


 私は城から距離を取っていくリモデルに大声で声をかけた。まだ声は届くはず。



「ねーえ、リモデルー!!」


「なんだー!?」


「アガプンスって知ってるー?」


「……聞いたことと見たことはあるな! また後で家にいる時に詳しく聞かせてくれ!!」


「わかった!!」



 全然問題ない。知っているのかどうか知りたかっただけで元々後で教えるつもりだったし。


 良かった。知らなくて……


 後で私がゆっくり教えてあげないとね。


 表情には出さないように心がけたつもりだが、今ので頬が緩みきっていたらしい。


 プララに軽く笑われた後に「幸せそうなのですね」と言われてしまった。恥ずかしい……


 そして、ラッシュから質問をされた……これは私の表情に関することではないようで……



「ね、ねえ……二人って同棲しているの?」


「あ、そ……そうだよ」



 全く言ってなかった。そうだよね。知らないよね。


 ここで否定しても……どうせ、もう見抜かれてるわけだし、隠さないでおいたよ。


 この子たちはその情報を使い、私たちを窮地に追い込むような子じゃないし大丈夫だと思う。



「そ、それより……入ろう」


「そうですね」


「そうだね」


「おーい。ちょっと待ってよー」



 ん……? 後ろを見たら、ディエルド。


 ルドフィアお姉様のことを抱えながら、汗をかいて必死で追いかけてくる。


 いないと思ったら置いてきてしまっていたのか。なんで着いてきていなかったんだ?


 というか、いつからいなかった?


 物凄い汗をかいているが、それだけ走ってよくルドフィアお姉様は目覚めなかったな。


 起動はさせていたと思うんだが……



「……ディエルド、なんでいなくなっていたんだ?」


「ちょっと街の人に話しかけられたりしてさー。ごめんね。オレ、モテちゃうみたいなんだよねー」


「はいはい。じゃあ、そろそろ城に入るよ」



 なんてことない理由だった。聞いて損した。


 何か危険な物でも見つけたのかと思ったよ。


 私は横を通過していく騎士や門番などに挨拶をしながら、城の中へと四人で入っていった。


 入る前に会えて良かったよ。お父様からルドフィアお姉様を探すのを頼まれたのは私だけじゃないからね。私一人で報告してしまうわけにはいかない。



「じゃあね」



 プララとラッシュとは入ってすぐに別れた。


 私やディエルドが早く別れたいと思っていたからそうなったわけじゃない。


 彼女たちが早く部屋に戻って寝たいと言ってきたためにその意思を尊重し、すぐに別れることにしたんだ。


 別れる時に彼らは私たちに二言……


 『基本的に自分たちは部屋を離れることはない。離れることがあるとすれば、今回みたいに何か頼み事をされた時やトイレに行く時ぐらい』……


 あと、『一緒にいて中々に楽しかったし、また気軽に部屋にやってきてね。頼み事だってまた聞くよ』と言っていた。そう言ってくれると嬉しいね。


 別れる直前の瞼を擦る二人に私は軽くときめいた。


 隣のディエルドも同じように瞼を擦っている。こちらには姉弟と違ってときめかないよ。



「……さ、私たちは早くお父様のもとに」


「うんうん。そーだよね〜」



 ディエルドは欠伸をすると、私と手を繋いでお父様がいると思われる充填室へと向かう。


 私たちにお姉様の捜索を頼んだ時も同じ部屋だったね。


 お父様は早朝以外にあの部屋に行くことはあんまりないから、珍しいな。


 それだけ、疲れているということだよね。


 道中で出会ったメイドのマルアと執事のペルチェが現在地を教えてくれたのだ。間違いない。


 何かしら話を振られると思っていたけれど、静かなディエルドをチラチラ見ながら歩き……


 私は充填室の前へとたどり着いた。



「……お父様の前で欠伸したりしないでよ?」


「ふぁ〜い」


「……寝るなんて以ての外だからね?」


「ふぁ〜い」



 ……耳から声がすり抜けているんじゃないだろうか。聞こえているように全く見えない。


 耳元に息を吹きかけてみたら、身震いした後に「何するのさ、ドルちゃーん。でも、ちょっと良かったよー」などと言う。この男にはご褒美だったか。


 ちゃんと聞こえていたか心配なので、私が言ったことを復唱させてみた。


 言えないと思っていたが、案外ちゃんと聞いていたようで普通に復唱できていたよ……



「……それなら、お姉様を起こすのもお願いね」


「あいあ〜い」



 ディエルドは、私の言うことに気の抜けた声で返事をすると、お姉様を床に降ろして……


 その肩をユサユサと揺らすのだった。


 既に起動させているので、まあそれで起きてくれるだろうね。お姉様ならば。


 お姉様が起きたら、お姉様にも部屋に入ったら欠伸をしないように伝えないといけないね。

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