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49話【ルドフィア視点〜リモデル視点】『顔穴封』

 ……おかしい。おかしいおかしいおかしい。


 あんなボタン……私は知らない。この部屋にあるボタンは天井の物と奥にある一つだけのはず。


 間違って付けたなんて話は聞いてないわ。


 一日前にここに連れられて来た時、ボタンは天井と奥にあるあのヘンテコボタンの二つだけって確実に言っていたの。あれは何かを隠すための嘘……?


 どういうことなのかわからず、困惑だわ。


 私はボードを使って、リュゼにそのことについて尋ねようと思ったわ。なんかわからないけれど、あのボタンを押されたらとんでもないことになるんじゃないかという気がしてならなかったからよ……!


 だけど……リュゼは何も反応しなかった。私が何度も呼出(コール)しても完全無反応。


 あいつ……何のつもりだっていうの……?



「……っ……なんで返事しないのよ……?」



 このボードの教えられた連絡機能をきちんと使っているのよ? 無反応なんだけど?


 まさか、用を足しているとでも?


 段々とイライラしてきたけど、もちろん妹たちがいる手前、舌打ちなんかをする気はないわよ。


 このゴミ板は床に叩きつけてやろうかと思ったけど、それも我慢しておいてやるわ。


 ドルイディは私が再び顔を上げた時にはボタンを押してしまっていたわ。なんてこと……



「……行かせないわよ」



 扉が開かれた。


 それによって見えたのは、とある部屋……私はその部屋の中にあるとあるものを目にして、ドルイディたちを絶対にその部屋に行かせないことを誓ったわ。


 私はドルイディたちの前に立ち塞がる。


 彼女らは軽く話し合った後、どうやら私を置いてそこに向かおうとしていたようだったから。


 あんなのと会わせても、不幸になる未来しか見えないから、阻止してあげないとね。


 私自身のためでは決してないわ。



「お姉様……」



 姉と認めてないなどと口で言いながら、一応『お姉様』とは呼んでくれるのね、ドルイディ。


 お姉ちゃん、そこは少しだけ嬉しいわ。



「でも……その部屋に入られるのは嬉しくないわね。大人しくもう一つの方のボタンを押して」


「……」


「本来の宝がある場所に行きなさいな。それなら、こうして立ち塞がったりしないから」


「……本来の宝とやらは何なのかわからないが、先にこちらに行こうと思うよ、言うことは聞かない」



 も、もう……! 本当に姉の言うことを聞かない妹に育ってしまったわね……


 嘆かわしいわ。もうここで思い切り、情に訴えかけるように泣きじゃくれば、彼女もやめてくれるのかしらね。いや、まあ、ないでしょうね。


 それに、そんなことしたくないわ。


 私はリモデルとやらに視線を移し、その顔を思い切り、睨みつけてやったわ。


 絶対に許さないんだから……!



「そ、そうよ……」



 今、ここで殺してやるとするわ。


 それが一番いいもの。ドルイディは悲しむかもしれないけど、これは必要なことだから……


 それに、そんな悲しみなんて所詮はすぐなくなってしまうはずよ。私が目を覚ましてあげる、


 そう思って、私は……後ろの部屋を閉じるために回していた左手を魔力の生成に使った。


 魔力は瞬時に剣の形を成して、私の左手にすっぽりと収まってくれた。


 私はその左手を思い切り、前のリモデルとやらに向けて突き出したわ。殺してやるため……



「……っ……っいぃっ!!」



 もちろん、部屋に行かせたくないから、そこから動かずに奴の首元を攻撃する。


 剣を投擲することでね。


 私は空いた右手に剣と同じ上級の盾を生成した。これでドルイディやディエルドの攻撃が飛んできたとしても容易に防げるし、彼女らが部屋に侵入することも同様に阻止することが出来るはずよ。


 それだけの大きさと防御力はある。


 だから、勝ち誇った笑みを「ふふん」と見せてやったのだけれど、それはすぐに消えたわ。



「えっ……」



 何故か、剣を飛ばされたはずのリモデルがその剣を掴み、何事もないかのように佇んでいたから。






*****






 俺はあのルドフィアという女が投げた光剣を避けようかと……放たれた瞬間には思った。


 しかし、後ろにはドルイディとディエルド。ここで避けたら、彼女らに当たってしまう。


 一応、結界が張ってあるとはいえ、あの攻撃力はそれなりのものであることが、さっき使われたことでわかっているから……絶対に俺が食い止める。


 そう思ったら、素手で掴んでしまっていた。わざわざ手の部分だけ結界を解除してね。


 これを奴に投げ返してもいいのだが、俺が思い切り投擲したら……きっと彼女は死ぬ。


 偽物なのかもしれないというのはわかっている。だが、絶対に偽物であるという確証はないし、姉の姿をした相手が恋人に壊される姿を……ドルイディだって見たくないと思ったから……それは避けるよ。


 これはもしもの時のために取っておくとして……


 俺は自分の空いた左手に糸を生んでいく。


 俺は地下空間での一件後、人形操技の際に用いる糸を使った別の技の練習をした。


 それはもう……色々とね。


 その中に目潰しや口、鼻などといった体の穴を閉じることに特化した技もあった。


 『顔穴封(がんけっぷう)』……だったかな。


 粘り気がありながらも硬糸に近い硬さの糸を生み出して放つのだ。そうすることで糸を剥がすことが困難になるから。これは作る難易度も高いんだよね。


 ちなみに闇属性の魔力を持つ者はそれを糸に乗せてみてもいいかもね。目に使ったのなら、完全に視界を奪うことが出来るから。今もやってるよ。



「……っ」



 ルドフィアは今度は簡易的な形の安定しない魔力弓にて、矢を放ってきていた。


 もちろん、矢も魔力製であるために、魔力が尽きない限りはいくらでも生成できるだろうな。


 さすがに俺は手が二つしかないためにそれらを全て受け止めようとはしないよ。


 それらは全て、ドルイディたちに行き着く前に俺が左手の裏で叩き落としているよ。


 裏なのは、手の表側に糸を生成しているから。すぐに発射できるように両手ともに結界を解除しているから、表で叩き落とそうとすると、矢が糸に吸着し、面倒なことになってしまうと思うんだ。


 矢が……大体二十射ぐらいされたあたりで、ルドフィアが疲れたのか、手が止まる。


 その拍子に俺は手の表をルドフィアに向ける。


 叩き落としている内に生成は完了したよ。ありがとうな、ルドフィア。


 ルドフィアが何かすることを危惧した俺は、即座に糸を射出させていった。



「……っ……こんなものを私に……っ……許さない」



 目に直撃した糸を必死に外そうとしながら、ガムシャラに剣を振り回すルドフィア……


 俺はその剣を糸にて絡めとった後、上級の魔法結界……『強闇結界』を奴の全身を覆うように張る。


 結界を守るためだけに使うものじゃないんだ。こうして、閉じこめるために使うことも出来る。


 他にもこうやって糸を使った閉じこめるのに特化した檻の技があったはず。練習してみよう。


 俺はそう思いながら、ドルイディとディエルドの手を引いて、ルドフィアの横を通過した。

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