43話【ディエルド視点】ディエルドの嫉妬
オレはディエルド。今現在、ドルちゃんとリモデルっつー恋人らしき男と宝探しをしているんだ。
『宝探し』って単語から楽しそうな『遊び』になることを予想してたんだけど……
思った以上にめんどいもので正直疲れてきたし、早く終われ〜……って思い始めてるよ〜。
色々な部屋をめぐったけど、そのうち宝の一つと思われる鍵は一つしか手に入ってない。
あ、リモデルが合流前に手に入れた鍵は含めてないよ。含めたら二つってことになるね。
「ふぅ〜……はぁ〜」
そんなこんなで……疲れながら歩いていたら階段を発見。存在しない(と思ってた)四階への階段……?
そう思ったら、疲れている体に変化はないけど、心がウキウキワクワクしてきたよ。
そのウキウキワクワクする心のまま、オレは階段を上がっていったよね。
あ、つっても緊張感がないってドルちゃんに言われたくないから、表情はそのままだよ?
もちろん、オレはドルちゃんにいいところを見せたいから、騎士然とした振る舞いと周りの警戒も当然、怠ったりはしていない。カンペッキだね。
「……うんうん」
階段はなんと三百段もあるらしい。とんでもなく疲れそうだし……いや、既に疲れてるから更に疲れそうだって言った方が正確かもねぇ。
とにかく、大変そうだけどもワクワク気分のおかげで割と気にはならない。
段数は気にしてなかったけど、時間は気にするようにした。六分間で上がりきれたよ。
その間、何も襲いかかってくることはなかったし、罠だって作動することはなかったね。
ま、罠に関しては十中八九、作動しないと上る前から思ってたけどね。姉さんたちが罠は遊びの時は作動しないようにしてあると言ってたんだから。
姉さんはおかしい状態だから、嘘をついている可能性もゼロじゃないかも……と一応警戒したみたんだけどね〜。まっったく意味なかったよ……
「……うん」
そう呟いた時に……誰かの咳払いみたいなものが聞こえてきたね。何だろ……?
ドルちゃんとリモデルも扉を開けるために出した鍵を閉まっていた。気になるもんね。
『あー、あー……えーっと、皆さん聞こえているでしょうか。ご存知、リュゼルスハイムですわ』
リュゼルスハイム……? 何故この段階で? あ、そっか。あの女はオレたちがここにいることをもう……既に知っているんだ。だからか……
『あのー……貴方たちが今、いる場所……そこに扉があるでしょう? その先は宝がある場所へ続くようになっています。安心してください』
「えっ、ちょっと待ってくれ……まだ聞きたいこ……」
ドルちゃんが声をあげるが、リュゼルスハイムの声と被ってしまって聞き取れない。
仕方ないね。きっと、こちらの声はあちらに聞こえていないんだよ。
『あと、罠は今までの道や部屋では作動しなかったと思いますが、この先の部屋の罠はちゃんと作動します……伝えたいことはそれだけですわ!! それでは、楽しい『宝探し』を続けてくださいまし〜!!』
……何も聞こえなくなった。
オレと同じく、もう何も聞こえなくなったとわかったドルちゃんは、軽いため息をつき、リモデルに言ってポケットから鍵を取り出してもらってた。
鍵は二つもあるし、どちらも試すだろうね。水の部屋以降はどの部屋にも何もなかったしー……多分、このどちらかの鍵で開くんじゃないかと思う……
……けど、もちろん開かない可能性もあるとは思うよ? 鍵で開けられると思わせておいて、実は全く違うものじゃないと、開けることが出来ないかも。
もしくはこれまでの部屋で手に入る物を組み合わせて鍵の代わりになる物を作るとかね。
ま、もしそうならオレたちは水の部屋で手に入れた鍵とリモデルがその前に手に入れた鍵くらいしかないし、詰んでるよね。入られないじゃん。
「……あー、でも、魔力とかで鍵を作るとかすればいいかも。ここには全属性の使い手が二人もいるし」
オレは使えないけど、ドルちゃんとリモデルは使えちゃうんだよね。
普通の人間や人形は全属性の魔力なんて使えない。希少な存在だというのに二人もこの場に揃ってるって凄い偶然……いや、奇跡だよね。ヤバヤバい。
「……ディエルド、なんか言ったかな? 今、鍵を試してるところだから黙っててくれない?」
「あっ、ごっめーん」
言葉に出ちゃってたみたい。言われて気づいたよね。
オレはペコッと謝っておくと、取り敢えず周りを見て誰か来ないか見張ることにするよ。
オレに出来ることってそれぐらいだしね。
鍵の生成について教えたいという気持ちもあるけど、なんか頑張ってるところ邪魔するのも悪いし。
「……ダメだな」
「……あれ? ダメだったの?」
見張りを始めた瞬間にリモデルのそんな声が聞こえてきたから、オレは振り返って尋ねた。
すると、ドルちゃんが答えてくれた。
「うん。見るからにダメだとは思ったけど、挿してみたんだよ。そしたら、予想通り開かなかった。でも、諦めたくないということで……」
「……ということで?」
「……鍵に土属性の魔力を纏わせて鍵の形を鍵穴と同じようにすることで開けようとしたんだけど、こちらもダメだった。どうやら、本来の鍵でないと開けられないように出来ているのかもしれない……」
「……まっじかぁ……厄介だね」
「拒絶されるかのように挿しこもうとした瞬間に弾かれてしまった。びっくりしたよ」
それなら、さっきのオレが考えたことは意味ないだろうね。言わなくてよかったよ。
二人の手元を見ていなかったから、鍵に土属性の魔力を纏わせてることなんて、全く気づかなかった。面白いことに気づいて、実践したんだね。
「あれ、試したのって一つだけ……?」
オレがそう言うと、ドルちゃんとリモデルが顔を見合せた後、青い顔で「落としたっぽいんだ……」と言ってきた。タイミングもほとんど一緒だった……
仲良しすぎるでしょ……
別にドルちゃんと恋仲になりたいわけじゃないよ。兄妹だしね。それでもさ……
なんか、嫉妬してきちゃうよ。
オレは取り敢えず「仕方ないな〜」とだけ言うと、階段を降りていった。
ドルちゃんとリモデルが「大丈夫。私(俺)たちが行くよ」と言ってきたが、断ったよ。
オレがやりたいことだから、やってるわけだし。
あと、その無駄に息のあった謝罪によって、オレの心は揺れたよ。表情には出さなかったけど。
多分ね……オレはこれ以上、ドルちゃんとリモデルに仲良くしてほしくないんだよ……はぁ。
……恋愛先生(上級者)だとうそぶき、調子に乗って授業をしたことも恥ずかしくなるし。
そう思いながら降りていったところで……六十段くらいのところに鍵が落ちていた。
あぁ……なくなっていなくてよかったよ〜。
一番下の段じゃなくてよかった。帰るのが楽勝。
オレは今度こそ落とさないようにと自身の服のポケットの奥に鍵を押し込んでいく。
「じゃ、戻ろっかなー……」
鍵と一緒に宝も落ちてないかと思ったけど、なさそうだしね。残念残念無念無念……!
階段を上に向かっていこうとしたんだけど、その一秒後にオレは妙な感覚に振り返った。
あれ……これって……?
今はちゃんとわかるぞ。姉さんっぽい気配だ。もちろん、ルドフィア姉さんのことね……?
ルドフィア姉さん、もうこんな近くまで来ているのだろうか? 多分、階段の一段目まで戻っていったなら、鉢合わせていたかもしれないなぁ。
まずい……鉢合わせたくないわ。
「こりゃあ、急いで上がってドルちゃんとリモデルに報告案件だなぁ。早く早く!!」
オレは背後への警戒心を強め、結界も張った上でかなりの早足で階段を駆け上がっていった。
全速力でなかったのは、バタバタしていれば、姉さんに気づかれるかも……と思ったから。
オレだって、音を出したらバレることぐらいわかるんだよ。多分、ドルちゃんたちにそのことを伝えたら、驚かれるか何か言われちゃうだろうけど〜。
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